- 著者
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古屋 正貴
- 出版者
- 宝石学会(日本)
- 雑誌
- 宝石学会(日本)講演会要旨
- 巻号頁・発行日
- vol.36, 2014
宝石における変色性は宝石鑑別団体協議会の定義のように,自然光で緑∼青緑色,電灯光(A光源)で赤∼紫赤色に変化するものが一般的であるが,それ以外にも色が変わったり,変わって見える宝石がある.昨今宝石のさまざまな特性が注目される中でこれまでの変色性とは異なる色の変化を示すものについていくつか紹介したい.<br>光の当たることで色が変わって見える宝石がある.パキスタンの石全体に微少インクルージョンを含むピンクサファイアは,白い光を受けるとその微小インクルージョンが光を散乱して,青色を帯びる.これは青いシラーの出るムーンストーンと同じでレイリー散乱によるものである.また,この効果はスリランカ産のピンクサファイアやタジキスタン産のルビーでも見られる.<br>似たように光が当たることで色が変わって見える効果はアンデシンでも見られる.緑のアンデシンでは同じファイバー光を当てても,石を透過すると緑色で,石に反射すると橙赤色になる.透過法と反射法で紫外-可視分光を測定すると図1(PDFのFigure.1を参照)のようになる.その仕組みとしては内包される微小な銅片に光が反射すると橙赤色に発色し,透過光では微小な影として色に影響を与えないものと考えられる.<br>また,近年見られるスキャポライトは,極めて明瞭なテンブレッセンスを示す.この石のテネブレッセンスは,無色だったものが10秒ほどの短波紫外線照射で,鮮やかな帯紫青色に変わる.(PDFのFigure.2を参照)また,この帯紫青色は強い可視光を当てると数秒で元に戻るという可逆性もある.<br>このように色が変わったり,変わって見える宝石はいろいろあり,それが宝石の特徴となっている.