著者
大江 達也 三田 裕教 藤本 敦久 對馬 龍太 高橋 伴弥 井上 悟史 中江 聡
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>スポーツ選手の膝痛で高頻度に発生するAnterior Knee Painは,膝蓋下脂肪体(Infrapatella Fat Pad;以下IFPの)内圧上昇(Bohnsack M, et al., 2005)や,IFPの疼痛感度が高い点(Dye SF, et al., 1998)などが関与しているとされ,IFPの機能は重要であると考えられる。IFPは膝伸展時に遠位や内側,外側へ広がり,遠位では膝蓋靭帯と脛骨近位前面の間へも移動し,膝蓋骨の動きに安定性を与えると報告されている(林ら2015)。しかし,動態に関する研究は散見する程度であり,本研究の目的はpatella setting時におけるIFPの動態を,超音波エコー(以下エコー)を用いて評価する事である。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>膝関節に整形外科的疾患の既往の無い31例62膝を対象とした。男性23例,女性8例,年齢は平均28.5歳(21~42歳)であった。IFPの動態評価にはHITACHデジタル超音波診断装置Noblusを使用した。IFPはpatella settingにより周囲へ広がる際,広がった部位においてIFP前後幅が増大することをエコーにて観察できた為,本研究においては周囲への広がりを前後幅として評価することとした。測定肢位は仰臥位で膝窩部にクッションを敷き,膝関節軽度屈曲位を基本肢位とした。膝蓋骨遠位1/3から下端の間で,膝蓋骨内縁,外縁それぞれにおいて大腿骨内顆関節面,外顆関節面と伸筋支帯を鮮明に描出できる短軸像にて評価した。関節面と伸筋支帯の間にはIFPが存在しており,その距離を計測することによりIFP前後幅を評価できると考えた。検討項目は,内側,外側それぞれにおけるIFP前後幅とし,弛緩時とpatella setting時の差を算出した。また,patella settingによるIFPの遠位への広がりを評価する為に,膝蓋靭帯と脛骨近位前面のなす角をエコー長軸像にて計測した。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>弛緩時とpatella setting時におけるIFP前後幅の差は,内側は平均1.58±0.87mm,外側は平均3.76±3.63mmであり,外側の方が統計学的に優位に大きかった(P<0.01)。また,内側と外側の間には弱い負の相関関係を認めた(相関係数-0.31,P<0.05)。弛緩時とpatella setting時における膝蓋靭帯と脛骨近位前面のなす角の差は,平均5.37±4.9°とpatella settingにより角度は増大していた。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>林ら(2015)はIFPの移動量を膝の最終伸展運動で内側,外側に流れ込む距離として測定し,外側への移動距離が内側より大きいと報告している。我々も移動距離を直接評価しようと試みたがエコーでは困難であった為,間接的にIFPの前後幅で評価した。本研究の結果から,外側への移動距離の方が内側よりも大きい事が示唆され,林らの報告を支持する結果となった。しかし,内側と外側の間には負の相関関係があり,内側へ移動しやすい膝は外側へ移動しにくく,その逆も存在することが示唆された。また,遠位への移動も観察でき,IFPはpatella settingにより周囲へ広がる事が確認できた。</p>

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セッティングでの膝蓋下脂肪体の動態 ✅内側と外側の間には負の相関関係があり,内側へ移動しやすい膝は外側へ移動しにくく,その逆も存在することが示唆された。また,遠位への移動も観察でき,IFPはpatella settingにより周囲へ広がる事が確認できた 徒手じゃなくても動く https://t.co/GhM5Y0Dwvn

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