- 著者
-
森田 優子
- 出版者
- 日本小児血液・がん学会
- 雑誌
- 日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.5, pp.336-339, 2017
<p>日本の医療は,治療の質は世界でもトップクラスだと言われて久しい.しかし,入院中の患者・家族のケアは欧米に比べ不十分だと言われている.小児がんや難病の子ども達と家族の精神的ケアを目的に,認定特定非営利活動法人シャイン・オン・キッズでは,ハンドラーと呼ばれる臨床経験のある看護師と,ファシリティドッグのチームを病院に派遣している.</p><p>ファシリティドッグとは,特定の施設に常勤し,職員として勤務する犬のことである.癒しを目的とする触れ合い活動に留まらず,より治療に関わる仕事をしている.ファシリティドッグが介在することにより,採血の時に泣き叫ぶ子どもが落ち着いて実施することができたり,手術室まで同行すると落ち着いて入室することができる.</p><p>闘病中だからと我慢するのではなく,闘病中であっても,楽しいこと・笑顔になれることは重要である.</p><p>小児医療では,患者家族のケアも必要であるが,ファシリティドッグの存在により,不安やストレスを軽減することができると言う家族も多く,また,同じハンドラーとファシリティドッグが頻回に訪問してくるため信頼関係が築かれ,医療スタッフには言えない本音を出せる家族もいる.</p><p>多忙な業務の中で,ファシリティドッグに会うと気持ちが和らぐと言う医療スタッフも多く,ファシリティドッグは,子ども達と家族を笑顔にするだけでなく,医療スタッフを含め病院全体を笑顔にしている.</p>