著者
大矢 幸弘
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.280-287, 2017

<p> アレルゲンの曝露回避はアレルギー疾患治療の基本と思われるが, 発症前の予防効果に関しては実証されていない. 特にアトピー性皮膚炎のように皮膚に炎症のある乳児では, 経口摂取を控えることで免疫寛容が誘導されず意に反して食物アレルギー発症のリスクが高まる. それは経皮感作という現象があるためである. 健常な皮膚は表皮のバリアを形成して外部からアレルゲンなどの異物の侵入を防いでいる. 表皮は下から基底層・有棘層・顆粒層・角層からなり, 角層の天然保湿因子や細胞間脂質そして角化細胞をつなぐコルネオデスモゾームや顆粒層のタイトジャンクションなどが複数のバリア機能を構成しているが, アトピー性皮膚炎の患者ではこうしたバリア機能の低下が認められる. 特に湿疹の重症度が高いほどバリア機能は低下しアレルゲンの感作を受けやすくなる. 健常な皮膚の抗原提示細胞は免疫寛容を誘導するが炎症のある皮膚では逆に感作を促進するため, アトピー性皮膚炎の予防や早期治療がアレルギーマーチの予防には重要と思われる.</p>

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