- 著者
-
半田 修士
モハンマド ズルファデゥリ
松井 靖浩
及川 昌子
水戸部 一孝
- 出版者
- 一般社団法人 日本交通科学学会
- 雑誌
- 日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.2, pp.19-28, 2017
平成27年中の状況別交通事故死傷者において、歩行中の事故により死亡する割合が37.3%と最も高く、次いで自動車乗車中が32.1%、自転車乗車中が13.9%の順に多い。さらに、平成27年中の自転車乗車中の死者数に占める高齢者の割合は65.0%であり、自転車乗車中の致死率は高齢者が最も高い。以上より、高齢者ほど交通事故に遭った時に致命傷になり得るため、安全に自転車を乗用するための対策が必要である。本研究では、自転車運転中の交通事故誘発要因を評価するための自転車運転シミュレータを開発した。この装置は、バーチャルリアリティ(VR)技術で仮想交通環境を構築し、モーションキャプチャ技術でVR環境下における自転車運転動作を計測することができる。本システムを用いることで擬似的な車道横断を体験することが可能であり、車道横断時の交通事故誘発リスクを検討できる。高齢者18名および若年者15名を対象として、自転車で車道を直進している状態から横断し終えるまでの動作を本システムにより計測した。本検査では手前車線において若年者で0件、高齢者で30件(17%)事故に遭った。そのため、手前車線で2回以上事故に遭っている高齢検査参加者を交通事故の「高リスク群」、手前車線での事故が1回以下の高齢検査参加者を「低リスク群」、若年検査参加者を「若年者群」に分類し行動の差異を調べた。本論文では自転車乗車時の頭部とVR空間上の自転車の動きを解析し、車道横断に要した時間、横断直前の後方確認に要した時間および後方確認を終えてから車道に進入するまでに要した時間を算出した。その結果、車道横断時に車道上に長く滞在していること、車道に進入する前の最終後方確認に費やす時間が短いこと、最終後方確認から車道に進入するまでに時間を長く費やしてしまうことが交通事故リスクを上昇させる要因であることを明らかにした。