著者
信清 亜希子 西谷 圭二 佐藤 園
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.82, 2009

[目 的-本継続研究の目的と本発表の位置づけ-]<BR> 平成20年に改訂された新学習指導要領では、各種調査結果の分析から「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」の調和的育成による「生きる力」の育成を基本理念としている。この中で家庭科は、特に「豊かな心」「健やかな体」の育成を担う教科として位置づけられ、わが国が抱える教育問題を解決する重要な役割を負っている。ところが、小学校家庭科は第5・6学年にしか課されていない。しかし、家庭科が前述した役割を持つ教科として学校教育に位置づけられている以上、家庭科でしか身に付けられない能力の育成は、全学年の子どもに保障されなければならない。そのためには、系統的に組織した家庭科の学習内容を小学校低学年から教科「家庭」として一貫して学ぶ方が、子どもにとってより意味があると考えられる。この課題解決のためには、昭和31年度版『小学校学習指導要領家庭編』で示された「家庭科が第5学年から課される三つの理由」と「教科成立の4条件」から考えるならば、第一に「家庭科を第5学年からしか学べない理由」を事実に基づいて検討し、小学校低学年からの家庭科学習実践の可能性を理論的・具体的に実証し、第二の課題となる制度・行政的に小学校全学年の教科として「家庭」が位置づけられ、目標・内容が学習指導要領に規定されなければならない。本継続研究は、この問題意識に基づき、第一の課題検討を目的として、平成20年度例会では、米国N.J.州初等家庭科プログラムにみられるカリキュラム構成原理を分析し、小学校低学年からの家庭科学習の論理的可能性を明らかにした。平成21年度大会では、米国初等家庭科プログラムを参考に、わが国の小学校低・中学年で試行する「食育」をテーマとした投げ入れ授業としての家庭科学習指導計画「なぜ、食べるのか?」を、科学的認識の獲得を目的とする「教授書試案」の形式で開発した。本発表では、その試案に基づき、平成21年度2学期に実践した結果を分析し、小学校低学年からの家庭科学習実践の可能性を検討したい。<BR>[方 法-小学校第2・4学年における家庭科授業の実践と分析-]<BR>(1)授業の対象者・実践者・実践年月日;○岡山市立西小学校第2学年(男子19名、女子15名、計34名)・西谷圭二(学級担任)・9月15日5校時 ○吉備中央町立大和小学校第4学年(男子11名、女子4名、計15名)・信清亜希子(学級担任)・9月30日6校時<BR>(2)授業の実施内容;時間の関係で、指導計画「なぜ、食べるのか?」(1.なぜ、食べるのか?・2.何を食べているのか?・3.何を食べるのか?どのように食べるのか?)の「1.なぜ、食べるのか?」を実践した。<BR>(3)授業の分析方法;授業記録(VTR、子どものワークシートの記述)に基づき、「家庭科が第5学年からしか学べない理由」から、1)この学習で子どもはどのような知識を獲得したのか・2)その中で、他教科の基礎的な理解と技能は応用されたのか・3)1)2)には、どのような子どもの発達段階の違いがみられたのか、の視点を設定し、分析を行った。<BR>[結 果-小学校第2・4学年における家庭科授業実践の結果と評価-]<BR> 学習全体を通して、両学年ともに国語(話す・聞く・書く)、第2学年では、算数(三位数の整数を含む減法)・生活科(植物の成長)、第4学年では、体育(保育・毎日の生活と健康)・算数(小数の減法)・理科(植物の成長)を応用して子どもは思考をし、本時のMain Question「なぜ、私たちの体はこれだけ大きくなったのか」「なぜ、私たちは食べるのか」に対する答え(知識)を導出していた。それらの知識は、本時の到達目標であった「空腹を満たすために食べる。」「自分の体を成長させるために食べる。」の他に、「たくさん食べ物を食べたから大きくなった。」「いろいろな食べ物を食べたから大きくなった。」「食べ物の栄養で大きくなった。」「好き嫌いなく食べたから大きくなった。」、「食べないと力(元気)が出ないから食べる。」「食べないと運動や勉強ができないから食べる。」「体を健康にするために食べる。」等に分類され、それらは、第2次「何を食べているのか?」、第3次「何を食べるのか?どのように食べるのか?」で分析的に学習する「食物の種類・量」「私たちが食物を食べる理由-健康保持・活力(活動・運動・勉強)を得る」に繋がる「子どものこれまでの経験から直観的に把握した知識」となっていた。

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