著者
池崎 喜美恵
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.46, pp.21, 2003

<b>目的 </b>本研究では、日本人学校の家庭科教育の現状を明らかにするために、家庭科を指導する教師の属性や教師がどのような教育意識をもって児童・生徒を指導しているかを明らかにした。そして1996年の調査結果と比較し、日本人学校の家庭科教育がどのように変容してきたかを検討することを意図した。 <br> <b>方法 </b>2002年11月に世界の国々に点在する88校の日本人学校の学校長と家庭科担当教師宛に「日本人学校における家庭科の教育環境に関する調査」を依頼した。そして、2003年2月までに67校から回答が得られた。回収率は76.1%であった。 調査の概要は、家庭科の指導者、家庭科の指導法、家庭科教育に対する問題点や要望の観点から調査項目を設定した。<br><b>結果および考察</b>? 家庭科指導者は専任1名のみが59.5%、非常勤1名が17.5%であった。小学部と中学部で同一教師が指導する場合もあった。年齢構成は30歳代、40歳代とも各49名(38.9%)であった。大学時代の専門は、国語や音楽、美術を専攻した教師が家庭科を指導しているケースが多く、家庭科やその関連科目を専攻した教師は僅少で、免許外の教師による指導が現状であった。派遣教師と現地採用教師の比率は半々であった。 日本人学校での家庭科指導経験が2年以下が約5割を占めており、10年以上の家庭科指導経験をもつ教師が約2割いた。前回調査と比較して、教師の属性には大きな変化はなかった。<br>? 家庭科の指導方法では、4~5の手段を取り入れて指導していた。実習や講義の他、家庭での実践、現地にあった内容の導入、英語によるイマージョンの授業、幼稚部での保育実習なと多様な指導法を駆使していた。調理実習教材では現地の特産品を使用した実習や現地料理を扱っていた。教師の年齢や経験年数、採用方法により指導に特色がみられた。前回調査と比較すると、概ね現状の方が多様な指導法を活用していた。また81.0%の教師が教科書を使用しており、前回調査より教科書を使用して指導している教師が多くなった。<br>?教師全体の83.9%が、「とても・少し関心がある」と児童・生徒の家庭科に対する関心を高く評価していた。授業態度については、全体の83.3%が「とても・少し積極的である」と回答していた。前回調査ではそれぞれ83.3% 75.0%であり、児童・生徒に対する評価が若干上がっていた。<br>? 家庭科指導上の問題や悩みとして、「指導者の専門性(49.2%)」「教科書にそってすすめるとギャップがでる(46.6%)」「被服製作のための施設・設備の不足(46.4%)「調理のための施設・設備の不足(36.4%)」「教材が揃わない(33.9%)」が上位にあげられた。男性教師の半数以上が「指導者の専門性」を、女性教師の半数が「被服の施設・設備の不足」、47.6%が「指導者の専門性」をあげていた。その他、小規模校におけるカリキュラムの構成や教師の交替など、切実な問題が指摘された。年齢や経験年数・採用方法などにより問題点に特色がみられた。 <br>? 家庭科の授業の中で現地理解教育の観点から、学校の現地スタッフの協力や現地の人々との交流により、海外生活への理解を深める活動を推進していた。例えば、ローカルフードを利用した料理、調理用具の使い方、生活習慣や住まいの違いなどにふれ、エスノセントリズムの払拭に心掛けていた。<br>? 日本人学校の設置国によって違いはあるが、家庭科指導上の問題点として、多くの学校では教材入手の困難性授業時間の不足、視聴覚教材の不備、家庭科の専門教師の配置をあげていた。概ね、家庭科の教科書に準じた指導が行われているが、特に製作教材の準備の難しさや疑問が出された。<br>? 授業時数の確保や海外生活の利点を活かした授業実践を構想していく必要がある。また、日本人学校の家庭科教育の実態や指導方法などの情報交換を密にすることが要請される。
著者
加藤 浩子 池崎 喜美恵
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.41, 2009

<B><目的></B> 環境教育は、これからの持続可能な社会の形成において、重要な役割を担うものである。特に、ゴミ問題は私たちにとって日常的な問題であり、見過ごすことはできない。環境教育について研究している中で、環境先進国であるドイツの環境問題への取り組みと日本の取り組みの違いに関心を持った。ゴミの分別について言えば、ドイツは国で環境対策をしており、どこの地域に行っても分別方法は国で決められているので一定である。 このようなドイツに暮らす日本の子どもたちは、日本に暮らす子どもたちよりも環境意識が高いのではないのかと考え、日頃、環境問題についてどのように考えているのか、どのように行動しているのか調査することにした。日本もゴミの有料化やゴミの分別、レジ袋の有料化などの環境への取り組みは進んできているが、日本より以前に、環境対策に取り組んでいるドイツの環境教育には学ぶべきものが多いと言える。本報告では、ドイツと日本に暮らす子どもたちの環境に対する意識や実態を比較検討し、今後の家庭科における環境教育への示唆を得ることを目的とした。<BR><B><方法></B> 2008年11月から2009年1月にドイツの日本人学校4校(A校、B校、C校、D校)の小学部、2009年2月に東京都の公立M小学校にアンケート調査を行った。対象は家庭科を学習している5、6年生の児童である。ドイツの日本人学校では199名、M小学校では181名の回答を得ることができた。アンケート項目の中で、ゴミの分別方法や分別理由等の項目を環境認識度得点、ドイツでの日常生活の満足度に関する項目を生活満足度得点として計算し、得点の平均点から上位群、下位群に分けて比較検討を行った。<BR><B><結果および考察></B>・ドイツの滞在年数が1年未満の児童は46名、1~3年未満は59名、3~5年未満は58名、5年以上は36名であった。・環境認識度得点の上位群の割合は、日本人学校が6割、M小学校が5割であり、日本人学校の児童の方が高かったが、顕著な差はみられなかった。・日本人学校4校それぞれの環境認識度得点を見ていくと、上位群の割合は、B校が4割、他の3校は6割とB校がやや低い結果となった。生活満足度得点に関してもB校が他の3校よりもやや低い結果となったが、4校とも高い得点結果となった。・ドイツでの滞在期間が長い児童やドイツ語能力が高い児童など、ドイツの生活に同化していると考えられる児童は環境意識がやや高い傾向にあった。・「家庭科が好きか」という問いで、日本人学校では男子7割、女子9割、M小学校では男子6割、女子7割の児童が「好き」と回答した。学年ごとでは、日本人学校の5年生9割、6年生 7割、M小学校の5年生 7割、6年生 6割が「好き」と回答した。・日本人学校の児童もM小学校の児童も、環境意識が高い児童ほど家庭科に対するイメージは肯定的である傾向が見られた。・日本人学校もM小学校も、家族で環境について話す機会がある児童ほど、環境認識度得点が高い傾向が見られた。・顕著な差はみられなかったが、環境先進国であるドイツに暮らす子どもたちの方が、日本に暮らす子どもたちよりも環境意識が高いという結果から、今日の我が国における環境問題解決のためには、環境教育をより充実させる必要性があると言える。
著者
池崎 八生 池崎 喜美恵
出版者
大分大学
雑誌
大分大学教育福祉科学部研究紀要 (ISSN:13450875)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.151-165, 2004-04

台北、台中、高雄日本人学校における技術・家庭科関連施設や授業観察などを行い、技術・家庭科教育の実態を明らかにした。また,日本人学校の生徒を対象に技術・家庭科学習および技術・家庭科観、情報機器に関する知識や経験についてアンケート調査を実施した。その結果、次のような知見を得たので報告する。技術・家庭科を男女がともに学習すべきで、日常生活に役立ち、生活に必要な技術を学習する教科としてとらえていた。技術学習では、パソコン使用や木材加工の楽しさを、家庭科学習では調理実習の楽しさを中学部の生徒が回答していた。技術・家庭科学習の必要性を児童・生徒は十分認識しているので、興味・関心を引き出す指導を工夫することが必要である。また、パソコンやインターネットに対して、男女ともに関心が高い現状が明らかになった。したがって、各教科での活用方法を工夫し、IT時代における情報機器の更なる活用を検討すべきである。