著者
得丸 定子 小林 輝紀 平 和章 松岡 律
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.411-419, 2006-06-15
参考文献数
32

「いのち教育」を展開するための基礎的知見を得るために,大学生を対象に「死の不安に関する多次元的尺度(MFODS)」を用いて,「死と死後の不安」についての意識調査を行い,結果として以下のことが得られた.(1)因子分析では「死と死後の不安」について5因子抽出された.この因子分析結果は,因子数や因子の内容共に,MFODSが開発されたアメリカでの調査及び追試の結果とは異なった.原因としては,宗教や文化的慣習の相違が挙げられる.この相違は「いのち教育」を実践する場合,宗教や慣習を考慮した展開が重要であることを示している.(2)信仰している宗教の有無については,本調査でも約60%の学生が無宗教と回答していた.「いのち教育」は宗教や慣習行事と深い関係があり,実践に際しては宗教や慣習は考慮する必要がある.日本の場合,無宗教と信仰心がないこととは別のことであり,初詣をする,おみくじを引く,お墓参りをするなどの宗教的慣習行動をとっている.このことは「いのち教育」展開の導入として,意味は大きい.(3)「宗教観の低い」学生は「死後の自分の世界と肉体に対する不安」因子が低く,「死体に対する不安」因子が高かった.「宗教観が低い」学生は目に見えない世界やことについて価値を置かない結果と考えられる.(4)性別と「死と死後の不安」の関係では,女子学生が男子学生に比べてすべての5因子で高い結果を示した.これは歴史的・文化的背景を含んだジェンダーバイアスとも考えられる.男子学生には「死と死後の不安」が少ないことではなく,むしろ男子学生には無意識的に表現が抑圧されているだけに精神的ストレスが大きいことが考えられる.(5)抽出された「死と死後の不安」5因子は,「いのち教育」を展開する際の内容の提示と考えられる.今後「死と死後の不安」5因子を「いのち教育」の授業内容として具体的に展開する研究や実践がなされることが期待される.
著者
乾 敏郎 得丸 定子
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

催眠の認知神経科学的研究をレビューし、催眠研究において暗示の効果が脳活動のどのような側面に現れるのかを整理検討した。さらに、最近の瞑想の認知神経科学的研究をレビューし、瞑想初心者vs.熟練者との比較を通し、静止vs.瞑想状態におけるデフォールトモードネットワーク(DMN)内の機能的結合度、脳各領域における活性化/非活性化、共振性、結合度などを検討した。これらをふまえて、自由エネルギー原理に基づくそれらの脳内メカニズムに関する統一理論を提案した。
著者
得丸 定子 佐藤 英恵 郷堀 ヨゼフ
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.257-268, 2010-02-28

核家族化, 個人化の進んでいる現代では, ペットは単なる飼育動物の域を超え「コンパニオン・アニマル」と呼ばれ, その親密な存在の死に伴う「ペットロス」という用語は, 学校教育現場でも用いられつつある。ペットの死に伴う感情やその死への関わりは, ティーチヤブル・モーメントとして「いのち教育」の好機である。しかし, それらの言葉の背後にある心情やその理解については, 十分に認識されていない現状である。ゆえに, いのち教育の一環としてのペットロスについての基礎的知見を得るために, 本調査を行った。結果として, 心理尺度では"協同努力型人生観""多彩型人生観""信仰型人生観""金銭重視型人生観"の4因子が抽出された。"協同努力型人生観"は最もペットロスに陥りやすく, "金銭重視型人生観"はペット葬に反対であり, 女性の方が男性よりもペットロスに陥りやすい結果が示された。自由記述では, 「ペット葬賛成」派が約6割を占めた。「ペット葬反対」派も回答としては反対ではあるが, その記述を考察すると「賛成」派であった。ペット喪失悲嘆から立ち直った契機としては「時間の経過」が最多であり, 先行研究で見られない記述として, 「ペットについての知識, ペットロスについてあらかじめ勉強しておく, 心の準備をしておく」が得られた。本調査により, 人生観や性別とペットロスとの関係性や, ペット葬の必要性への認識, ペット飼育の知識やペットロスについて事前学習の重要性が示され, 「いのち教育」の一環としてのペットロス学習の意義が得られた。
著者
得丸 定子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2014

<b>【目的】</b>超高齢社会を迎えている現在の日本において、高齢者の持つ経験や知識は貴重な財産であり、それを他世代に受け継いでいく意義は大きい。また、他世代との交流は高齢者にとっても生きがい感を増すと考えられる。しかし、核家族化が進む現在の日常生活では、高齢者と他世代との交流は希薄になっている。このような現状下、子供の高齢者イメージは年齢が上がるにつれてマイナスイメージに傾くという報告がなされているが、小学校児童の高齢者イメージの変化については触れられていない。ゆえに本研究では、高齢者と児童との世代間交流の実態把握、児童の高齢者イメージ変化把握、世代間交流実践の試みより、世代間交流の在り方を探ることを目的とした。 <br><b>【方法】</b>1.世代間交流の実態調査は新潟県J市内国公立48小学校のHPに記載されたグランドデザイン(H25.3現在)と同J市社会福祉協議福祉会のHPに掲載された「社協だより」(2008年~2013年)を分析対象とした。2.児童の高齢者イメージ調査は、J市内小学生77名(男子39名、女子38名)を対象。高齢者イメージは中野(1991)らの研究に基づいたSD法としての評定尺度を改変して使用。尺度は対称性を持つ形容詞ペアを17項目、5段階評価とした。3.世代間交流実践は、放課後児童クラブが設置されていない地区の児童を対象にしたボランティア活動「ねごしの寺子屋」の中で行った。調査統計処理はjs-STARを用いた。<br><b>【結果】</b>対象全小学校のグランドデザインでは「世代間交流」との用語を用いた記述は0校であったため、検索内容を拡大した結果、「高齢者との交流」記述は2校、「地域との交流」は48校であった。しかし、「地域との交流」の対象者は読み取れなかった。一方「社協だより」では「世代間交流」という用語は明確に使用されており、5年間で計32件の世代間交流活動記事が掲載されていた。 高齢者イメージ調査は、項目ごとの全サンプルの標準偏差に有意なばらつきが無く高齢者イメージは個人によって異なるものではないことが分かった。男女差は見られなかった。また、「髪の毛が白いー黒い」「大きい―小さい」の2項目を除き、他の15項目すべて中立点よりもポジティブ側に寄っていることが示された。次に、学年が上がるにつれイメージがネガティブなものへと変わっていくという報告があるため、本対象者を低学年、中学年、高学年にグループ化して分散分析を行った。全てポジティブ側での結果であるが、「うれしそう―かなしそう」「きちんとした―だらしない」「いそがしそう―ひまそう」「たのしそう―つまらなそう」「すなおな―いじっぱりな」の5項目で、様々なケースでのグループ間有意差が表れた。 【考察】「社協だより」では多くの世代間交流の取り組みが紹介されていたが、小学校のグランドデザインでは、世代間交流の用語は皆無であった。推測の域では「地域との交流」の取り組みの中に「世代間交流」が紛れているとも考えられるが、今後「世代間交流」との言葉を前面に出したグランドデザインの掲載が期待される。 高齢者イメージは、学年が上がるにつれてネガティブなものへ変わると予想していたが、今回はその結果は見られなかった。また学年グループ間比較で5項目の有意差が示されたが、一概に高学年になるにつれてポジティブイメージが下がっている結果ではなかった。本調査対象児童の半数以上が高齢者と同居しており、高齢者と日常的に接する機会が多いため、高齢者イメージはポジティブ側に寄った結果が表れたのではないかと考えられる。幼いころから日常的に高齢者と接することの意義の大きさが示された。 世代間交流実践では、児童と高齢者双方の笑顔が印象的であった。 以上のことから、小学校段階だけでなく、大学まで継続的に高齢者と関わることのできる機会を増やすことが大切であり、そのことが超高齢社会を支える重要な教育の1つであると提言できる。
著者
鈴木 智子 得丸 定子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.17, 2006

<br><b>【目的】</b><br> 近年のインスタント食品、加工食品の増加、外食産業の普及等の食生活環境は、現在の中学生の食生活や味覚に影響を及ぼしている。昨年度の第48回本大会では、食行動と味覚の識別能の関連について、味覚の識別能が高い生徒は「栄養バランス性」が高く、味覚の識別能が低い生徒は「ファスト・濃厚味志向性」が高い食行動であること、生徒の食行動には本人の食への関心と共に食事担当者の意識との関係があることを報告した。今回は昨年の調査を基に、食生活や食体験および食への関心について聞き取り調査を行い、生徒の食意識や食行動に影響を及ぼす要因を探り、今後の食教育の在り方について示唆を得ることを目的とした。<BR><b>【方法】</b><br> 新潟県上越市内の大学法人中学校1年生12名(味覚の識別能高群生徒6名、識別能低群生徒6名)を対象に、1,主食・主菜・副菜の摂取について、2,インスタント食品・ファスト食品・惣菜・スナック菓子等の摂取について、3,味について、4,団らんや食を通したコミュニケーションについて、5,食生活への関心について、等の内容について、半構成面接法による調査を実施した。調査は2004年9月におこなった。<BR><b>【結果と考察】</b><br> 生徒の食生活は、母親の手作り中心の食生活を送る生徒と、インスタント食品などを利用する食生活を送る生徒に二分された。味覚の識別能が高い生徒の家庭では手作り中心の食生活を送っている生徒が多く、識別能が低い生徒の食生活は様々であった。また、手作り中心の食生活を送る生徒は、ファスト化された食品よりも手作り料理の味を美味しいと述べているが、インスタント食品などの利用が多い家庭の生徒は、インスタント食品やコンビニ食品の味が美味しいとの回答が多かった。ファスト化された食品の頻繁な利用により、それらの味への好み形成と味覚識別低下をきたしていると推測された。<br> 「天然だしと合成だしの味の違い」や「旬の野菜とそうでない野菜の味の違い」といった食品の味の識別については、味覚の識別能の高低にかかわらず、実際の食体験の有無に左右されていた。意識的な味覚経験の積み重ねが食品の微妙な味の識別力を育てることが示唆され、素材本来の味や多様な味に触れることの重要性が示された。<br> 味覚の識別能が高い生徒は食への関心が高く家庭の食事の手伝いに関わる生徒と、食への関心が低く親任せの食生活を送る生徒に二分された。一方、味覚の識別能が低い生徒は、家庭の食事の手伝いへの関わりが少なく、食への関心が薄かったり、偏ったりといった傾向にあった。このことにより、味覚の識別能の高低には保護者の食意識と生徒自身の食意識・食行動が関連していることが示された。<BR><b>【今後の課題】</b><br> 生活の根幹である食教育は、本来家庭が中心になり行われることが望ましい。しかし、生活状況の多様化は食生活にも影響を及ぼし、保護者が子どもに豊かな食教育を施すことが難しい家庭があることも現実である。したがって学校教育、とりわけ義務教育における食教育の役割は大きいと考える。今後の課題としては、五感を通した食体験学習と、自立的・自覚的食生活を送るために必要な関心を育て、食に対する基礎的な知識、技術、食事観を教育していくための教材開発が挙げられる。
著者
得丸 定子 川島 名美子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第48回日本家庭科教育学会大会
巻号頁・発行日
pp.36, 2005 (Released:2006-01-13)

【目的】ペットロスは正常な適応反応であるが、飼い主が受けるストレスは様々で、情緒的・身体的症状が現れることもある。日本ではペットロスに関する一般の理解はあまり進んでおらず、文献や研究論文等も少ない。ペットロス・ケアに関しても、欧米諸国の知識や方法を直訳的に取り入れている現状である。 そこで本研究では、個人の性格・価値観・ペットの飼育経験等の観点から、ペットへの接し方・ペットロスの諸症状・対処法等について分析し、日本人の感性に合ったペットロス・ケアや学校教育における「いのち教育」の取り組みに資することを目的とした。【方法】本調査『ペットとペットを失うことに関するアンケート』(無記名、自記式)は、2004年4月_から_同年6月に実施した。調査対象は、新潟県・群馬県・千葉県・大阪府から各1大学、合計4大学679名である。調査内容は、「心理尺度に関するもの」82項目を中心に、「属性と信仰している宗教の有無に関するもの」「ペットの飼育経験に関するもの」「ペットの位置づけ・価値観に関するもの」「ペットを失った時の状況と対応に関するもの」の、計116項目と自由記述である。分析は因子分析(主成分分析、バリマックス回転)、分散分析、多重比較、比率の差の検定、KJ法を行った。 【結果・考察】1.因子分析結果心理尺度に関する質問項目について因子分析を行い、8因子を抽出。各因子名は第1因子“抑うつ型”、第2因子“協調・努力型”、第3因子“理解・共感型”、第4因子“自信型”、第5因子“宗教肯定型”、第6因子“情緒型”、第7因子“個性尊重型”、第8因子“内向型”とした。2.因子とペットロスとの検討各因子により、ペットの位置づけ・価値観、ペットロス時の心身の状況、対処法の違いが明らかになり、心理傾向により、具体的なペットロスへの対処法の手がかりが示された。3.「性別」「宗教」「飼育経験」とペット・ペットロスとの検討“性別”では、女性の方が男性よりも情緒的なペットロス反応を示した。ジェンダーバイアス的な価値観や子育てが影響し、感情を認めたり表出したりする段階で男女差が生じているものと考えられる。“信仰心”では、信仰心の高い人はペットロス時に悲嘆が身体症状として表れたり、他に傾聴を求めたり、ペットの安楽死反対論が示された。 “ペットの飼育経験の有無”では、飼育経験がある者の方が、ない者よりもペットを「守るべき存在」、「心の安らぎ」と捉えていた。これらの結果は、ペットの飼育を実際に経験することが、ペットの存在感を認識させることを示している。“ペットの喪失経験の有無”では、ペット喪失経験により「後悔」を覚え、ペットが自分にとって「心の安らぐ大切な存在」であったことに気付き、「守るべき存在」であると認識していることが示された。また、ペットの喪失経験者の方が未経験者よりも代わりのペットを欲している結果が示されたが、「代わりが欲しい」とは、なくしたペットと外見や習性などが同じ代替のものではなく、ペットという存在や、そこから得られる安らぎが欲しいと感じているものと考えられる。 以上の結果は、日常生活で死別経験が乏しくなっている現在の子どもにとって、ペット飼育や死別で経験する出来事、心理体験は「いのち」の重さを実感できる重要な教育内容を持つことを示している。4.自由記述の検討ペットを亡くした時の感情については「悲しみ」や「怒り」などの情緒的反応が回答の約半数を占めた。次に否定的反応が多く、内容は後悔と罪悪感の反応が大部分であった。ペットを亡くした悲しみから立ち直ったきっかけについては「時間の経過」が最も多かった。
著者
得丸 定子 川島 名美子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第49回日本家庭科教育学会大会
巻号頁・発行日
pp.10, 2006 (Released:2007-02-11)

【目的】 近年ペットロスという用語は一般化してきたが、わが国における学術研究論文数は一桁以内でまだ少ない。欧米では1984年から学術論文が発表されているが、ほとんどが米国の学術誌である。ゆえに、本研究では昨年本研究大会で発表した日本の大学生対象の調査項目と同一の調査を米国中西部の大学生を対象に行い、「いのち教育」を実践するための資料を得ることを目的とした。 【方法】 アイオワ大学の共同研究者の多大な援助を得て、調査「Questionnaire Concerning Pet and Pet Loss」を、2004年3月~同年6月にかけて、アイオワ州の3大学、ミズーリ州1大学の合計4大学の学生194名(有効回答率78.4%)対象に実施した。調査内容は「心理尺度に関するもの」82項目を中心に、「属性、信仰する宗教とその有無」「ペットの飼育経験」「ペットの位置づけ・価値観」「ペット喪失時の状況と対応」の計116項目と自由記述である。分析は因子分析(主成分分析、バリマックス回転)、分散分析、多重比較、比率の差の検定、KJ法を行った。 【結果】 1.因子分析結果 心理尺度に関する質問項目について因子分析を行い5因子抽出された。因子名は第1因子”自尊・自信型“、第2因子”努力・前進型“、第3因子”共感・協力型”、第4因子”抑うつ型“、第5因子”宗教肯定型”とした。 2.因子とペットロスの関連性の検討 心理傾向を表す上記5因子を高群と低群にわけ、それらの高低群と「ペットの位置づけ・価値観」「ペットを失った時の状況」「ペットを失ったときの自分自身の対処法」とを多重比較を行い、有差を検討した。その結果、心理傾向とペットの位置づけやペットロスの状況、対処法との関連性が得られ、各人に応じたペットロス対処を行うことへの手がかりが示唆された。詳細な結果は口頭発表で行う。 3.「性別」VS「ペットの位置づけ・価値観、喪失時の状況・対応」 性別では、女性のほうが男性よりもペットを失ったとき「誰かに話を聞いてほしい」「我慢せずに泣けばよい」「普段と変わらず接してほしい」の項目で有意に高い結果を示した。 4.「信仰心」VS「ペットの位置づけ・価値観、喪失時の状況・対応」 調査対象者の約9割が信仰する宗教を明確に持っており、信仰心の低い人のほうが「ペットを飼えなくなった場合、捨ててしまいたい」と答えた人が多く、信仰心の高い人の方が「ペットを失った時、代わりのペットを飼いたい」と答えた人が多かった。 5.「飼育経験」VS「ペットの位置づけ・価値観、喪失時の状況・対応」 本調査ではペット飼育経験者150名、未経験者2名であり、検定が成立しなかった。 6.「ペット喪失経験」VS「ペットの位置づけ・価値観、喪失時の状況・対応」 ペットを亡くした経験のある人のほうがない人よりも「安楽死をさせる」が有意高く、「ペットを亡くした時、新しいペットの飼育を勧めてほしい」は有意に低かった。 7.自由記述 ペットを亡くした時の思いは「悲しみ、驚き、怒り、寂しさ」の情緒的な反応が72%で最も多かった。悲しみから立ち直ったきっかけは「新しいペットを飼った、他のペットを大切にする」が23%で最多であった。 【考察】 心理尺度では日本は8因子、米国は5因子であり、そのままの単純比較はできなく、日米比較の詳細は次発表で行う。米国では信仰を持つ割合や飼育経験が高いこと、ペットロス研究は日本と異なり約20年も前から取り組まれていることがペットロスとその対処との関連性に影響を与えていると考えられる。日米比較は次回行う。
著者
石澤 美代子 得丸 定子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2013

【目的】食育基本法(平成17年)や新小学校学習指導要領解説(平成22年)等において食育の重要性がうたわれている。この現状下、筆者らはその知識習得や日常の食生活への波及効果を期待し「食育すごろくゲーム」を開発し、平成23年1月、小学校6年生家庭科の授業において実践し好評を得た(第54回本大会にて報告)。今回、実施から1年以上経過した時の本教材の影響や印象を調べるため、中学1年生となった対象児童(以降生徒)にアンケートを行ったので、報告する。【方法】調査時期は平成24年3月で、授業実践から1年1ヶ月が経過していた。対象者は、授業実施小学校から全児童が進学する長野県T中学校の1年生72名のうち、他小学校から転入した生徒や授業当日欠席だった生徒を除く、62名(男子29、女子33名)である。調査は、授業実施の記憶やその内容、授業実施後食事について変わったことがあるか等6項目からなる記名式アンケートである。なお、アンケートの配布・回収は生徒の担任が担当し、当時の授業等について全く触れずに行ってもらった。分析は、集計数については独立性の検定を、自由記述についてはテキストマイニングにより行った。【結果】「去年1月に『食育すごろくゲーム』を使った授業を覚えていますか」の問いに、「覚えている」との回答は42名(67.7%)で、男子15名(51.7%)、女子27名(81.8%)であり、女子の方が有意(p<0.05)に多く覚えていた。「強く印象に残っているものは何ですか」の問いには、40名(男子15、女子25名)が記述し、最多ワードは「コマ(食品サンプル)」であった。「今でも覚えている知識は何か」の問いには、36名(男子15、女子21名)が記述し、最多ワードは「特にない」であり、次いで「三色群」であった。「またやるとしたら誰とやりたいか」の問いでは、複数回答で、「友だち」が33名(男子14、女子19名)、次いで「きょうだい」が11名(男子2、女子9名)、以下、祖父3名、祖母3名、母2名等と続いた。「授業をきっかけに食事のことで変わったことがあるか」の問いには、複数回答で、「1日三食食べるようにし欠食しない」が17名(男子6、女子11名)、「今までより料理を手伝うようにした」が16名(男子5、女子11名)、「家族と食事について話すことが増えた」が15名(男子7、女子8名)、「食事のことで注意されることが減った」が14名(男子7、女子7名)、以下「三色の群を気にして食べるようにした」、「今までより栄養や食事のことを気にするようになった」「今までより郷土食に興味がでてきた」「(ツールのひとつである)くりだし六角形に興味が出てきた」であった。【まとめと考察】1年以上経過したが、本教材を使った授業について67.7%の生徒が記憶しており、女子の方が有意に多かった。印象に残っていることは「コマ(食品サンプル)」であった。覚えている知識は「三色群(食品を三つの色の群に分けること)」が多くあったが、「特にない」との記述も多くあり、授業や教材を覚えてはいるが知識として習得されていない可能性が示唆された。また、授業をきっかけに食意識が向上したり、食についての家族との会話や料理手伝い等が増えたとの回答が多く、本教材による食生活への波及効果が示唆された。
著者
得丸 定子 小林 輝紀 平 和章 松岡 律
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.411-419, 2006

「いのち教育」を展開するための基礎的知見を得るために, 大学生を対象に「死の不安に関する多次元的尺度 (MFODS)」を用いて, 「死と死後の不安」についての意識調査を行い, 結果として以下のことが得られた.<br>(1) 因子分析では「死と死後の不安」について5因子抽出された. この因子分析結果は, 因子数や因子の内容共に, MFODSが開発されたアメリカでの調査及び追試の結果とは異なった. 原因としては, 宗教や文化的慣習の相違が挙げられる. この相違は「いのち教育」を実践する場合, 宗教や慣習を考慮した展開が重要であることを示している.<br>(2) 信仰している宗教の有無については, 本調査でも約60%の学生が無宗教と回答していた. 「いのち教育」は宗教や慣習行事と深い関係があり, 実践に際しては宗教や慣習は考慮する必要がある. 日本の場合, 無宗教と信仰心がないこととは別のことであり, 初詣をする, おみくじを引く, お墓参りをするなどの宗教的慣習行動をとっている. このことは「いのち教育」展開の導入として, 意味は大きい.<br>(3) 「宗教観の低い」学生は「死後の自分の世界と肉体に対する不安」因子が低く, 「死体に対する不安」因子が高かった. 「宗教観が低い」学生は目に見えない世界やことについて価値を置かない結果と考えられる.<br>(4) 性別と「死と死後の不安」の関係では, 女子学生が男子学生に比べてすべての5因子で高い結果を示した. これは歴史的・文化的背景を含んだジェンダーバイアスとも考えられる. 男子学生には「死と死後の不安」が少ないことではなく, むしろ男子学生には無意識的に表現が抑圧されているだけに精神的ストレスが大きいことが考えられる.<br>(5) 抽出された「死と死後の不安」5因子は, 「いのち教育」を展開する際の内容の提示と考えられる. 今後「死と死後の不安」5因子を「いのち教育」の授業内容として具体的に展開する研究や実践がなされることが期待される.
著者
ベッカー カール 谷田 憲俊 得丸 定子 岩田 文昭 山崎 浩司
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

目的意識や前向きな姿勢、倫理観などを高める教育を研究した。対象は教室の生徒や学生をはじめ、家庭内の親子、病院の新看護師等を含んだ。方法は、例えば講義やグループワーク、文学作品やアニメ、さらにはイメージトレーニングや瞑想法まで利用した。それらの影響は、主観的感想のみならず、唾液中の活性アミラーゼでも測ってみた。分析は今後も続くが、講演や書籍出版で詳細な成果を還元する計画である。
著者
藤腹 明子 得丸 定子 清水 茂雄 田宮 仁
出版者
飯田女子短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的としては、まず日本的「いのち」教育の必要性と意義、さらにはその教育の在り方について、仏教を基調として論拠をもって明確にすることであった。そのために、日本における「いのち」教育の歴史的な系譜の整理と確認、あるいは欧米のみならずアジア各国の義務教育レベルでの実情を把握し、その上で、幼児、義務、専門、生涯等の各教育段階に即したカリキュラム、テキスト、教材等を、指導時期・場所(媒体)・方法論と併せて作成することを当初の目的とした。研究分担者の田宮や得丸らが粗織した「新潟大・上越教育大 いのちの教育を考える会」で、13年度に「いのち教育実践のための研修講座」を上越教育大で開催し、学校教育現場における「いのち教育」の実態や問題点、教員の抱えているニーズを把握することができた。また、医学や看護学教育に携わる教員、仏教者、ビハーラ僧、患者や一般の方から「いのち教育」に対する期待やニーズ等を知り得たことは、今後の研究に向けての課題や示唆となった。3年間の研究を振り返ってみると、当初の目的をすべて果たすまでには至らなかった。しかし、当初の目的であった、本研究の成果を形にするということでは、上記の公開講座の企画・実施、さらには学校教育における小学生高学年向けの「いのち教育」の教材作成等について、それなりの成果を得たのではないかと考えている。今後は、本研究を通して知り得た「いのち教育」に関する知識・情報・技術・教育方法等を、研究分担者それぞれが、看護教育、学校教育の場において活用していくとともに、今後は、家庭や社会における「いのち教育」のあり方や必要性の検討についても取り組んでいきたいと考えている。