著者
鈴木 明子 赤崎 真弓 西野 祥子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.2, 2003

【目的】 子どもたちひとりひとりが家庭生活における意思決定をどのような基準で何を考えてどのように行っているのか、その実態を明らかにし、傾向を把握することは、児童・生徒の日常行動をふまえた家庭科カリキュラムの構築と授業設計のために必要不可欠である。本研究では「食事を主体的に準備して食べる」という状況における意思決定の背景を探ることを目的とした。【方法】 日本家庭科教育学会が2001年に実施した『家庭生活についての全国調査』の意思決定場面「休日にあなたが自分で昼ごはんを用意しなければならないとしたら、どんなことを気にかけますか」を用い、11項目について重視する順序を問うとともに、その判断基準や考え方を尋ねる自由記述形式の9つの下位質問項目を設定し、無記名自記式集合調査を行った。併せて休日の昼食などの実態について質問した。 調査時期は2002年9~11月、調査対象は九州地区の小学校4年生93名、小学校6年生105名、中学校2年生93名および高等学校2年生81名、計372名であった。男女の割合は各学年ともほぼ同数であった。 意思決定項目への順位づけの結果を分析し、特徴的な集団の自由記述から、意思決定の背景およびその問題を探った。【結果】 意思決定において重視する項目の順序には、4つの学年各々で有意差がみられた(フリードマンの検定、4学年とも〆0.01)。食事を主体的に準備して食べるという状況下での意思決定の際の基準やプロセスは多様であることが確認できた。このことをふまえてカリキュラムの構築および援業設計を行う必要がある。 しかしながら、夜業を行う際には学習者の意思決定の集団的特徴を知ることも必要である。何らかの傾向を探るために、中学生以下で1番重視すると答えた人数が最も多かった(高校生では2位)「自分で料理ができること」について、その該当者の自由記述を分析した。その結果、同じ項目を意思決定の順位づけの際上位にあげなかった(10および11番目に選択)者と同様に、手間をかけて食事を用意することを特に肯定する記述はみられなかった。該当者は2番目には「おなかいっぱいになること」や「後かたづけが簡単なこと」を気にすると回答した者が多く、このことを裏付けていると思われる。一方、野菜を食べることの大切さや添加物の問題を気にしている者もいたが、調理技能との関連について記述している者はほとんどみられなかった。児童・生徒たちの行動は、健康や環境を意識し、よりよい食生活を営むための必要性から発生しているというよりも、食べるということに対する欲求が大きい誘因となって起こっている場合が多いと推察する。 また、「野菜がたくさん食べられること」と「肉がたくさん食べられること」をそれぞれ1番目および2番目で重視すると答えた者の特徴を比較した。前者は女子に多くみられ、"野菜はいろいろな性質をもっている"、"野菜の栄養素は他で補えるものが少ない"、"身体にいいものが入っていないと不安"など栄養バランスに言及した記述も多く、「自分で料理ができること」も順位づけの上位であった。しかしながらその該当者の中にも、「添加物が少ないこと」を"気にしない"と記述した者が半数近くおり、意思決定の多様な傾向がみられた。また、後者の該当者は男子に多くみられ、「おなかいっぱいになること」を意思決定の順位づけの上位にあげた者が比較的多かった。 家庭科教師は、児童・生徒には多様な意思決定プロセスがあることをふまえ、軽業において、より質の高い健康な食生活を目指して何をしなければならないのかを考えさせる場面を設定することが必要である。

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