著者
伊藤 幹二
出版者
特定非営利活動法人 緑地雑草科学研究所
雑誌
草と緑 (ISSN:21858977)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.9-20, 2011

今日,日本人の多くは,二酸化炭素濃度の上昇や温暖化が地球環境に影響することを知っていても,身の回りに生育する雑草がこの環境変化にどのように反応し,私たちの生活にどのような影響を与えているか気づくことはない.雑草は,人々が環境を変えることによって始めて生まれる生物である.そして,雑草は,'ふえる''ひろがる''変化することを特徴とし,これを食草とする昆虫・鳥類・哺乳類も同時に増える・広がる・変化する.今日,都市の二酸化炭素濃度の上昇と温暖化は,雑草のバイオマス量を劇的に増大させ,その直接的・間接的環境および経済的被害を拡大させている.この数10年間気づかないうちに,雑草は生活圏の活動の場を征服しかねない脅威的な生き物に変貌しているのである.それにも関わらず,雑草の繁茂やその被害に対する研究機関,国や地方自治体,そして企業などの無関心や無神経さはいったい何に原因しているのか.雑草の変化に原因する経済的,社会的,環境的被害リスクについて考える.

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