著者
浅石 卓真
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.123-140, 2017

<p>本研究では,中学・高校の理科教科書における知識の潜在的規模を推定した上で,実際の教科書ではそのうちどの程度がカバーされているかを分析する。そのために,語の出現頻度分布に関する2 つの言語モデル(Zipf-Mandelbrot の法則と一般化逆ガウス・ポアゾン分布)を実際のテキストに当てはめて,科目の概念が全て出現するまでテキストを仮想的に大きくした場合の語彙量を推定した。その上で,実際の語彙量と推定された潜在語彙量との比率を計算した。主な結果は以下の通りである。(1)各科目の潜在語彙量のうち,テキスト上で実際に出現するのは40%~60%程度である。(2)分野間で比較すると,生物分野の教科書で最も語彙が出尽くしており,物理,化学,地学の順に語彙が出尽くさなくなる。(3)学年間で比較すると,概ね高校の上級学年より下級学年の教科書の方が語彙が出尽くしている。(4)時代間で比較すると,1977 年と 1969 年告示の学習指導要領に基づく教科書が,それ以外の時期の教科書よりも語彙が出尽くしている。これらと実際の語彙量による比較結果とを組み合わせて各分野・学年・時代別の教科書を特徴付け,各分野の特性,学年に応じた専門性,時代ごとの教育政策の点から仮説的に解釈した。</p>

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