著者
北條 賢
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.60-67, 2016

生物はなぜ他個体に協力的な振る舞いを示すのか?この疑問は生物学の大きな命題の一つとして長年議論されている。相利共生は個体が互いに利益を与え合う生物種間の協力的な関係であり,関係を持つ個体同士が栄養や防衛,繁殖といった商品やサービスを交換し合う。しかしながら,相利共生には潜在的な利害対立が存在し,理論的には対価を支払わずに相手のサービスを搾取する「裏切り」が個体にとっての最大の利益をもたらす。そのため各個体は,パートナーの潜在能力・相手から受け取った直接的な利益・相手の過去の振る舞い・自らの社会的状況といった様々な要因に応じて,協力行動をとるか否かの意思決定を柔軟に下す必要がある。近年,送粉共生・防衛共生・掃除共生において,協力行動の生理的メカニズムに着目した研究が進み,神経修飾物質・神経ホルモンを介した協力行動の可塑性や連動性の一端が明らかにされつつある。今後,生態学的に妥当な条件下で協力行動が制御される生理学的メカニズムを明らかにしていくことで,相利共生を始めとする生物の協力行動の総合的な理解が深まることが期待される。

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