著者
松井 靖浩 及川 昌子
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.32-38, 2018 (Released:2019-12-21)
参考文献数
4

本稿では、歩行者検知型被害軽減装置を搭載する車両の衝突速度低減時の歩行者の被害軽減効果を明確にすることを目的とし、貨物車を含む車両の衝突速度と歩行者重傷率・死亡率との関係を交通事故実態に基づき分析した。ここでは、公益財団法人交通事故総合分析センター所有の交通事故統合データおよび事故例調査データを使用した。大型貨物車、中型貨物車、小型貨物車、1Box車、セダンを対象として、車両衝突速度が減少した場合の歩行者の傷害状況を分析した。セダンが30km/h以下、小型貨物車および1Box車が20km/h以下、中型貨物車が10km/h以下で歩行者に衝突した場合、死亡率は5%以下となった。大型貨物車は、10km/h以下で歩行者に衝突すると、死亡率が10%以下となった。このように歩行者の死亡率は、車種により異なる傾向を示すことが明らかとなった。また、車両衝突速度が30km/h以上の場合、衝突速度を10km/h低減させるだけでも死亡率は大幅に減少可能なことが示された。交通事故による死傷者を大幅に低減させる技術として、歩行者検知型被害軽減装置への期待は大きい。将来、車両衝突速度を減少させる機能が適切に作動可能な装置として、車種ごとに適切な目標を定めて開発され、貨物車を含む各種車両に適用された場合、交通事故における歩行者の死傷者数の大幅な減少が期待される。
著者
松井 靖浩 石井 雅博 山下 和也 唐 政
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.332, pp.23-26, 2007-11-12

視覚からもたらされる情報は他の感覚からもたらされる情報に優先して働く.しかし,最近の研究において視覚優位が崩れることがあることが知られるようになってきた.空間的な課題の場合は確かに視覚優位であるが,時間的な課題の場合は聴覚が優位に働くというのである.このことから,空間的であり,また時間的でもある運動の課題を提示した場合はどちらが優先するかという疑問が生まれる.そこで,本研究ではフラッシュラグ効果を発生させる際に聴覚刺激を提示することによって錯視量に与える影響を調べた.
著者
松井 靖浩 及川 昌子 一杉 正仁
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.11-19, 2016 (Released:2018-03-01)
参考文献数
9

都市部における自転車の走行状況を明確にすることで、交通事故発生メカニズムを解明し、交通安全対策を行うための基礎資料に資することを目的とする。本稿では、最初に朝の通勤時間帯に信号機のない交差点における自転車乗員の行動特性を分析した。その結果、自転車の交差点進入時の平均走行速度は3.09m/sであった。また、進行方向に向かって道路中央より左側と道路の左路側帯を走行する自転車乗員が86%を占め、多くの自転車が道路の左側を走行していることが分かった。ただし、この交差点の左角には建物があり、交差道路を行き交う車両、自転車、歩行者が自転車乗員には死角となり、交差点進入直前まで認識が困難な環境であった。このように、道路の左側を走行する自転車がある程度の走行速度を保ち、安全確認をせずに交差点に進入する自転車乗員の行為は、とくに走行音を伴わない電気自動車や自転車が接近した場合、出会頭による車両等との衝突事故の起因になり得ることが予想される。次に、車両に搭載したドライブレコーダより取得できるニアミスデータを用い、車両と自転車との接近状況を分析した。車両と自転車との接近状況について、死亡事故とニアミスを調査した結果、いずれの事象も車両が直進し、前方を自転車が横断する事例が最も多い傾向にあった。本結果から、ニアミスデータは事故状況を把握する上で活用可能であると考えられる。そこで、ニアミス事象において車両が直進し自転車が横断するケースに着目し、衝突予測時間(TTC)を算出した。その結果、建物や車両などの物陰から自転車が飛び出す場合のTTCは、障害物なしの状態で飛び出す場合のTTCと比べ有意に短いことが判明した。これら2つの結果より、自転車乗員、車両運転者共に建物などの障害物により見通しが悪く、相手を認識できない場合、出会い頭での交通事故に至る可能性が極めて高くなることが推察される。今後、本分析結果に基づき、自転車専用のカーブミラー等の新規設置により視界が改善されることが望まれる。さらに、自転車検知型被害軽減装置の開発や保護性能評価手法において、本分析結果が反映されることが期待される。
著者
半田 修士 モハンマド ズルファデゥリ 松井 靖浩 及川 昌子 水戸部 一孝
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.19-28, 2017

平成27年中の状況別交通事故死傷者において、歩行中の事故により死亡する割合が37.3%と最も高く、次いで自動車乗車中が32.1%、自転車乗車中が13.9%の順に多い。さらに、平成27年中の自転車乗車中の死者数に占める高齢者の割合は65.0%であり、自転車乗車中の致死率は高齢者が最も高い。以上より、高齢者ほど交通事故に遭った時に致命傷になり得るため、安全に自転車を乗用するための対策が必要である。本研究では、自転車運転中の交通事故誘発要因を評価するための自転車運転シミュレータを開発した。この装置は、バーチャルリアリティ(VR)技術で仮想交通環境を構築し、モーションキャプチャ技術でVR環境下における自転車運転動作を計測することができる。本システムを用いることで擬似的な車道横断を体験することが可能であり、車道横断時の交通事故誘発リスクを検討できる。高齢者18名および若年者15名を対象として、自転車で車道を直進している状態から横断し終えるまでの動作を本システムにより計測した。本検査では手前車線において若年者で0件、高齢者で30件(17%)事故に遭った。そのため、手前車線で2回以上事故に遭っている高齢検査参加者を交通事故の「高リスク群」、手前車線での事故が1回以下の高齢検査参加者を「低リスク群」、若年検査参加者を「若年者群」に分類し行動の差異を調べた。本論文では自転車乗車時の頭部とVR空間上の自転車の動きを解析し、車道横断に要した時間、横断直前の後方確認に要した時間および後方確認を終えてから車道に進入するまでに要した時間を算出した。その結果、車道横断時に車道上に長く滞在していること、車道に進入する前の最終後方確認に費やす時間が短いこと、最終後方確認から車道に進入するまでに時間を長く費やしてしまうことが交通事故リスクを上昇させる要因であることを明らかにした。
著者
松井 靖浩 高橋 国夫 西本 雄俊 水野 幸治 一杉 正仁 中根 大祐 和波 真吾
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.1017-1022, 2010

歩行者が車両に衝突される際の胸部傷害が発生する要因を解析している.ボンネット車と1BOX車について,車対歩行者の有限要素解析を実施し,車体の形状や構造と,歩行者の挙動や胸郭の変形・応力との関係を調べた.また,頭部インパクタを用いた衝撃試験シミュレーションから胸部傷害評価の可能性も調査した.