- 著者
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大下 市子
鈴木 明子
- 出版者
- 日本家庭科教育学会
- 雑誌
- 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.57, 2014
【目的】<br> 小学校,中学校および高等学校の家庭科学習によって,自立した生活主体としての生活実践力を身に付けさせることが必要である。布を用いた製作の経験が,生活実践力にどのように影響を及ぼしているのか,大学生の家庭科における製作体験と生活実践力との関係を検討することによって明らかにしておくことは,今後の教員養成の指導のあり方を考える上で重要なことと考えられる。 現在の大学生は,中学校での製作は選択内容であり必ず学んでいるとは言えない。また, 高校では「家庭基礎」履修の場合,被服の製作は行わないという教育課程で学んでいる集団である。日常生活でも裁縫経験が乏しい現状を勘案すると,製作体験の精査を行うことは不可欠である。<br> そこで,まず,小学校,中学校および高等学校家庭科でどのような教材を製作し,どのような意識をもって学んできたかという実態を把握した上で,生活実践力との関係を検討することを本報告の目的とした。<br>【方法】 <br> 調査時期:2012年1月,2013年1,7月 <br> 調査対象者:広島市私立総合大学女子大学生1年生142名,2年生53名,3年生10名,4年生6名,合計211名。広島県内出身者 約85%。 <br> 調査内容:小学校,中学校および高等学校家庭科において製作した布を用いた教材と製作への興味・関心・意欲,製作物の使用実態についての質問紙調査を行った。同時に生活を実践する力10項目について問い,製作体験や意識との関係を分析した。<br>【結果】 <br> 家庭科での製作体験有りは,小学校96.7%,中学校75.4%,高等学校50.2%であった。小中高を通しての製作教材数は,3種類が最も多く28.0%,ついで4種類20.9%,2種類19.4%であった。小学校での主な製作物は,袋類(ナップサック・リュックサック・巾着など)であった。体験有りの76.0%が袋類,60.3%がエプロン類を製作していた。中学校では,小物類(クッション・ティッシュケース・刺繍など)がもっとも多く,体験有りの55.3%が製作していた。ついでズボン類(ズボン・ハーフパンツ・短パンなど)で23.9%,エプロン類17.0%であった。高等学校では,袋類(トートバック・手提げ・巾着など)が32.1%,衣服類(ジャケット・シャツ・ワンピースなど)が25.5%,エプロン類が23.6%であった。 これら製作物への興味・関心,製作への意欲は高く,いずれの校種も肯定的な回答が8割みられた。しかし,「製作物をよく使用した」は高等学校34.1%,小学校32.0%,中学校27.8%であった。その後の製作経験を問うたところ,小学校68.2%,中学校64.7%,高等学校67.4%が作っていなかった。<br> 小学校,中学校および高等学校で重複して小物類,エプロン類,袋類を作成している実態が明らかになった。それぞれの校種における教材の種類,布の種類及び製作方法などの検討を行う必要があると考えられる。小学校と中学校において,興味・関心,製作意欲が高いのは小物類であった。中学校のパンツ類製作への興味・関心,製作への意欲は他の製作教材に比べて低く,使用頻度も低い傾向にあった。高等学校では,衣服類製作への興味・関心,製作の意欲は高いものの,使用頻度は低い傾向がみられた。<br> また,小学校,中学校および高等学校を通じての製作教材数と生活を実践する力の「成果」の項目の関係をみたところ,製作数が少なくても成果がみられ,製作数が増えるに従い成果が上がっていることが明らかになった。<br>