著者
真嶋 光 鈴木 康義 折笠 精一
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.114-124, 1986
被引用文献数
1

種々の毒素, 酵素等の細菌産生物のラット膀胱上皮に及ぼす影響を走査電顕で観察し, 又尿路感染症患者13人の尿中 endotoxin 濃度を測定した.<br>1) 急性膀胱炎患者尿中には0.01~1μg/ml, 複雑性尿路感染症患者尿中では0.1~10μg/mlと正常人尿中の0.001μg/ml以下に比してて高濃度の endotoxin が存在した.<br>2) 細菌浮遊液 (E. coli 07 10<sup>8</sup>/ml) 及び細菌培養濾液 (endotoxin 濃度1~5μg/ml) のラット膀胱内注入では, 表層細胞表面の microplicae の腫脹, 上皮細胞の膨化及び剥離, 赤血球及び白血球の出現等の所見が両者で同程度に認められ, 4時間後には膀胱の約半分を占める部で変化を認める激しいものであった. 細菌浮遊液注入時の細菌の上皮への付着は経時的な上皮の変性に伴って増加した. 4.4×10<sup>4</sup>/mlの細菌浮遊液注入での変化は軽微であり, endotoxin (5μg/ml) では中等度の変化を認めた.<br>以上の結果は細菌の存在なしに, 細菌培養濾液中の種・々の毒素, 酵素等の細菌産生物が膀胱上皮の変化を引き起こした事を示しており, またこの変化が細菌付着及びそれに続く細菌感染の引き金となる可能性が考えられる. この様に尿中の高濃度の毒素, 酵素は高濃度の細菌と協同して臨床的にも膀胱炎発症に重要な役割を果していると推定された.

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