著者
谷口 智雅 濱田 浩美 Bhanu B.Kandel 岡安 聡史
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

高濃度のヒ素が検出されるテライ低地のナワルパラシ郡パラシの東西約6km、南北約10kmの地域において、地下水の動態とその利用の実態を把握するために、地下水調査を実施している。この地域における生活用水の水源の多くは地下水に依存しており、各家庭で掘られた井戸や共同井戸から地下水が汲み上げられている。井戸は伝統的な開放井戸と15年ほど前から掘削の始まった打ち込み井戸に分類されるが、その多くは打ち込み井戸が中心で、開放井戸の数や分布は限られている。本発表では、対象地域におる開放井戸について報告する。 調査地域内の25の集落を対象に地下水調査を実施し、各集落において開放井戸、掘り抜き井戸1か所を原則とし調査を行っている。その過程の中で聞き取り調査により集落内の開放井戸の有無について調査を行った。調査は2012年3月2日~6日、8月19~23日に実施した。観測項目として、現地において井戸の形状・大きさ・地下水位・ヒ素濃度・水温・pH・EC・ORP・DO等を測定した。その結果、開放井戸のある集落は未使用と見られる4つを含む15集落で、Mahuwa(地点8)については集落内に2つの開放井戸が存在していた。聞き取りによる井戸の作成年は150~200年前と回答した井戸が11箇所と非常に古くから設置されている。井戸の形状はAtharahati(地点2)の正方形、Khokharpurwa(地点4)の五角形を除き、円形である。また、Goini(地点26)の井戸は井戸自体が円形だが、前方後円噴のような型どりになっている。2012年3月の観測結果に基づく井戸概観において、井戸枠高は0.00~0.95mで、地盤高と同じ高さを除く、井戸枠の高さの平均は0.43mである。井戸底までの深さは、Mahuwa(地点8)の9.3mが一番深く、一番浅いのは井戸枠も崩れて未使用井戸であるPipara(地点9)の2.55m、使用されている井戸の中ではGoini(地点26)の3.40mであった。井戸底までの深さの平均は6.02mである。 2012年3月における地下水面までの深さは2.15~6.55m、湛水深は0.4~4.35mであった。8月の地下水面までの深さは0.94~4.73m、湛水深は1.61~4.22mであり、3月の乾季における湛水深が小さくなっている。地下水面は、乾季(3月)より雨季(8月)の方が低く、湛水深でSarawal(地点21)の4.9m差が最大、最小でManari(地点27)の0.69m、平均は1.76mであった。浅層地下水の流動形態は、地下水等高線図として示すことが有効であるが、地下水面計測および対象地域の地形や地質構造の把握が不十分なため、今回は示すに至っていない。

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