- 著者
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菅沼 恵子
- 出版者
- 一般社団法人 日本家政学会
- 雑誌
- 一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.64, 2012
<b>目的</b> 布の滑りやすさは美しい装いや衣服の着脱をスムーズにするなどの点で重要な性質である。この目的で裏地やスリップなどが用いられるが、汗などで湿潤状態になるとかえって滑りにくいと感じられることもある。先の研究によって布が含む水分によって摩擦係数が大きくなり、滑りにくくなること、またこの影響はナイロン、ポリエステルに比べて綿、レーヨン、キュプラでは大きいことがわかった。今回布の水分率と摩擦係数の関係を詳細に調べ、水分率による影響を数値で表した。<b>方法</b> 1)摩擦係数の測定 摩擦感テスターKES-SEを用いて、ピアノ線センサーにおける布の摩擦係数を測定した。ナイロンタフタ、ポリエステルタフタ、ポリエステルサテン、ポリエステルモスリン、キュプラ2種、レーヨンタフタ、スフモスリン、綿金巾、絹羽二重などの布を用いた。2)水分率の測定 水分率の自然対数に対して摩擦係数がほぼ直線的に変化する範囲の水分率(~約70%)を数段階調整し、摩擦係数測定後直ちに秤量ビンに移して重さをはかり、乾燥して絶乾質量から水分率を算出した。<b>結果</b> 水分率の自然対数―摩擦係数の曲線は①水分率に従って摩擦係数が増加する領域と②やがて飽和し、③その後過剰な水分によってやや摩擦係数を減じる領域に分けられる。水分率による影響の大きさは主に①に依存し、その領域では直線近似が可能である。そこでこの直線の傾きを求めて水分率の影響の指標とした。その結果、ポリエステルが織り方に依存せず最も小さく、次いでナイロン、その他の布はかなり大きく、ほぼ一定の範囲内の値となった。