著者
佐々木 昇一
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究 (ISSN:13417347)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.39-52, 2017

本論文は、日本の労働市場における男性の学歴や就業形態間の賃金格差、また男女間の賃金格差や女性の労働市場への参入障壁といったジェンダー格差が結婚行動を通じて家計間の階層選別に与える影響について検証することを目的とする。そこで、日本の夫婦の結婚、出産などに関する国内最大規模の個票データを用いて理論仮説を実証的に検証した。その結果、男性の学歴間または就業形態間の賃金格差が大きいほど結婚を通じた家計の階層選別の程度を有意に高める効果を持つことが確認された。また、賃金や雇用に関するジェンダー格差が大卒女性の結婚行動に与える効果については、既婚女性の正規就業率が高いほど結婚を通じた階層選別の程度を緩和させる可能性が示された。 さらに、理論仮説に忠実に就業形態に基づく女性の下方婚についての推計を行った。その結果、非正規就業男性と正規就業女性の所得の上昇が階層選別の程度を緩和する可能性を有することが示された。 これらのことから、結婚を通じた階層選別の程度を緩和するためには、学歴間の賃金格差を縮小させることに加え、就業形態間の賃金格差を縮小させることや結婚後の女性の正規就業率を上昇させるといったジェンダー格差を是正する政策が必要であることが示唆される。

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