著者
藤田 智子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, 2015

<b>【研究の背景と目的】</b><br>家庭科が男女共修となって20 年が経過した。男女共修家庭科の履修経験は、ジェンダー・イクイティ意識の形成や、高校生の多様な家族形態の受容、家事参加率、親準備性等に影響すること(荒井他1998、中西2000等)が明らかにされている。だが、家庭科に対するイメージには根強いジェンダー意識がみられる(中西2006)。<br>本研究では、家庭科に対する「学習レリバンス(学習にどのような意味や意義を感じているか)」の構造を明らかにすることを目的とする。それを通し、男女共修家庭科の意義と課題を検討する。「学習レリバンス」は、学習そのものを面白いと感じる「現在的レリバンス」と学習が将来役立つという感覚である「将来的レリバンス」に分けて捉えられる(本田2004)。<br><b>【方法】<br></b>男女共修家庭科を学んだ大学生に対してインタビュー調査を行った。調査人数は39名(女性27名、男性12名)である。所属は教育学部生21名(家庭科専攻10名、家庭科専攻以外11名)、その他の学部生18名である。インタビュー調査協力依頼の文書を配布・掲示し、同意の得られた人に対し1対1の半構造化インタビューを行った。調査時期は2014年11月~2015年3月である。対象者に了解を得た上でICレコーダに録音し、文字起こしを行い1次データとした。大まかな質問項目ごとに、共通するキーワードに着目してコード化し分析した。<br> <b>【結果および考察】<br></b> 家庭科の学習で楽しかった・面白かったこととして、調理や裁縫が多く挙げられた。自分たちで自由にメニューやデザインを決められる場合、特に楽しかったと記憶されていた。「失敗して『もうちょっとこうすればよかったね』と反省は色々結構するんですけど、それでもやっぱり楽しいという方がみんな勝っていました」というように、失敗しても「自分たちでやった」とことが学びの楽しさとなっていた。「個人的に私がちょっとクラスに行きづらい時期で。でも、(調理実習の班員に恵まれて)仲良くできたのがすごく印象的で。その授業はすごく楽しくて印象に残ってます。」と、学びの状況に関する語りもみられた。<br> つまらなかった・嫌だったこととして、座学の授業を挙げる者が多かった。学校の雰囲気に左右される部分も大きく、「荒れた」環境の場合、授業はつまらないと認識されていた。摂食障害を発症していた学生は、自分が作ったものなので絶対に残さずに食べなければならないことや、友人と一緒に食べなければならないことが苦痛だったと語った。<br> 役に立っていることとしては、調理と簡単な裁縫技術が多く挙がった。ミシンを家庭科の授業で初めて使ったという学生も多く、サークル活動などで衣装を縫う時などにも役立っているようだ。<br>男女が共に家庭科を学ぶことについては、全員が肯定的な意見を述べた。授業中の男子の様子として、男子だから要らないという雰囲気はなく、「『料理、俺やりたい』みたいな人がいたら結構その人が率先して」行動する男子もいたり、家庭科が得意で上手い男子に対しては、「素直に『あ、それ、綺麗ー』みたいな。『すごいね、ってか、どうやってやったの』とか」といったように、称賛の声が上がり、教えてもらうこともあるようである。男子は苦手と感じる者もいたが、「女子にも苦手そうな子はいると思うんですけど、あまり言わないというか。男子は苦手と言って助けてもらおうというのがある」というように、必ずしも男女による得手不得手ではないと考えられる。「(お米を研ぐときに、女の子の)友達が洗剤を取り出そうとしたんでそれを止めて」といった経験がある者もいた。進学校のため、男女ともに軽視していたと語りもあった。<br> 男子が家庭科を学ぶ必要性については、母親の大変さや結婚後の女性の仕事を理解するため、一人暮らしでも生きていくために必要と考えられていた。生活をする上で必要、自立のために必要と語る者が多かったが、男性が中心的に家庭の仕事を行うことを考えている者は少なかった。<br> なお、本研究はJSPS科研費26780493の助成を受けた。

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こんな論文どうですか? 家庭科に対する「学習レリバンス」の構造にみる男女共修家庭科の意義と課題(藤田 智子),2015 https://t.co/uJQ7ZnpYMq <b>【研究の背景と目的】</b><br>家庭科が男女共修となって20 年が経過…
こんな論文どうですか? 家庭科に対する「学習レリバンス」の構造にみる男女共修家庭科の意義と課題(藤田 智子),2015 https://t.co/uJQ7ZnpYMq
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