著者
持田 浩治 香田 啓貴 北條 賢 高橋 宏司 須山 巨基 伊澤 栄一 井原 泰雄
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.177, 2020 (Released:2020-12-24)
参考文献数
139

試行錯誤をともなう個体学習に比べ、他者やその産出物(例えば音声や匂いなど)の観察を基盤とする社会学習は、学習効率が高く、獲得された行動が集団内に迅速に伝わる。また社会学習の存在は、昆虫類などの無脊椎動物から霊長類まで幅広く知られており、近年、キイロショウジョウバエが学習モデルとして導入されたことで、その神経生理基盤や遺伝基盤が解明される日が急速に近づいている。しかしながら、社会学習やそれにともなう集団内での行動伝播が生態学的現象に与える影響は、ほとんど明らかになっていない。とりわけ、種間交渉を通して、社会学習が他種や種間関係、生態系に与える影響について、ほとんど議論されていない。そこで本総説は、昆虫類、魚類、両生類、爬虫類、鳥類における社会学習の実証研究を紹介し、その課題を取りあげる。また実証研究として紹介した社会学習に関する三つのテーマについて、数理モデルを取り入れた理論研究を紹介する。これらを通して、生態学的現象における社会学習の役割とその重要性を理解し、当該分野の今後の発展に貢献することができれば幸いである。
著者
北條 賢
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.60-67, 2016-07-01 (Released:2016-07-27)
参考文献数
63
被引用文献数
1

生物はなぜ他個体に協力的な振る舞いを示すのか?この疑問は生物学の大きな命題の一つとして長年議論されている。相利共生は個体が互いに利益を与え合う生物種間の協力的な関係であり,関係を持つ個体同士が栄養や防衛,繁殖といった商品やサービスを交換し合う。しかしながら,相利共生には潜在的な利害対立が存在し,理論的には対価を支払わずに相手のサービスを搾取する「裏切り」が個体にとっての最大の利益をもたらす。そのため各個体は,パートナーの潜在能力・相手から受け取った直接的な利益・相手の過去の振る舞い・自らの社会的状況といった様々な要因に応じて,協力行動をとるか否かの意思決定を柔軟に下す必要がある。近年,送粉共生・防衛共生・掃除共生において,協力行動の生理的メカニズムに着目した研究が進み,神経修飾物質・神経ホルモンを介した協力行動の可塑性や連動性の一端が明らかにされつつある。今後,生態学的に妥当な条件下で協力行動が制御される生理学的メカニズムを明らかにしていくことで,相利共生を始めとする生物の協力行動の総合的な理解が深まることが期待される。
著者
寺西 眞 藤原 直 白神 万祐子 北條 賢 山岡 亮平 鈴木 信彦 湯本 貴和
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.482, 2004 (Released:2004-07-30)

ホトケノザは、主に他花受粉をおこなう開放花と自家受粉のみをおこなう閉鎖花を同時につける一年草で、種子にエライオソームを付着する典型的なアリ散布植物である。一般的に、自殖種子は親と同じ遺伝子セットを持つため、発芽個体は親と同じ環境での生育に適していると考えられ、他殖種子は親と異なる遺伝子セットを持つため、親の生育環境と異なる新しい環境へ分散・定着するのに適していると考えられる。したがって、自殖種子は親元近くへ散布され、他殖種子は親元から離れた環境へ散布されるのが生存に有利であると考えられている。 開放花由来種子は閉鎖花由来種子より種子重・エライオソーム重・エライオソーム/種子(_%_)が有意に大きく、トビイロシワアリによる持ち去り速度が大きいことが明らかとなった。エライオソームを取り除いたホトケノザの種子は、エライオソームが付いたままの種子よりトビイロシワアリに持ち去られる割合・速度が低かった。また、エライオソームを接触させたろ紙片はほとんど巣に持ち去られたが、エライオソーム以外の種子表面を接触させたろ紙片はほとんど持ち去られなかった。 このようなアリの行動の違いがなぜ生じるのかを検討するため、アリの反応に関わる物質・アリの資源となる物質に着目して種子表面の化学的特性を調べた。その結果、遊離脂肪酸(オレイン酸、リノール酸など)、糖(フルクトース、グルコース)、アミノ酸(アラニン、ロイシンなど)が含まれていることが分かった。 これらのことから、ホトケノザは種子表面、特にエライオソームに含まれる化学物質の量・質を繁殖様式によって変えることで、アリによる持ち去り速度をコントロールしている可能性があることが示唆された。
著者
北條 賢
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.60-67, 2016

生物はなぜ他個体に協力的な振る舞いを示すのか?この疑問は生物学の大きな命題の一つとして長年議論されている。相利共生は個体が互いに利益を与え合う生物種間の協力的な関係であり,関係を持つ個体同士が栄養や防衛,繁殖といった商品やサービスを交換し合う。しかしながら,相利共生には潜在的な利害対立が存在し,理論的には対価を支払わずに相手のサービスを搾取する「裏切り」が個体にとっての最大の利益をもたらす。そのため各個体は,パートナーの潜在能力・相手から受け取った直接的な利益・相手の過去の振る舞い・自らの社会的状況といった様々な要因に応じて,協力行動をとるか否かの意思決定を柔軟に下す必要がある。近年,送粉共生・防衛共生・掃除共生において,協力行動の生理的メカニズムに着目した研究が進み,神経修飾物質・神経ホルモンを介した協力行動の可塑性や連動性の一端が明らかにされつつある。今後,生態学的に妥当な条件下で協力行動が制御される生理学的メカニズムを明らかにしていくことで,相利共生を始めとする生物の協力行動の総合的な理解が深まることが期待される。