- 著者
-
渡邊 勧
- 出版者
- 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
- 雑誌
- 関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, pp.46, 2011
【目的】<BR>介護保険サービスにおける通所リハビリテーションは、コミュニティの場としての集団性を活用した参加、活動の向上や、リハ専門職が個別に介入し、ADL維持・向上を目指す場として知られているが、リハ専門職が通所リハビリテーションに従事する通所リハ利用者と実施していない通所介護サービスの利用者とADL推移を比較することで、リハ専門職が従事する意義を検討することとした。<BR>【方法】<BR>調査は通所リハ3施設、通所介護3施設の協力のもと半年間(2010年4月および10月)で行われ、利用者には担当ケアマネージャーを通して研究の趣旨を説明し、同意を得た後、2回の調査を実施した。対象は、調査期間中、健康状態の悪化等により、大幅なADLの低下や入院時の医療リハを受けていない要介護1~5の通所リハ利用者52名(男性23名、女性29名、平均年齢82.6±8.3歳、平均介護度2.3±0.9)及び通所介護利用者30名(男性8名 女性22名 平均年齢88.2±6.1歳、平均介護度2.6±1.1)の計82例を対象とし、2群間におけるFIM得点の推移比較を行った。統計処理は、統計処理ソフトIBM SPSS Statisticsを用い、群間及び6ヶ月後のADL推移をベースライン時と比較した。なお、危険率は5%未満とした。<BR>【結果】<BR>群間おける比較では、年齢(p=0.002)、FIM総合点は通所リハ群97.8±20.5、通所介護群82.4±24.1(p<0.05)、FIMの各項目においては、すべての項目で群間の差が認められた。半年間の変化量については、移乗項目が通所リハ群-0.1±0.9、通所介護群-1.5±2.5(p<0.05)であり、その他の項目には有意差が認められなかった。<BR>【考察】<BR>群間の差は、対象者のニーズからのサービスの振り分けによる差も考えられ、より若く、ADLの高い対象者がリハビリテーションを希望することが一つの要因と推測される。ADLの低下は両群に認められ、より通所リハ群が少ないことから、専門職としての介入効果は関係していると考えられるが、移乗項目以外の項目には有意差が認められなかった。これはセルフケアをはじめとする項目は介護士による介入が多く、実際に在宅のADL向上に結びついていないことで生活の延長である通所介護と差異がなく、リハの特性が生かせていないのではないかと推測する。<BR>【まとめ】<BR>施設リハにおいては、個別リハを対象とした関わりを持てる範囲も限られることから、今後より長期的な調査を実施しながら、ADL全般を他職種と連携したリハビリテーションにつなげる介入の検討に繋げていくリハ専門職の意義が問われると考える。<BR>