著者
北 仁美
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

<B>Ⅰ.はじめに</B><BR> 日本の大手食品製造業の事業所の海外展開が進行している。その背景には、日本国内の市場の成熟化や消費の縮小、農産物の自由化などがある。食品関連産業は生産・調達された農産物を処理・加工する。そのため、農産物の生産から消費までの輸送距離と時間がより一層拡大した。日本の大手食品関連産業が積極的に関与してきた農産物の国際的な流動が、加工・調理された食品を含む食料の国際的な流動へと拡大した。<BR> 本研究は、日本の大手食肉加工企業である日本ハム株式会社(以降、日本ハムと略記)を事例に、企業戦略によってグローバルスケールでの食料の国際的な流動がどのように変化してきたのかについて検討する。その際、海外におけるグループ企業の配置と日本国内向け製品の原料の原産国に着目する。<BR> 本研究の意義は、「食料の地理学」において食肉とそれに関連する加工品を事例に、日本企業の多国籍化のインパクトを示し、大企業を対象とすることの重要性を強調することにある。<BR><B>Ⅱ.分析方法</B><BR> 分析にあたってまず、日本の食品製造業における海外進出の動向を把握する。続いて、一定の期間ごとに日本ハムの海外における事業所の配置と各事業所の機能を明らかにする。さらに企業のホームページ等から日本国内に流通している製品の原料の原産国の情報を加える。以上により畜産物の生産・調達から販売にいたる国際的な供給システムを把握することを試みた。本研究において流動とは、A国から日本への輸出のみならず、A国とB国の現地法人間の輸出入も含む。<BR><B>Ⅲ.結果および考察</B><BR> 日本ハムは、グループ企業以外の企業からの食肉の輸入、海外の事業所間での企業内貿易、特に三国間貿易によって国際的な食料の流動に関与してきた。1980年代以降、日本ハムは相次いで海外の大企業を買収し、グループ企業間で行う三国間貿易の海外拠点の構築に向けて現地法人を設立した。その目的は、日本国内への食肉の供給のみならず、世界各国への食肉供給にある。三国間貿易とは、豚肉の場合、商社に類似した機能をもつイギリスの英国日本ハムが、欧州各国(主にデンマーク)で生産された豚肉を日本や韓国、中国へ輸出することを指す。その他のケースとして牛肉の場合には、オーストラリア産の牛肉をオーストラリアの現地法人から英国日本ハムを経由して、イギリスを含む欧州各国に販売している。<BR> 以上のように、日本ハムは事業所の多国籍化を推進してきた。しかし、日本ハムによる食料の国際的な流動の焦点になっているのは、依然として食料を大量に輸入する日本である。また、日本ハムの海外事業における売上高は依然として1割強しかない。<BR> 上記で述べた日本ハムによる食料の国際的な流動は、世界全体からみればごく一部に過ぎない。しかし、食料の国際的な流動を解明することにより、大企業による食料の生産から販売に至る系列的なシステムの形成が加速していることが明らかになった。企業買収等による資本蓄積の拡大や多国籍化は、食料供給においてさらなる優位性を発揮する。一部の大企業が中心となった食料の供給体制が今後も進展していくことが予想される。

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? 食肉加工企業の多国籍化に伴う食料の国際的流動:日本ハムを事例として(北 仁美),2012 https://t.co/wNQlBRc8yp <B>Ⅰ.はじめに</B><BR> 日本の大手食品製造業の事業所の海外展開が進行してい…

収集済み URL リスト