- 著者
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表 真美
- 出版者
- 日本家庭科教育学会
- 雑誌
- 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.60, 2017
【目的】本報告の目的は、マルタ共和国における家庭科教育の現状を明らかにすることである。<br /> マルタ共和国は、地中海中央に浮かぶ淡路島の半分ほどの広さの島に、約43万人が暮らすカトリックの国である。マルタ語、および英語が公用語であり、年間約180万人の観光客が訪れる観光立国である。我が国におけるマルタ共和国の教育に関する研究蓄積は極めて少なく、家庭科教育については紹介されたことがない。<br /> しかしながら、国際家政学会(IFHE)にはマルタ共和国の会員が複数名参加しており、2016年のIFHEアニュアルミーティングはマルタ共和国の首都バレッタで開催された。熱心に学会活動を行うIFHE会員をもつ国の家庭科教育について明らかにすることは、我が国の家庭科教育に何らかの示唆が期待できると考える。<br />【方法】本報告は、国が定める教育スタンダードおよびマルタ共和国への訪問調査により得た資料を元にしている。教育スタンダードはマルタ共和国教育省ホームページより入手した。また、2017年3月にホームエコノミクスセミナーセンター、中等教育学校、ジュニアカレッジ、およびマルタ大学を訪問し、大学教員、および家庭科教師への聞き取り調査、授業参観を行った。<br />【結果】得られた結果は以下の通りである。<br />(1)マルタの学校制度の概要は以下のとおりである。3~5歳に就学前教育、義務教育は、5~11歳(6年間)の小学校、11~16歳(5年間)の中等教育学校の11年間であり、その後、後期中等教育は、マルタで唯一の総合大学であるマルタ大学に進むためのジュニアカレッジ、芸術・科学・工学大学に進むためのジュニアカレッジ、および職業教育の3コースに分かれる。<br />(2)一方、マルタ教育省が示す学校教育カリキュラムは、①The Early Years Cycle(就学前教育1・2年と小学校1・2年:KG1、KG2、Y1、Y2)、②Junior Schools Years Cycle(Y3、Y4、Y5、Y6:小学校3・4・5・6年)、③Secondary School Years Cycle(F1、F2、F3、F4、 F5:中等教育学校1・2・3・4・5年)の3段階に分かれる。Secondary School Years Cycleには、マルタ語、英語、数学、宗教/倫理、社会科学、総合科学、物理、歴史、地理、ICT、PHE、表現芸術、PSCD、第2外国語の14教科が設置されている。PHEは、Physical EducationとHome Economics(家庭科)が含まれる教科である。F1、F2に半年間、週2単位時間(40分×2)の男女必修の家庭科、F3、F4、F5に半年間、週2単位時間2回の選択家庭科が位置づけられており、選択人数(試験受験人数)は、毎年120名ほどである。<br />(3)ホームエコノミクスセミナーセンターは、小学校の最上階に設けられ、所長1名と6名の家庭科教師、2名の職員で運営されていた。他教科も同様のセンターを持つ。複数のプログラムが用意されて国内の各学校に広報されている。学校の判断により、先生が児童生徒を連れてセンターを訪れたり、センターの家庭科教師が学校に行って出張授業をしており、保護者向けのプログラムもある。訪問当日は小学校4、5年生の2クラスの子どもたちが同時並行で、お金の授業、野菜と果物の授業を行っていた。小学校には家庭科が教科として設置されていないが、任意の教育が行われている。<br />(4)訪問した中等教育学校では、必修家庭科の調理の授業、選択家庭科の消費生活の授業を参観した。必修家庭科の授業は特別に支援が必要な5名の生徒が対象であった。学校独自のテキストが、特別に支援が必要な生徒向きに改良され使われていた。<br />(5)大学進学のためのジュニアカレッジには専攻科目の1つとしてHome Economicsが位置づけられ、マルタ大学では、教育学部「健康体育教育、消費者科学科」に家庭科教員養成課程がある。