著者
表 真美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.260-271, 2021 (Released:2021-06-05)
参考文献数
30

明治期から昭和戦前期の学校における「家庭の掃除」に関する教育の内容を明らかにするために, 高等女学校家事科検定教科書を分析資料として記述を抽出, 10項目の分析軸を用いて分析し, 『主婦之友』の雑誌記事を補助資料として考察した. その結果, 以下の5点が明らかになった. 1) 49種中47種の教科書から掃除に関する記述が抽出された. 多くの教科書は上巻の「住居」の章に掃除についての節が含まれていた. 2) 毎日の掃除に加え, 曜日を決めて重点的に掃除を行う週掃除, また, 月掃除, 春秋の大掃除を行うことが記され, 毎日の掃除は, 払い掃除, 掃き掃除, 拭き掃除, 洗い掃除について掃除の仕方が説明されていた. 3) 大正期以降, 柄付雑巾や電気掃除機が労力を減らし, 効果的に掃除ができる道具として推奨されていた. 4) 誰が掃除をするかについては, 明治期は使用人の記述があったが, 大正期には「主婦」「婦人」が多く見られ, 昭和期にはその記述が減少した. 5) 掃除は住居の保存上また衛生上重要であることが多くの教科書に記されていた. また, 大正中期以降, 特に昭和期には, 掃除は精神上重要との記述が複数見られた.
著者
表 真美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2017

【目的】本報告の目的は、マルタ共和国における家庭科教育の現状を明らかにすることである。<br /> マルタ共和国は、地中海中央に浮かぶ淡路島の半分ほどの広さの島に、約43万人が暮らすカトリックの国である。マルタ語、および英語が公用語であり、年間約180万人の観光客が訪れる観光立国である。我が国におけるマルタ共和国の教育に関する研究蓄積は極めて少なく、家庭科教育については紹介されたことがない。<br /> しかしながら、国際家政学会(IFHE)にはマルタ共和国の会員が複数名参加しており、2016年のIFHEアニュアルミーティングはマルタ共和国の首都バレッタで開催された。熱心に学会活動を行うIFHE会員をもつ国の家庭科教育について明らかにすることは、我が国の家庭科教育に何らかの示唆が期待できると考える。<br />【方法】本報告は、国が定める教育スタンダードおよびマルタ共和国への訪問調査により得た資料を元にしている。教育スタンダードはマルタ共和国教育省ホームページより入手した。また、2017年3月にホームエコノミクスセミナーセンター、中等教育学校、ジュニアカレッジ、およびマルタ大学を訪問し、大学教員、および家庭科教師への聞き取り調査、授業参観を行った。<br />【結果】得られた結果は以下の通りである。<br />(1)マルタの学校制度の概要は以下のとおりである。3~5歳に就学前教育、義務教育は、5~11歳(6年間)の小学校、11~16歳(5年間)の中等教育学校の11年間であり、その後、後期中等教育は、マルタで唯一の総合大学であるマルタ大学に進むためのジュニアカレッジ、芸術・科学・工学大学に進むためのジュニアカレッジ、および職業教育の3コースに分かれる。<br />(2)一方、マルタ教育省が示す学校教育カリキュラムは、①The Early Years Cycle(就学前教育1・2年と小学校1・2年:KG1、KG2、Y1、Y2)、②Junior Schools Years Cycle(Y3、Y4、Y5、Y6:小学校3・4・5・6年)、③Secondary School Years Cycle(F1、F2、F3、F4、 F5:中等教育学校1・2・3・4・5年)の3段階に分かれる。Secondary School Years Cycleには、マルタ語、英語、数学、宗教/倫理、社会科学、総合科学、物理、歴史、地理、ICT、PHE、表現芸術、PSCD、第2外国語の14教科が設置されている。PHEは、Physical EducationとHome Economics(家庭科)が含まれる教科である。F1、F2に半年間、週2単位時間(40分×2)の男女必修の家庭科、F3、F4、F5に半年間、週2単位時間2回の選択家庭科が位置づけられており、選択人数(試験受験人数)は、毎年120名ほどである。<br />(3)ホームエコノミクスセミナーセンターは、小学校の最上階に設けられ、所長1名と6名の家庭科教師、2名の職員で運営されていた。他教科も同様のセンターを持つ。複数のプログラムが用意されて国内の各学校に広報されている。学校の判断により、先生が児童生徒を連れてセンターを訪れたり、センターの家庭科教師が学校に行って出張授業をしており、保護者向けのプログラムもある。訪問当日は小学校4、5年生の2クラスの子どもたちが同時並行で、お金の授業、野菜と果物の授業を行っていた。小学校には家庭科が教科として設置されていないが、任意の教育が行われている。<br />(4)訪問した中等教育学校では、必修家庭科の調理の授業、選択家庭科の消費生活の授業を参観した。必修家庭科の授業は特別に支援が必要な5名の生徒が対象であった。学校独自のテキストが、特別に支援が必要な生徒向きに改良され使われていた。<br />(5)大学進学のためのジュニアカレッジには専攻科目の1つとしてHome Economicsが位置づけられ、マルタ大学では、教育学部「健康体育教育、消費者科学科」に家庭科教員養成課程がある。
著者
表 真美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.369-378, 2006 (Released:2007-10-12)
参考文献数
22
被引用文献数
3

The old articles on the table talk, which were carried in the magazines of the Meiji period, were investigated with a view to locating the first publication citing the advantages of the table talk as well as clarifying the types of those articles. The magazines including those for women by eight different publishers were studied. The results are as follows: 1) The very first article on the table talk in Japan was found in Tsushin Jogaku Kogiroku or Correspondence Course of Study for Women by Yoshiharu Iwamoto in 1887. 2) 23 articles are related to the table talk, and they may be classified into six types: (a) Those that acknowledge it as strengthening the family tie, (b) Those that cite good effects on the education of children, (c) Those recommending it to help rationalize the family system, (d) Those describing in reference to food preparation and table manners, (e) Those that emphasize how happy conversation at the table is good for health, and (f) Those describing how the table talk should be in the new form and function of the dining room.
著者
表 真美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第55回大会・2012例会
巻号頁・発行日
pp.52, 2012 (Released:2014-02-01)

【目的】 瀧井宏臣は子どもたちのライフハザードとして「悲しき食卓」をあげ、母親が市販のベビーフードを利用することを批判している(註1)。一方、子育て不安に関する最近の調査では、「離乳食」を不安に思う母親が増加していたことが報告された(註2)。離乳食は、食べる量が少量であるにもかかわらず、準備に手間と時間がかかるが、せっかく手作りしても子どもが食べてくれないことも多い。市販のベビーフードを「よく」あるいは「ときどき」使ったと回答した母親は合わせて68.8%だが、「手作りを与えたい」との回答も6割にのぼることが、1歳半の子どもを持つ母親を対象とした調査でわかった(註3)。また、厚労省の調査では、8割以上の対象者が「愛情」面で手作りの方が優れていると回答した(註4)。母親は罪悪感を抱えながらベビーフードを使っている。大日向雅美は、子育て期の母親が、「無頓着過ぎる親とがんばり過ぎる親」に大きく二極分化していることを指摘する。がんばり過ぎる母親は完璧に出来ないと傷ついてしまうという(註5)。筆者が2009年に行った幼児を持つ保護者を対象とした調査では「家庭科で離乳食の作り方を詳しく教えて欲しかった」との声がきかれた。 そこで本報告では、「手作り」と「ジェンダー」に注目して、これまで家庭科で離乳食に関する教育がどのように行われてきたかを明らかにし、今後のあり方を考察することを目的とする。【方法】 戦後から現在までの中学校・高等学校家庭科教科書における保育領域、食生活領域の記述から「離乳食」に関する内容を抽出し、家庭科における離乳食についての教育の変遷を明らかにした。また、キーワードに「離乳食」を含む雑誌記事、著書における記述と家庭教科書における内容との関連を検討し、今後の教育のあり方を考察した。【結果】 得られた結果の概要は以下のとおりである。1)1950年代から1970年代に発行された高等学校家庭科教科書(G社)には、離乳の必要性、進め方、離乳食の作り方などが、比較的詳細に述べられる傾向にあった。1985年から1991年に発行された教科書(G社)には、「市販の離乳食製品は、加工法・添加物・味などの点でも問題がある」「味覚の形成上常用はさけたい」、との記述がみられる。同時期に「手抜きママ」がベビーフードを使うことを批判する雑誌記事がみられた。一方、現行の教科書(G社)では、乳幼児を含む「子どもの食生活」全体について1頁があてられているなかで、離乳についての4行の説明のみである。2)中学校教科書(K社)では、職業・家庭時代は母乳・人工栄養、離乳、離乳食、幼児の間食が詳細に説明されていたが、1966年の技術・家庭以降は間食を中心とした幼児食のみになり、離乳食の記述はみられない。3)「離乳食」をキーワードにもつ国立国会図書館の収録数は、食育推進連絡会議が設置された(2002年11月)後に件数が急増し、前後5年間の年間平均収録数は、1997年から2002年までの5年間は10.6件、2003年から2007年までは24.2件と倍以上に増加していた。その多くを占めるは手作り離乳食のレシピ本であった。手作りブームのなかで、母親を追いつめることのない指導が望まれる。【註】 1.瀧井宏臣(2004).悲しき食卓 こどもたちのライフハザード 岩波書店 2.原田春美・小西美智子・寺岡佐和(2011).子育て不安の実態と保健師の支援の課題,人間と科学.11(1),53-62 3.天野信子(2011).1歳半健診受診者の母親を対象とした離乳食に関する実態調査.帝塚山大学現代生活学部紀要.7.55-63 4.厚生労働省(2005)平成17年度乳幼児栄養調査5.大日向雅美(2009).離乳食で保護者を追い詰めないために‐指導ではなくエンカレッジを.食生活.103(12).56-59
著者
表 真美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.136-146, 2004-07-01 (Released:2017-11-22)
参考文献数
15
被引用文献数
1

Home economics schoolbooks and supplementary textbooks for Finnish comprehensive schools were investigated. The findings were follows: 1. Three kinds of schoolbooks and 12 kinds of supplementary textbooks for home economics are published from 3 companies in Finland. 2. The home economics teacher decides whether or not to adopt these books. The schoolbooks and the supplementary textbooks that they adopt are distributed to all students for free of charge. 3. The schoolbooks were composed of contents about family relationships, food, washing and cleaning, consumer education, and environmental education. 4. The pages with content about food are 68〜74%. Especially, the recipes for many kinds of dishes, such as bread, and cake are included in these schoolbooks. 5. The contents of the schoolbooks are concrete and practical. 6. Most of the supplementary textbooks are about food. 7. The schoolbooks and supplementary textbooks of home economics for Finnish Comprehensive schools correspond to the purpose of Finnish basic education and also to the framework curriculum for the comprehensive schools in 1994.
著者
表 真美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.128-135, 2004-07-01
被引用文献数
2

The aim, the contents and the curriculum of home economics education for Finnish comprehensive schools were investigated. The findings were as follows: 1. All girls and boys in the 7th grade (aged around 13) get three hours per week of home economics for one year. Furthermore, students in grades 8-9th can choose home economics as an elective. 2. The purpose of teaching home economics is to develop preparedness in the student that will help him to get along in everyday life. 3. The main contents of home economics are the education about nutrition, food culture, prudent consumers, home and the environment.
著者
表 真美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.136-146, 2004-07-01
被引用文献数
1

Home economics schoolbooks and supplementary textbooks for Finnish comprehensive schools were investigated. The findings were follows: 1. Three kinds of schoolbooks and 12 kinds of supplementary textbooks for home economics are published from 3 companies in Finland. 2. The home economics teacher decides whether or not to adopt these books. The schoolbooks and the supplementary textbooks that they adopt are distributed to all students for free of charge. 3. The schoolbooks were composed of contents about family relationships, food, washing and cleaning, consumer education, and environmental education. 4. The pages with content about food are 68〜74%. Especially, the recipes for many kinds of dishes, such as bread, and cake are included in these schoolbooks. 5. The contents of the schoolbooks are concrete and practical. 6. Most of the supplementary textbooks are about food. 7. The schoolbooks and supplementary textbooks of home economics for Finnish Comprehensive schools correspond to the purpose of Finnish basic education and also to the framework curriculum for the comprehensive schools in 1994.