著者
中屋 紀子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.34, 2009

(研究目的)教員養成大学において、教育実習と連動した指導が最近特に求められるようになった。大学に入学したばかりの1年生から、実際の家庭科の授業を観察する機会を作り、それを生かした大学での講義作りが求められている。ただ授業観察するだけでは話にならず、せっかくの観察機会を生かすためには明確な「視点」が必要である。しかし、学生たちに授業を観る「視点」をつけることはそれほど簡単ではない。(研究方法および経過)そこで、本報告は「観察」することを重点においた指導を試みた。それをもとにした考察を行う。1.宮城教育大学附属小学校の校内研究授業を3台のビデオ記録したものを編集し、1本のテープとした。授業は2008年6月30日、5年2組、齋藤憲子教諭によって行われた。テーマは「家族と生活」である。2.その映像をCDに焼き付け、資料とした。3.同時に、ストップモーション方式で活字記録化した。ストップモーション方式について補足をすると、以下である。「教師(T)-子ども(C)」の記録に教師や子どもの非言語的な行動についても加えて記述する。その点は「T-C型+ト書き」形といえる。さらに、子どもの非言語的な行動や非言語的なニュアンスも加えた文章を加える。「地の文+発言」である。またさらに、「一時停止」を利用して若干の補足や解説を加える。(藤川「授業記録を書く」『授業分析の基礎技術』(二杉・藤川・上條 編著 学事出版 2002)4.家庭科教育実践研究という授業観察が必須である講義で、受講生各自にCDと活字記録のコピーを配布した。5.CDを再生しながら、活字記録の余白に受講生の「ストップモーション」を挿入させた。6.記入が終わったら、活字記録のファイルを配布し、それに記入させた。7.それを集めて、検討資料とした。受講生各自がどこで、どんなストップモーションを入れたかが分かるように色分けをした資料とした。どんなところにストップモーションを入れるか(視点を明確にする)は、この取り組みの前にレクチュアをした。8.最後に授業者からのコメントを入れて、受講者に返却した。(検討結果)1.受講生たちは教師の教授行為の積極的な側面をしっかり評価することができた。たとえばある受講生は「おへそをこちらへ向けてください」という指示はわかりやすくて子供たちも素直に聞ける指示であると感じた。」と、記していた。2.同時に、教師の教授行為の課題も見つけることができた。たとえば、「発言しない子どもも授業に参加しやすいように、「同じ意見の人は?」というような問いがあると、より多くの子どもが授業に参加できると思う。」と、自らの意見も同時に述べることができている。3.同様のことが教材についても言えた。評価した点として例をあげると「児童が食いつきやすい内容の絵の提示はとても良かった。実際の生活の中で考えられる場面であるのも良い。」と、絵を用いて問題を追及する方法の積極面をあげた。他方、採用したビデオレターについて「ビデオレターというアイディアは良いと思う。しかし、なぜ先生なのかわからなかった。今まで自分自身や家族からの視点で成長をしたことをまとめてきたのなら、親など身近な家族のほうが題材にあっていると思う。」と、ビデオレターに登場した高学年担当の教師について厳しい意見も出せた。同じところにストップモーションをしながら、異なった意見も多々あり、意見分布の多様性も興味深かった。4.いくつか、今後解決したい課題が残った。例をあげる。「授業という場面で、「発表」することができる「力」とは、どんな力でしょうか?それを考えて普通、教師は発問をします。答えやすい問いを投げかけて、たくさんの児童から引き出したいときと、わかる児童が少なくても、答えを引き出したいときの二つに分かれます。それぞれ、教師は何を考えるのでしょうか?」などである。

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