著者
神奈川 芳行 海老澤 元宏 今村 知明
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.78-86, 2005-03-01 (Released:2010-08-05)
参考文献数
7
被引用文献数
4 4

目的; 食物アレルギーの実態調査は, 医療機関に来院した患者の原因物質等に関する調査は行われているが, 患者側の行動に着目した原因食品の販売形態や発症場所, 発症時の対処方法に関する調査研究はないので実態調査を行った.方法; 全国的な食物アレルギーの患者会の協力を得て, 会員家族1,510家族に対して, 郵送による「食物アレルギー発症回避のためのアンケート調査」を実施し, 878家族, 計1,383名 (内アナフィラキシー経験者402名) の回答を得た.結果; アナフィラキシーの原因食品の販売形態は,「容器包装加工食品」,「店頭販売品」「レストラン (食堂) での食事」の順となっていた. 発症場所と販売形態の関係では,「自宅」で「容器包装加工食品」や「店頭販売品」による発生が最も多く, ほぼ毎日摂食している「学校給食」よりも「レストラン」での食事,「ファーストフード」での「店頭販売品」による発生が多い結果となった. アナフィラキシー発症時の軽快までの時間では, そば, 落花生が乳, 卵, 小麦よりも長く発症件数の多さの順とは異なっていた.
著者
村上 佳津美 土生川 千珠 長坂 行雄 竹村 司
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.574-579, 2013 (Released:2013-12-11)
参考文献数
17

声帯機能不全(vocal cords dysfunction:VCD)は,吸気時に開大するべき声帯が内転し,閉塞するため気流制限が生じ呼吸困難をきたす.聴診される連続性ラ音は,吸・呼気相の全肺野で聴診されることもあり,喘息との鑑別は困難である.またVCDは喘息と併存することもある.そのためステロイド治療に抵抗性であるが,投与される症例がある.今回,10歳女児のVCDと10歳男児の喘息児の連続性ラ音をβ2刺激薬吸入前後で呼吸音解析(LSA 2000)を施行し検討した.解析結果では,VCDは,最強度を示した周波数は,130 Hzであった.それは,喘息の最強度の周波数よりも低周波数帯域で吸気に多く記録されており,またβ2刺激薬吸入で改善を認めなかった.小児では,両疾患の発作時に肺機能検査や喉頭鏡などの検査は困難なことがある.呼吸音解析は,安静呼吸で行う非侵襲的検査である.今回の2症例においては,呼吸音解析による鑑別診断の可能性が示唆された.
著者
大仲 雅之 西川 宏樹 石原 万理子 西山 敦子 吉田 さやか
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.96-101, 2018 (Released:2018-03-31)
参考文献数
16

気管支喘息診療において, ロイコトリエン受容体拮抗薬 (leukotriene receptor antagonist : LTRA) は, 重症度を問わず, 単独もしくは吸入ステロイド薬との併用薬として幅広く推奨されている. 一般に副作用は少ない薬剤であるが, 代表的なLTRAの1つであるモンテルカストの添付文書には, 頻度不明の副反応として異夢や夢遊症の記載がある. 今回われわれは, モンテルカスト服用後に睡眠時遊行症 (夢遊症) 症状を呈した症例を経験した. 症例は7歳男児. 食物アレルギーのため外来で経過観察中であったが, 某年9月ごろ, 起床前の激しい咳嗽が持続するようになった. アレルギー歴, 環境抗原への感作, 咳嗽の様式などから気管支喘息症状と考え, モンテルカストの内服を開始した. 内服開始後2日目から2日続けて睡眠時の異常行動を認めた. 内服を中止したところ, 症状は速やかに消失したことから, モンテルカスト関連の睡眠時遊行症様症状と思われた. モンテルカストによる同様の報告はまれであるが, 他の精神神経症状を生じることもあるとされており, 処方開始時には注意を喚起する必要があると思われた.
著者
栗原 和幸
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.737-744, 2008-12-10 (Released:2009-03-09)
参考文献数
42
被引用文献数
1 1

食物アレルギーの治療について考えてみると,耐性化に望みを託しつつアレルゲン食品の除去を続けることと誤食による急性症状の注意を与えることしかないのが現状である.しかし,食物アレルギーの発症に関して,経皮感作の可能性,経口免疫寛容による耐性誘導の成立などが解明され,根本的に病態のとらえ方を刷新しなければならない状況が見えてきた.積極的にアレルゲンとなる食品を経口的に摂取することで食物アレルギーを予防,あるいは治療できる可能性もあり,アレルゲンとの接触を断つ,と言うアレルギー疾患における指導原則は食物アレルギーに関してはあてはまらないのかも知れない.
著者
楳村 春江 和泉 秀彦 小田 奈穂 漢人 直之 伊藤 浩明
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.691-700, 2015

【目的】鶏卵・牛乳アレルギーであった児の除去解除が進み,完全解除が許可された時点における食生活の実態を評価した.【方法】2013年5月~12月の外来受診時に主治医より完全解除を許可された鶏卵アレルギー16名,牛乳アレルギー1名,鶏卵+牛乳アレルギー21名を対象にアンケート調査を実施した.さらに,その中で協力の得られた21名の保護者からは,写真判定を含む3日間の食事調査を行った.【結果】家庭内,外食,買い物においては改善がみられ,保護者の負担は軽減していた.しかし,大量摂取や卵低加熱料理については,未だに症状誘発に対する恐怖感,不安感を持っていた.食事調査の結果からは,一日当たりの鶏卵,牛乳そのものの摂取は過半数の患児が鶏卵1/2個,牛乳100ml以下であり,牛乳アレルギー児は,カルシウムの摂取量が目標量を下回っていた.【結語】除去食生活の長期化による食べないことの習慣化や保護者の不安などが要因となり,多くの患児にとって「真の解除」を得ることが困難である実態が明らかとなった.
著者
相原 雄幸
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.138-145, 2012 (Released:2012-05-31)
被引用文献数
1

食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FEIAn)は食物アレルギーの特殊型に分類される比較的稀な疾患である.その発症機序については明らかでない点も少なくない. PubMedを用いたFEIAnに関連する論文の調査結果からは,1979年の最初の症例報告以降その報告数は増加傾向にあり,近年はアジア地域でも認知度が向上していることが推察される.また,わが国からの報告数が多いことも特徴といえる. 発症頻度については学童生徒では約1万2千人に1人程度であるが,成人の頻度は明らかではない.原因食物としては小麦製品の頻度が最も高く,その抗原解析の結果からは成人発症例ではω-5 gliadinが関連していることが明らかにされた.さらに,抗ω-5 gliadin IgE抗体の有用性が報告されている.一方,小児期発症例では必ずしもこの抗体の有用性は明らかではない. 近年,加水分解小麦蛋白含有化粧石鹸を一定期間使用後に小麦依存性運動誘発アナフィラキシーを発症する例が多発し社会問題となった.経皮あるいは経粘膜感作が発症の誘因となっており,FEIAnの発症機序の解明に新たな示唆をあたえるものとも考えられ興味深い.また,難治性の即時型食物アレルギーに対する免疫療法が研究的に行われており,その治療中あるいは寛解到達後にFEIAnを発症する症例があるため注意が必要である. 治療については最近prostaglandin E(PGE)製剤の有用性も報告されている. 今後も,患者に対する不要な制限やQOLの改善のためにはこの疾病の啓発が重要である.
著者
竹井 真理 柳田 紀之 佐藤 さくら 海老澤 元宏
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.22-26, 2018 (Released:2018-03-31)
参考文献数
16

2008年に二重抗原曝露仮説が提唱され, 抗原に対する感作経路および食物アレルギー発症経路として炎症のある皮膚面, つまり湿疹の存在が重要視されるようになった. 乳児期の湿疹・アトピー性皮膚炎の存在は食物アレルギー発症のリスク因子であることはすでに報告されている. われわれが行った乳児湿疹を認める生後1か月児のコホート研究の中間解析結果からは, 乳児期早期発症の湿疹は食物アレルギー発症のリスク因子であり, 特に持続する湿疹病変, 皮膚バリア機能異常の存在が食物アレルギー発症にかかわる重要な因子であることが示唆された. 皮膚バリア機能を念頭においた乳児の湿疹に対する早期介入が食物アレルギーの発症予防につながる可能性が示唆されるが, 今後の前向き研究での検証が期待される. また湿疹病変がなくても食物アレルギーを発症している児がいることは事実であり, 感作経路や発症経路の解明も含め, まだ検討されるべき課題は多い.
著者
安冨 素子 大嶋 勇成 眞弓 光文
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.253-258, 2008-06-01 (Released:2008-08-01)
参考文献数
13

エリスロマイシンは抗菌作用のみならず,抗炎症作用を持つことから慢性気道炎症性疾患への応用が注目されている.樹状細胞は気管支喘息の病態における抗原感作とアレルギー性炎症の増悪に重要な役割を持つと考えられることから,エリスロマイシンが病原体由来の刺激による樹状細胞の活性化とT細胞刺激に及ぼす影響について検討した.その結果,エリスロマイシンは poly (I:C) と LPS 刺激による樹状細胞の表面マーカー発現とサイトカイン産生を選択的に抑制した.エリスロマイシンはpoly (I:C) と LPS 刺激によるIRF-3 活性化,IFN-β産生を抑制し,poly (I:C) 刺激によるナイーブT細胞のTh1分化を特異的に抑制した.また,エリスロマイシンは peptidoglycan 刺激を受けた樹状細胞によるメモリーT細胞の IL-17産生誘導も抑制した.これらの結果からエリスロマイシンは,アレルギー性炎症を修飾する気道感染の病原体刺激の種類により異なる抗炎症作用を示すことが示唆された.
著者
柳田 紀之 今井 孝成 海老澤 元宏
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.39-46, 2010 (Released:2010-07-09)
参考文献数
13
被引用文献数
5 4

経口減感作療法の有効性の報告は増えてきているが,現在,経口減感作療法に標準化された方法はない.当院では学童期以降で少量の原因食物の摂取でアナフィラキシー症状が誘発される児を対象に初期量を閾値と同量,1日2回摂取,100%増量とする急速法を6~9日間かけて行なっている.当院の経験とこれまでの報告を交えて適応や方法について検討し,経口減感作療法の標準化の可能性を探ってみたい.
著者
赤澤 晃 田中 和子
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.34-38, 2001-04-01 (Released:2010-08-05)
参考文献数
3

1979年にラテックスアレルギーが報告されて以来, 欧米では数多くのアナフィラキシーショック症例, 死亡例が報告されるようになり, 米国アレルギー学会, FDAによる調査・研究・行政指導・法制定によりその対応がなされてきた. 日本国内でのラテックスアレルギーの患者調査では81名の患者報告があった. 小児科領域では, ラテックス製医療用具の使用者, 多種目の食物アレルギー患者はハイリスクグループであり, 一般でも小児への日常生活での注意も必要である.
著者
小島 崇嗣 谷内 昇一郎 青木 孝夫 小野 厚 蓮井 正史 高屋 淳二 小林 陽之助
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.184-192, 2004-06-01 (Released:2010-08-05)
参考文献数
7

アレルギー疾患合併小児162例 (A群) (男/女: 92/70) とアレルギー疾患非合併小児47例 (B群) (男/女: 25/22) を対象としてインフルエンザワクチンの副反応を検討すると同時に, フマル酸ケトチフェンによる予防内服の有用性を調べた. A群のうち即時型の卵アレルギーを有する症例は15例であった. A群の79例とB群の15例 (計94例) ではワクチンの100倍希釈液で皮内テストを施行した. また, 全209例中44例でフマル酸ケトチフェンの予防内服を施行しその有効性を検討した. その結果, 皮内テスト施行例のうち皮膚スコア2 (発赤径20-39mm) を示した症例は, A群24% (卵アレルギー群での検討では13%), B群20%と差を認めなかった. しかし, 両群とも約10%に皮内テストから予測できない強い即時型局所反応がワクチン接種部位に認められた. 遅発型局所反応は209例中24例 (11%) に認められ, A群18例 (11%), B群6例 (11%) であった. 即時型局所反応ろコアとワクチン接種回数との関係では, 即時型局所反応スコアが2以上を示した割合はそれぞれ, 初年度例の6%, 2年度例の23%, 3年度例の26%, 4年以上例の42%であり, 複数回接種により接種部位の即時型局所反応が出やすくなることが判明した. また, 遅延型局所反応でも同様の関係が認められた. フマル酸ケトチフェンによる予防内服の効果に関しては, 即時型局所反応, 遅延型局所反応ともに有効性が認められた.
著者
正田 哲雄 畠山 淳司 磯崎 淳 小川 倫史 野間 剛 中村 陽一 川野 豊
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.357-362, 2008-08-01 (Released:2008-11-05)
参考文献数
30

症例は7歳,男児.平成19年6月,マムシに右第3指を咬まれ受傷した.腫脹・疼痛があり近医にて外科処置を受け,受傷約10時間後に当院を紹介受診した.マムシ咬傷の重症度分類はGrade III であった.まむしウマ抗毒素に対する皮内試験は陰性であり,メチルプレドニゾロンを予防投与した後に静脈内投与した.投与直後から,全身に蕁麻疹が出現し,同時に喘鳴・呼吸困難のアナフィラキシー反応を生じた.0.1%アドレナリンを筋肉内投与,ヒドロコルチゾンを静脈内投与し症状は改善した.まむしウマ抗毒素はウマ血清であり,アナフィラキシーを高率に合併するが,小児の使用に関して検討されていない.本邦における小児マムシ咬傷報告例のうち抗毒素血清投与を行った12症例を検討したところ,アナフィラキシーを呈したのは本症例のみであった.海外ではアドレナリン予防投与も行われており,その適用基準の検討を含め,小児例の蓄積が必要である.
著者
斎藤 博久
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.729-736, 2005-12-31 (Released:2010-08-05)
参考文献数
34

遺伝子が転写されるためには転写因子の存在のほか, 転写因子と結合する部位がクロマチンとして結合可能な立体構造をとる必要がある. このクロマチンの構造はエピジェネティックなメカニズムつまりDNAメチル化とヒストン修飾により調節されている. 従来, 遺伝子解析研究といえばDNA配列の個人差を研究する遺伝子配列解析と組織や細胞のmRNAを定量する遺伝子発現解析の2通りの研究手法が主流であった. エピジェネティック研究はこの2つの研究手法の中間に位置づけられる研究分野である. 従来の遺伝子解析手法では得られなかったアレルギー性炎症や組織リモデリングに関わる機序解明が期待できる.
著者
鈴木 修一 下条 直樹 有馬 孝恭 河野 陽一
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.56-61, 2009-03-01 (Released:2009-06-03)
参考文献数
22
被引用文献数
3

乳児アトピー性皮膚炎おける皮膚黄色ブドウ球菌の役割を明らかにするために,われわれは千葉市乳児健診において,全乳児のアトピー性皮膚炎の有無および重症度の診断とともに,頬部皮膚黄色ブドウ球菌の培養を行い,生後4か月より1歳6か月,3歳まで追跡した.4か月および1歳6か月において,黄色ブドウ球菌の皮膚への定着はアトピー性皮膚炎の重症度と関連していた.また,4か月および1歳6か月のアトピー性皮膚炎のない児において,黄色ブドウ球菌の定着は後の発症に関連していた.これらの結果は黄色ブドウ球菌の皮膚定着は乳児におけるアトピー性皮膚炎の重症化だけでなく発症にも関与し,黄色ブドウ球菌の皮膚定着防止が乳児アトピー性皮膚炎発症予防の有力な手段となりうることを示唆している.