著者
板谷 侑生
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

<b>Ⅰ.はじめに</b><br>&emsp; 本研究では、財政負担を抑えたインフラ整備が必要とされる日本で、2025年までに一般廃棄物焼却施設(以下、焼却施設とする)を削減することでごみ処理の広域化を実現する場合に、どこの焼却施設を廃止し、どこの焼却施設に統合させるのがよいのかをコストに着目し検討した。2025年という時代設定については、1990年代後半に都道府県と国がごみ処理の広域化を推進してから約30年が経つことから、当時建設された焼却施設が耐用年数を迎えることが想定されるためである。<br> <b>Ⅱ.研究の方法と調査の概要</b><br> &emsp;研究対象とした焼却施設は、全国と比べて人口減少速度が速く、道央への人口集中が日本の縮図と言われる北海道にある、52箇所の焼却施設のうち離島(利尻島、礼文島、奥尻島)の3箇所を除く49箇所である。<br> &emsp;まず、道内で2025年までに耐用年数を迎える焼却施設23箇所を抽出し、それらの焼却施設を廃止とする場合に行き場を失うごみを近隣の焼却施設で受け入れ可能かを検討した。検討では環境省公表の焼却施設ごとの年間処理量と1日あたり処理可能量のデータを利用し、ごみの処理にまだ余裕がある焼却施設を探した。次に、焼却施設が廃止となる際に行き場を失うごみを受け入れ可能な焼却施設が見つかった時は、廃止となった施設跡地に新規の焼却施設を建設した場合と、受け入れ可能施設にごみを運ぶために廃止施設跡に中継輸送施設を建設し、そのごみを受け入れ可能施設に輸送する場合のコストを比較し、よりコストのかからない方を採用した。近隣に受け入れ可能焼却施設が複数個所存在する場合は、ESRIジャパン株式会社の『ArcGISデータコレクション道路網2015』の道路ネットワークデータを利用し、最も輸送コストのかからない焼却施設を比較対象とした。他にも様々なパターンが存在し、それに合った方法でコストを比較し、よりコストのかからないものを採用した。<br> <b>Ⅲ.結果と考察</b><br> &emsp;本研究のシナリオに基づくと、現在52箇所存在する北海道内の焼却施設は33箇所に削減されることになる。廃止対象となる焼却施設の多くは人口低密集地域に立地し、なおかつ小規模な焼却施設が多い傾向にある。これらの焼却施設は近隣の大規模施設に統合される形で広域化が進められることになる。この結果は、処理圏の再編は、大都市圏やその郊外地域よりもむしろ農村地域に生じやすいとした(栗島2004)の通りである。<br> &emsp;しかし、依然として国が最低限の目標とする100t/日の処理量を満たしていない施設も多く、国が示す目標の達成を目指すならば、さらに長期的な視点を持って統廃合の検討を行う必要がある。また、本研究はコスト面からの比較に重点を置いており、自治体の政治・経済の力関係など、他に検討するべき要素も多い。

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