著者
七田 崇
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.151, no.1, pp.9-14, 2018
被引用文献数
5

<p>脳梗塞は脳卒中全体の7割程度を占め,脳組織が虚血壊死に陥ることにより炎症が惹起される.脳梗塞に対する有効な治療薬の開発は未だに十分ではない.脳梗塞後の炎症は,治療可能時間の長い新規治療薬の開発にあたって重要な治療標的となりえる.脳は無菌的な臓器であるため,脳細胞の虚血壊死に伴う自己組織由来の炎症惹起因子(DAMPs)の放出によって炎症が引き起こされる.DAMPsは脳血液関門を破綻させ,脳内に浸潤した免疫細胞を活性化して炎症を惹起する.ミクログリア,マクロファージ,T細胞は脳梗塞巣で炎症性因子を産生して梗塞体積の拡大,神経症状の悪化を引き起こす.T細胞はマクロファージに遅れて脳内に浸潤することから,脳梗塞における新規の治療標的として注目されている.脳梗塞後の炎症を抑制する治療法は有効性が見出されていないが,これはマクロファージやミクログリアが脳梗塞後の炎症の収束期には,修復性の機能を担う細胞へと転換するためであると考えられる.今後は,脳梗塞後の炎症が収束して修復に至るまでのメカニズムが詳細に解明されることにより,炎症の収束を早める治療法の開発に期待が高まっている.</p>

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