著者
森永 由紀
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

モンゴルの気候は大陸的で冬が厳しく、そこでは数千年にわたって遊牧が行われてきた。遊牧民は草と水を求めて家畜と共に移動し、同時に干ばつやゾド(厳しい冬の災害)から逃れるためにも移動する。彼らは厳しい気候下で生き残るために様々な環境学的伝統的知識を有する。たとえば、彼らは夏に比べて暖かい場所に冬のキャンプ地を定める。彼らは移動することに価値をおき、定住することを避ける、などである。本研究の目的は、遊牧民の移動に関連する遊牧の知識を検証することである。モンゴル北部の森林草原地帯であるボルガン県において、気象・生態学的調査を2008年より実施し、次のような結果が得られた。1)山の裾野にある冬のキャンプ地と盆地底にある夏のキャンプ地での1時間おきの気温の観測値から、冬のキャンプ地は冬季に出現する冷気湖の上部の斜面温暖帯に位置することが明らかになった。さらに、冬季の冬のキャンプ地の気象条件は夏のキャンプ地に比べると体感気温の面でも家畜にとって好ましいことがわかった。2)ヒツジとヤギの移動群れと固定群れの体重の季節変化の比較実験を行った。移動群れの体重は11月まで増加し続けたのに対して、固定群れの体重増加は9月で止まった。冬場の体重減少率は固定群れの方が大きかった。

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