著者
横山 めぐみ
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p><はじめに></p><p></p><p>入院中の患者さんが,在宅復帰に求める事の1つに排泄自立があげられることが多い。尿閉・頻尿などの排尿障害,また入院中やむをえず尿道カテーテルを挿入し抜去後に排泄障害をきたし入院期間が延長をされることがある。当院では,泌尿器科医師・看護師・療法士による排尿ケアチーム(以後ケアチーム)を立ち上げ,入院中,尿道カテーテル抜去後に伴う尿失禁・尿閉等の下部尿路障害を生ずると見込まれる方・排尿障害がある方へ包括的な排泄ケアの取り組みを始めた。介入は始まったばかりだが現場から排泄ケアの現状を報告させて頂く。</p><p></p><p></p><p></p><p><方法></p><p></p><p>大腿骨頚部骨折で当院入院・手術された方のうち平成28年7月よりケアチームが介入した入院患者(以下対象患者)7名(うち尿道カテーテル挿入・抜去者6名),女性7名,平均年齢87.86歳,ケアチーム介入時と退院時のFIM・厚生労働障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)(以下自立度)の経過をおい,ケアチーム介入前の同対象入院患者12名(同年4月~6月入院患者・男性1名女性11名,平均年齢83.33歳)の比較を行った。</p><p></p><p></p><p></p><p><結果></p><p></p><p>対象患者は,ケアチーム平均介入3回,尿道カテーテル挿入者の挿入平均日数12.3日,導尿を必要とした人数6名,尿意回復はFIM項目尿意利得:平均1.57(-1・0が3名)。入院時・退院時の利得は,自立度1.75,FIM20.8,FIM項目別で尿意1.78便意1.08移乗トイレ2.86トイレ2.71下更衣2.71,ケアチーム介入後は自立度2.43,FIM25.1,FIM項目別で尿意1.57便意1.43移乗トイレ1.00トイレ2.33下更衣2.92となった。介入前では,尿意自立8名,動作修正自立以上は6名。介入後は尿意自立に至った4名がFIM項目移乗トイレ・トイレ・下更衣が修正自立~自立となった。</p><p></p><p></p><p></p><p><結語></p><p></p><p>今回ケアチーム介入前後で尿意利得に著明な差は認められなかったが,自立度・FIMの点数では利得が認められた。ケアチームの早期介入により看護師へ排泄への意識づけ,療法士が適切な排泄用具・環境の設定を行うこと,トイレの時間誘導の徹底により排泄・移乗回数増大により排泄動作自立への1つの要因になったと考えられる。</p><p></p><p>排尿の失敗は自尊心・自信の低下,不安や自己嫌悪をもたらしその人のアイデンティティをも揺るがせない問題で患者さんの今後の生活を大きく左右される可能性がある。排尿自立は,在宅生活再開の鍵であり,ケアチームの介入により総合的にアセスメントし包括的な排泄ケアの充実と療法士の個別の患者さんへのアプローチが必要となる。排尿障害において,排尿機能のみでなく多様な運動機能障害を有している点から療法士による姿勢・体幹評価を含めたより包括的な関与や個々の症例に合わせた運動指導が重要と考える。患者さんの状態は様々であり,介入早期から療法士は各々に対し理学療法,姿勢・動作確認,排泄用具の決定・環境調整,トイレ時間誘導の適切な介入を行い早期自立へ導くことが望ましいと考えられる。</p>

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