著者
得丸 定子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2014

<b>【目的】</b>超高齢社会を迎えている現在の日本において、高齢者の持つ経験や知識は貴重な財産であり、それを他世代に受け継いでいく意義は大きい。また、他世代との交流は高齢者にとっても生きがい感を増すと考えられる。しかし、核家族化が進む現在の日常生活では、高齢者と他世代との交流は希薄になっている。このような現状下、子供の高齢者イメージは年齢が上がるにつれてマイナスイメージに傾くという報告がなされているが、小学校児童の高齢者イメージの変化については触れられていない。ゆえに本研究では、高齢者と児童との世代間交流の実態把握、児童の高齢者イメージ変化把握、世代間交流実践の試みより、世代間交流の在り方を探ることを目的とした。 <br><b>【方法】</b>1.世代間交流の実態調査は新潟県J市内国公立48小学校のHPに記載されたグランドデザイン(H25.3現在)と同J市社会福祉協議福祉会のHPに掲載された「社協だより」(2008年~2013年)を分析対象とした。2.児童の高齢者イメージ調査は、J市内小学生77名(男子39名、女子38名)を対象。高齢者イメージは中野(1991)らの研究に基づいたSD法としての評定尺度を改変して使用。尺度は対称性を持つ形容詞ペアを17項目、5段階評価とした。3.世代間交流実践は、放課後児童クラブが設置されていない地区の児童を対象にしたボランティア活動「ねごしの寺子屋」の中で行った。調査統計処理はjs-STARを用いた。<br><b>【結果】</b>対象全小学校のグランドデザインでは「世代間交流」との用語を用いた記述は0校であったため、検索内容を拡大した結果、「高齢者との交流」記述は2校、「地域との交流」は48校であった。しかし、「地域との交流」の対象者は読み取れなかった。一方「社協だより」では「世代間交流」という用語は明確に使用されており、5年間で計32件の世代間交流活動記事が掲載されていた。 高齢者イメージ調査は、項目ごとの全サンプルの標準偏差に有意なばらつきが無く高齢者イメージは個人によって異なるものではないことが分かった。男女差は見られなかった。また、「髪の毛が白いー黒い」「大きい―小さい」の2項目を除き、他の15項目すべて中立点よりもポジティブ側に寄っていることが示された。次に、学年が上がるにつれイメージがネガティブなものへと変わっていくという報告があるため、本対象者を低学年、中学年、高学年にグループ化して分散分析を行った。全てポジティブ側での結果であるが、「うれしそう―かなしそう」「きちんとした―だらしない」「いそがしそう―ひまそう」「たのしそう―つまらなそう」「すなおな―いじっぱりな」の5項目で、様々なケースでのグループ間有意差が表れた。 【考察】「社協だより」では多くの世代間交流の取り組みが紹介されていたが、小学校のグランドデザインでは、世代間交流の用語は皆無であった。推測の域では「地域との交流」の取り組みの中に「世代間交流」が紛れているとも考えられるが、今後「世代間交流」との言葉を前面に出したグランドデザインの掲載が期待される。 高齢者イメージは、学年が上がるにつれてネガティブなものへ変わると予想していたが、今回はその結果は見られなかった。また学年グループ間比較で5項目の有意差が示されたが、一概に高学年になるにつれてポジティブイメージが下がっている結果ではなかった。本調査対象児童の半数以上が高齢者と同居しており、高齢者と日常的に接する機会が多いため、高齢者イメージはポジティブ側に寄った結果が表れたのではないかと考えられる。幼いころから日常的に高齢者と接することの意義の大きさが示された。 世代間交流実践では、児童と高齢者双方の笑顔が印象的であった。 以上のことから、小学校段階だけでなく、大学まで継続的に高齢者と関わることのできる機会を増やすことが大切であり、そのことが超高齢社会を支える重要な教育の1つであると提言できる。

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