- 著者
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林 寿恵
下村 貴文
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2016, 2017
<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>平成28年4月16日に発生した熊本地震において演者の勤務地である阿蘇市は被災し,多くの住民が避難所での生活を余儀なくされた。自主避難所を含めた避難所は29箇所,想定避難者5,500人(H28. 4.22阿蘇市調べ)である。被害の大きさからも住民の避難所生活は長期化が予測され,環境変化に伴う,生活不活発予防,健康管理などの関与が重要であった。地震発災直後は昼夜を問わず避難所は満員であったが,経過とともに避難所スペースは空地,または非常時のみ利用する場所取りが出現した。しかし避難所スペースの変化はあるも,避難生活活動は変わらない住民の姿がみられた。避難所介入のひとつに生活不活発を防ぐ生活環境整備をあげ,避難所の環境コーディネートを行った。避難所の生活環境を住民や関係者と共に考え,住民主体の環境整備活動へと繋がった事例を経験した。避難所の環境コーディネートの重要性について学んだためここに報告する。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>避難所の空きスペースがみられた発災2週間後に避難所地域の区長,避難所に滞在している災害支援ナース,常駐している自治体職員等に避難所生活環境整備の必要性を説明し,協力を得た。環境整備をする目的は,生活しやすい環境づくりtと生活不活発を予防する,とした。整備内容は①移動の動線を明確にする②居住スペースと共有スペースを分ける③共有食事スペースを確保する④ベッド導入や間仕切り(パーソナルスペース)の検討⑤支援物資管理の透明化の以上5点を提案した。それに加え,区長からは要援護者配置場所の考慮,ベッド導入必要者検討,間仕切り非設置の提案,災害支援ナースからは住民主体の健康管理スペースや個別保健スペースの確保が挙がった。検討後,区長が避難者全世帯に環境整備の必要性を説明し,住民の理解と協力を得た</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>環境整備前は,自スペースでの食事摂取,トイレ,入浴や支援者の訪問時等のみ活動や移動がみられた。そのため周囲への注意を払うこともほとんどなく自スペースのみで一日を過ごしていた。しかし,区長の説明後,住民が主体となって避難所清掃,居住スペースと共有スペースを整備した。そのことで,食事は共有スペースでの摂取が習慣化され,他者と交流しながら食事をとることが可能となった。また,要援護者に対しても多くの方々の理解を得ることができ,みんなで見守り,声掛けを行うことができた。間仕切りや,ベッド導入等も演者は提案のみで,実施は住民が主体で実施した。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>避難所という集団生活を強いられる特殊環境において自らの生活を確保するのは難しい。今回,生活環境整備をコーディネートし,区長の理解と協力を得たことで,住民が主体で環境を整備した。そのことが,個人スペースでの引きこもりをなくし,共有スペースでの交流や寝食分離を図ることができた。生活環境を整備したことで活動性があがり,不活発を予防できたと考える。</p>