著者
川添 貴章 大谷 栄治
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.62, 2004

1.はじめに現在、初期地球における集積とそれにともなう地球中心核の形成過程を総合的に理解するモデルとして、深いマグマオーシャンのモデルが広く受け入れられている。まず微惑星の集積によって初期地球が成長すると同時に、その衝突エネルギーによって地球表層が熔融しマグマオーシャンを形成した。その中において熔融した金属鉄がマグマから分離し、原始マントルを沈降して核を形成した。その沈降する過程において熔融した金属鉄はマグマもしくは原始マントル鉱物と元素の分配反応をしたと考えられ、その反応の痕跡はマントル組成に見られる。Fe、Ni、Coはマントル存在度をMgで規格化してCIコンドライト組成と比較すると約10分の1に枯渇している。この枯渇の要因を高温高圧下における熔融金属鉄とマグマもしくは原始マントル鉱物との分配から説明し、マグマオーシャン底部の条件を見積もる研究が行われてきた。マグマオーシャンの深さ・その底部の温度を見積もることは集積・核形成についてだけでなく、固化過程を含めた冥王代の地球の姿を解き明かすためにも非常に重要なものである。本研究では28 GPa、2400 Kにおいて熔融金属鉄と原始マントルを構成したと考えられるMg-ペロヴスカイト、マグネシオヴスタイト間のFe、Ni、Coの分配係数とそれに与える酸素分圧の効果について研究を行った。2.実験方法高圧発生装置には東北大学設置の川井型3000 tonプレスを用いた。二段目アンビルには先端サイズ2.0 mmのタングステンカーバイド製のものを用いた。試料は目標圧力である28 GPaまで加圧した後、圧力媒体内部に組み込んだReヒーターを用いて加熱し、2400 Kで30分から2時間保持し急冷した。脱圧・回収した後、波長分散型EPMAによって組成分析を行った。3.結果と議論分配係数にはFe、Ni、Coの熔融金属鉄とMg-ペロヴスカイト、マグネシオヴスタイト中の重量分率の比を用いた。熔融金属鉄とMg-ペロヴスカイト間の分配係数はNiについて81-161、Coについて41-83、Feについて10.8-35.6であり、熔融金属鉄とマグネシオヴスタイト間の分配係数はNiについて11.3-23.2、Coについて8.1-16.2、Feについて3.1-6.4であった。酸素分圧の増加にともないそれぞれの分配係数は減少した。求められた分配係数から見積もられるマントル存在度と実際のマントル存在度を比較・検討すると、マグマオーシャンの深さは約1500 km(50 GPa)であったことが考えられる.

言及状況

外部データベース (DOI)

Wikipedia (1 pages, 1 posts, 1 contributors)

収集済み URL リスト