著者
星 宣次 折笠 精一 吉川 和行 鈴木 謙一 石戸谷 滋人 伊藤 明宏 近藤 丘 今井 克忠 木崎 徳 鈴木 康義 加藤 正和
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.46-52, 1997-01-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
20

(背景と目的) 腎癌肺転移切除例を検討し, その有用性と手術適応を明らかにする.(対象と方法) 1981年より1994年末までに腎癌肺転移の切除術を行った17例 (男性14例, 女性3例) を対象とした. 肺転移手術時の年齢は, 45歳から73歳で平均年齢61歳. 原発巣術後に肺転移が出現したのが11例, 6例は腎癌診断時肺転移があり, 3例は肺手術を, 3例は腎摘を先行した. 他臓器転移が4例に見られ, 脳転移摘出, 対側腎転移に対する腎部分切除, 胸壁と肋骨転移部切除, 対側副腎転移の切除がそれぞれ行われた. 肺の片側手術例14例, 両側手術例が3例であり, 12例に肺部分切除が行われ, 5例に肺葉切除術が行われた.(結果) 肺手術後生存期間は10ヵ月から10年9ヵ月で, 肺手術による合併症は認められなかった. 疾患特異的生存率, 無病生存率はそれぞれ5年で55, 48%, 10年で27, 14%であった. 癌なし生存例はすべて10個未満の肺転移例であった.(結論) 腎癌の肺転移切除により長期生存例が得られ, 症例によっては大変有用であった. 肺転移数が10個未満の症例に予後良好例が認められた.
著者
真嶋 光 鈴木 康義 折笠 精一
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.114-124, 1986
被引用文献数
1

種々の毒素, 酵素等の細菌産生物のラット膀胱上皮に及ぼす影響を走査電顕で観察し, 又尿路感染症患者13人の尿中 endotoxin 濃度を測定した.<br>1) 急性膀胱炎患者尿中には0.01~1μg/ml, 複雑性尿路感染症患者尿中では0.1~10μg/mlと正常人尿中の0.001μg/ml以下に比してて高濃度の endotoxin が存在した.<br>2) 細菌浮遊液 (E. coli 07 10<sup>8</sup>/ml) 及び細菌培養濾液 (endotoxin 濃度1~5μg/ml) のラット膀胱内注入では, 表層細胞表面の microplicae の腫脹, 上皮細胞の膨化及び剥離, 赤血球及び白血球の出現等の所見が両者で同程度に認められ, 4時間後には膀胱の約半分を占める部で変化を認める激しいものであった. 細菌浮遊液注入時の細菌の上皮への付着は経時的な上皮の変性に伴って増加した. 4.4×10<sup>4</sup>/mlの細菌浮遊液注入での変化は軽微であり, endotoxin (5μg/ml) では中等度の変化を認めた.<br>以上の結果は細菌の存在なしに, 細菌培養濾液中の種・々の毒素, 酵素等の細菌産生物が膀胱上皮の変化を引き起こした事を示しており, またこの変化が細菌付着及びそれに続く細菌感染の引き金となる可能性が考えられる. この様に尿中の高濃度の毒素, 酵素は高濃度の細菌と協同して臨床的にも膀胱炎発症に重要な役割を果していると推定された.
著者
栃木 達夫 西村 洋介 福崎 篤 吉川 和行 星 宣次 棚橋 善克 折笠 精一 今井 克忠
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.1357-1367, 1985-09-20

81例の膀胱移行上皮癌に内視鏡的膀胱内写真撮影を行なった.それらを腫瘍表面の形状に基き,内視鏡的に6型に分類し,膀胱癌取扱い規約1)に従って,種々の角度から検討を加えた.その結果,膀胱移行上皮癌の組織構築の違いより生ずる腫瘍の内視鏡的増殖様式の相違は,その腫瘍の発育進展様式や浸潤速度等と密接な関係を有し,予後に深く関係していることが明らかとなった.すなわち,いそぎんちゃく状やいくら状の増殖様式を示すいわゆる乳頭状腫瘍は,一般に,腫瘍が大きくなるに従い,又は,再発をくり返すうちに下方(壁内)浸潤発育癌となるのに対し,表面平滑な結節状の増殖様式を示すあんぱん状とでも言うべき腫瘍は,早期から下方(壁内)浸潤発育を伴うと考えられた.一方,臨床的には,乳頭状ともあんぱん状とも言えぬ,いちご状とでも表現すべき増殖様式を示す腫瘍があり,この腫瘍は,乳頭状腫瘍とあんぱん状腫瘍の中間的又は混合した性質をもつと思われた.以上のことから,我々は,組織構築を重視する山田らの分類を参考にして,臨床的立場から,膀胱移行上皮癌の新しい内視鏡的分類を提唱した.
著者
高橋 薫 福崎 篇 目時 利林也 折笠 精一
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.806-812, 1986

経皮的腎結石摘出術後の腎瘻を有しIVP上正常尿管と考えられる10症例10尿管について,特別な水分負荷をすることなく,仰臥位,無麻酔下で腎瘻よりPressure-Flow Study(PFS)を行なった.腎瘻からの溶液注入量を低注入率(0.5ml/min)から高注入率(10ml/min)まで変化させ,各注入量時の腎盂内圧の変化を比較検討した.また注入液に色素を加えたものを0.5ml/minの定速で注入し,色素が膀胱に達するまでの時間(transit time, T)を測定した.さらに腎瘻から造影剤を注入して各注入率時の尿管の輸送形態をレ線学的に比較し,PFSの結果と比較した.生理的自尿排出時(注入率,F=0ml/min)の腎盂内圧は12〜22.5cmH_2O,平均16.2±3.0cmH_2Oであった.(2)3ml/min以下の低注入率では,腎盂内圧の上昇をみるが,4ml/min以上の高注入率では不変ないし下降した.(3)Transit time(T)は,350〜850sec,平均610±158secであった.腎盂の形態が正常の3例の平均は417secであり,transit time(T)は水腎症の程度に影響された.(4)尿管輸送形態のレ線学的観察により3ml/min以下の低注入率時には主に蠕動運動により,また4ml/min以上の高注入率時には主に尿管が管状となって尿を輸送することが判明した.(5)PFSの結果に基づき計算した尿管抵抗は,注入率が3ml/min以下と4ml/min以上でそれぞれの回帰直線は明らかに異なっていた.このことは(2)及び(4)の結果とよく一致していた.
著者
金田 隆志 星 宣次 毛 厚平 高橋 とし子 鈴木 謙一 佐藤 信 折笠 精一
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.33-42, 1998-01-20
被引用文献数
2 1

(目的)健常者の抹消血液中にはケラチン19は存在せず、もし血液中から検出されれば上皮性癌細胞が存在しているものと考えられる。そこでnested RT-PCR法を用いて、種々の尿路性器悪性腫瘍患者の抹消血液からケラチン19 mRNAの発現の有無を検討し、転移との関連を検討した。(方法)ヒト尿路性器癌培養細胞12種類、泌尿生殖器担癌患者39例、健常者9例を対象とし、患者および健常者の抹消静脈から血液6mlを採血し、Ficillを用いてnested RT-PCRを行い、サザンブロッティングで確認した。(結果)用いた培養細胞は全て陽性で、検出率は健常者リンパ球1×10個に対して腎癌細胞TOS-1は1個の混入でもケラチン19 mRNAが検出され、膀胱癌細胞KK47では1×10^6個の混入ではじめてケラチン19 mRNAが検出された。健常者9例の抹消血は前例陰性であった。尿路性器悪性腫瘍患者の抹消血では転移のみられない症例よりも、転移を有する症例のほうがnested RT-PCRの陽性率が高く、またリンパ節のみの転移よりも他の遠隔転移を有する症例のほうが陽性率が高かった。また、短期間の観察であるが、転移の有する場合でもnested RT-PCR陽性のほうが予後不良であった。疾患例では、精巣腫瘍は検出されにくく陰茎癌は検出されやすい印象であった。(結論)RT-PCR法を用いたケラチン19 mRNAの抹消血よりの検出法は尿路性器腫瘍にも利用できる。