著者
西谷 圭二 信清 亜希子 河田 哲典 佐藤 園
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.50, pp.89, 2007

<B>1.目的</B><BR> 現在、我が国では、偏った栄養素等摂取など食に関する問題が顕著になっており、小学校家庭科にもその解決の一端が期待されている。しかし、第49回大会で発表したように、現在の小学校家庭科の食生活学習には、児童が生涯にわたり健康を保持増進していくために必要な「食事の意義・食品の選択」に関する知識が欠落・不足しているため、それを充足できる新たな小学校家庭科の授業開発が急務であると考えられた。<BR> 授業開発に必要な児童の栄養素等摂取の現状と問題点を明らかにするため、岡山県の小学校第5・6学年の児童135名を対象とした2日間の食事調査、及び、岡山県浅口郡里庄町立里庄東小学校の全校児童280名・東京都八王子市立浅川小学校の第5学年2組の児童38名を対象とした給食調査を、写真記録法により行った。その結果、新たな小学校家庭科の授業には、2006年度例会・第50回大会で発表したように、食事を栄養素等と食品群の両視点から捉え、食品に含まれる栄養素等の種類と量から自分に必要な栄養素等・食品の量を同時に把握する能力を育成できる教育内容の必要性が示唆された。<BR> 上記の条件を達成する教育内容を検討した結果、児童に、自分に必要される栄養素等・食品の量を同時に把握させるためには、食品が栄養学的な特徴から食品群に類別され、各食品群の必要量がサービングポイントで表されるとともに、各食品の概量が理解できる食品群を用いた教育内容を編成することが有効であると考えられた。<BR> 以上から、本発表では、児童が自分に必要な栄養素等と食品の量を同時に把握することのできる授業を開発するため、以下に示す方法で研究を行い、サービングポイントを用いた新規「食品群」を開発することを目的とした。<BR><B>2.方法</B><BR>(1)食品群の選定<BR> 「平成16年国民健康・栄養調査成績」、及び、先の三つの食事調査から明らかにした児童の食品群別摂取の現状と問題点から、新規「食品群」に求められる条件を検討した。その後、現在我が国の小・中・高等学校家庭科で使用されている「三色食品群」・「六つの基礎食品群」・「四つの食品群」、及び、授業構成の基盤とする栄養学習プログラム"Teaching Nutrition by Teams-Games-Tournament"における「四つの食品グループ」に示された食品の類別を基に、新規「食品群」を検討した。最後に、検討した選定条件から新規「食品群」の群数と食品群の食品の例示を決定した。<BR>(2)食品の選定<BR> 岡山大学教育学部附属小学校の平成18年1月12日~平成19年1月31日の学校給食の献立構成表(日数196、献立数951)を分析し、献立に使用された食品の使用頻度を算出した。その後、得られた食品の使用頻度を基に、新規「食品群」に使用する食品を選定した。<BR>(3)サービングポイント・サービングの算出<BR> 現在、中学校家庭科で使用されている『六つの食品群別摂取量のめやす』を基に、新規「食品群」の各食品群における摂取量のめやす(g)を設定した。その後、「食品解説つき新ビジュアル食品成分表[増補版]」に示された食品の概量から新規「食品群」に使用する食品の概量を設定するとともに、各食品群毎のサービングポイントを算出した。最後に、食品群別荷重平均成分表を用いて新規「食品群」と食事摂取基準との比較を行う。<BR><B>3.結果</B><BR> 現在は、各食品群毎のサービングポイントの算出が終了した段階である。今後は、上記「方法」に示した手順で検討を進め、発表時に詳細な結果を報告したい。
著者
信清 亜希子 西谷 圭二 佐藤 園
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.82, 2009

[目 的-本継続研究の目的と本発表の位置づけ-]<BR> 平成20年に改訂された新学習指導要領では、各種調査結果の分析から「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」の調和的育成による「生きる力」の育成を基本理念としている。この中で家庭科は、特に「豊かな心」「健やかな体」の育成を担う教科として位置づけられ、わが国が抱える教育問題を解決する重要な役割を負っている。ところが、小学校家庭科は第5・6学年にしか課されていない。しかし、家庭科が前述した役割を持つ教科として学校教育に位置づけられている以上、家庭科でしか身に付けられない能力の育成は、全学年の子どもに保障されなければならない。そのためには、系統的に組織した家庭科の学習内容を小学校低学年から教科「家庭」として一貫して学ぶ方が、子どもにとってより意味があると考えられる。この課題解決のためには、昭和31年度版『小学校学習指導要領家庭編』で示された「家庭科が第5学年から課される三つの理由」と「教科成立の4条件」から考えるならば、第一に「家庭科を第5学年からしか学べない理由」を事実に基づいて検討し、小学校低学年からの家庭科学習実践の可能性を理論的・具体的に実証し、第二の課題となる制度・行政的に小学校全学年の教科として「家庭」が位置づけられ、目標・内容が学習指導要領に規定されなければならない。本継続研究は、この問題意識に基づき、第一の課題検討を目的として、平成20年度例会では、米国N.J.州初等家庭科プログラムにみられるカリキュラム構成原理を分析し、小学校低学年からの家庭科学習の論理的可能性を明らかにした。平成21年度大会では、米国初等家庭科プログラムを参考に、わが国の小学校低・中学年で試行する「食育」をテーマとした投げ入れ授業としての家庭科学習指導計画「なぜ、食べるのか?」を、科学的認識の獲得を目的とする「教授書試案」の形式で開発した。本発表では、その試案に基づき、平成21年度2学期に実践した結果を分析し、小学校低学年からの家庭科学習実践の可能性を検討したい。<BR>[方 法-小学校第2・4学年における家庭科授業の実践と分析-]<BR>(1)授業の対象者・実践者・実践年月日;○岡山市立西小学校第2学年(男子19名、女子15名、計34名)・西谷圭二(学級担任)・9月15日5校時 ○吉備中央町立大和小学校第4学年(男子11名、女子4名、計15名)・信清亜希子(学級担任)・9月30日6校時<BR>(2)授業の実施内容;時間の関係で、指導計画「なぜ、食べるのか?」(1.なぜ、食べるのか?・2.何を食べているのか?・3.何を食べるのか?どのように食べるのか?)の「1.なぜ、食べるのか?」を実践した。<BR>(3)授業の分析方法;授業記録(VTR、子どものワークシートの記述)に基づき、「家庭科が第5学年からしか学べない理由」から、1)この学習で子どもはどのような知識を獲得したのか・2)その中で、他教科の基礎的な理解と技能は応用されたのか・3)1)2)には、どのような子どもの発達段階の違いがみられたのか、の視点を設定し、分析を行った。<BR>[結 果-小学校第2・4学年における家庭科授業実践の結果と評価-]<BR> 学習全体を通して、両学年ともに国語(話す・聞く・書く)、第2学年では、算数(三位数の整数を含む減法)・生活科(植物の成長)、第4学年では、体育(保育・毎日の生活と健康)・算数(小数の減法)・理科(植物の成長)を応用して子どもは思考をし、本時のMain Question「なぜ、私たちの体はこれだけ大きくなったのか」「なぜ、私たちは食べるのか」に対する答え(知識)を導出していた。それらの知識は、本時の到達目標であった「空腹を満たすために食べる。」「自分の体を成長させるために食べる。」の他に、「たくさん食べ物を食べたから大きくなった。」「いろいろな食べ物を食べたから大きくなった。」「食べ物の栄養で大きくなった。」「好き嫌いなく食べたから大きくなった。」、「食べないと力(元気)が出ないから食べる。」「食べないと運動や勉強ができないから食べる。」「体を健康にするために食べる。」等に分類され、それらは、第2次「何を食べているのか?」、第3次「何を食べるのか?どのように食べるのか?」で分析的に学習する「食物の種類・量」「私たちが食物を食べる理由-健康保持・活力(活動・運動・勉強)を得る」に繋がる「子どものこれまでの経験から直観的に把握した知識」となっていた。