著者
淺野 敏久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

ラムサール条約は湿地を保全することを目的とした条約で,日本は1980年に加盟した。湿地の保全,ワイズユース,普及啓発(CEPA)を3つの柱とする。近年,登録湿地の数と対象を広げる方向に動いており,水田なども対象となっている。日本では,1980年に釧路湿原が登録されたのがはじめで,当初サイト数はあまり増えずにいた。2005年に大幅増となり,2012年6月末現在,37箇所、総面積131,027haが指定されていた。2012年7月のCOP11でさらに9箇所が新規に登録された。ラムサール条約にどの湿地を登録するかは,それぞれの国のルールによっている。日本の場合,国際的に重要な湿地であること,対象湿地が国内法で保護対象になっていること,指定にあたって地元の賛意が得られていること,が求められる。 報告者は2010年より科研費の共同研究で日韓のラムサール条約湿地を調べており,複数湿地での現地調査や国内37サイトでの利用と保全に関するアンケート調査を行っている。報告ではその一部を紹介する。 第1に,日本のラムサール湿地は基本的に保護対象地として認識されているケースが多く,登録後に,ラムサール条約を前面に出して利用を強調する取り組みが進んだケースは少ない。蕪栗沼のように農業振興とラムサール登録を結びつける戦略が意識されているところはこれまで多くなかったが,今回の円山川や渡瀬遊水地は地域づくり的方向が意識されており,今後の傾向になる可能性はある。 第2に,利用という括りで,環境教育利用が想定される傾向が強い。これはCEPAにあたるもので,ワイズユースと分けられるのであるが,日本ではラムサール湿地の利用というと教育的利用が真っ先に意識されるようである。 第3に共通する利用形態として「観光」が考えられる。アンケート調査の結果からは,バードウォッチングと写真撮影が最も多い行動になっており,日本の観光地の中でかなり特殊な性格をもっている。 その他,観光化に対する日韓の対応差や,国内での世界遺産とラムサール条約への地元の対応差などついて当日報告したい。 ラムサール条約湿地や世界遺産,エコパーク等,何が同じで何が違うのか。本報告では,ラムサール条約湿地とジオパークの相違点や,ラムサール条約のワイズユースの国内事例から示唆される,ジオパークの課題や留意点について話題提供したい。

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