著者
加藤 浩子 池崎 喜美恵
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.41, 2009

<B><目的></B> 環境教育は、これからの持続可能な社会の形成において、重要な役割を担うものである。特に、ゴミ問題は私たちにとって日常的な問題であり、見過ごすことはできない。環境教育について研究している中で、環境先進国であるドイツの環境問題への取り組みと日本の取り組みの違いに関心を持った。ゴミの分別について言えば、ドイツは国で環境対策をしており、どこの地域に行っても分別方法は国で決められているので一定である。 このようなドイツに暮らす日本の子どもたちは、日本に暮らす子どもたちよりも環境意識が高いのではないのかと考え、日頃、環境問題についてどのように考えているのか、どのように行動しているのか調査することにした。日本もゴミの有料化やゴミの分別、レジ袋の有料化などの環境への取り組みは進んできているが、日本より以前に、環境対策に取り組んでいるドイツの環境教育には学ぶべきものが多いと言える。本報告では、ドイツと日本に暮らす子どもたちの環境に対する意識や実態を比較検討し、今後の家庭科における環境教育への示唆を得ることを目的とした。<BR><B><方法></B> 2008年11月から2009年1月にドイツの日本人学校4校(A校、B校、C校、D校)の小学部、2009年2月に東京都の公立M小学校にアンケート調査を行った。対象は家庭科を学習している5、6年生の児童である。ドイツの日本人学校では199名、M小学校では181名の回答を得ることができた。アンケート項目の中で、ゴミの分別方法や分別理由等の項目を環境認識度得点、ドイツでの日常生活の満足度に関する項目を生活満足度得点として計算し、得点の平均点から上位群、下位群に分けて比較検討を行った。<BR><B><結果および考察></B>・ドイツの滞在年数が1年未満の児童は46名、1~3年未満は59名、3~5年未満は58名、5年以上は36名であった。・環境認識度得点の上位群の割合は、日本人学校が6割、M小学校が5割であり、日本人学校の児童の方が高かったが、顕著な差はみられなかった。・日本人学校4校それぞれの環境認識度得点を見ていくと、上位群の割合は、B校が4割、他の3校は6割とB校がやや低い結果となった。生活満足度得点に関してもB校が他の3校よりもやや低い結果となったが、4校とも高い得点結果となった。・ドイツでの滞在期間が長い児童やドイツ語能力が高い児童など、ドイツの生活に同化していると考えられる児童は環境意識がやや高い傾向にあった。・「家庭科が好きか」という問いで、日本人学校では男子7割、女子9割、M小学校では男子6割、女子7割の児童が「好き」と回答した。学年ごとでは、日本人学校の5年生9割、6年生 7割、M小学校の5年生 7割、6年生 6割が「好き」と回答した。・日本人学校の児童もM小学校の児童も、環境意識が高い児童ほど家庭科に対するイメージは肯定的である傾向が見られた。・日本人学校もM小学校も、家族で環境について話す機会がある児童ほど、環境認識度得点が高い傾向が見られた。・顕著な差はみられなかったが、環境先進国であるドイツに暮らす子どもたちの方が、日本に暮らす子どもたちよりも環境意識が高いという結果から、今日の我が国における環境問題解決のためには、環境教育をより充実させる必要性があると言える。

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