著者
渡辺 護
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.47, 2006

中部山岳国立公園に隣接する岐阜県飛騨市の山之村地域で2003年からアブの捕獲調査を行っている。昨年は富山県側の飛越高原も含めて2003-4年の成績を報告したが、今回は岐阜県側で2005年に新たに加えた調査地点の成績を含め、いままでの成績をまとめて報告する。<BR>岐阜県飛騨市山之村地域は標高850-1200mの山地農村地域で、ホウレンソウと牛(飛騨牛)の生産が盛んで、稲作も行われている。また、山間盆地のため地域内には小渓流が多数あり、その源流地域には湿地帯が発達し、水芭蕉などが繁茂している。ニホンカモシカが多く、ツキノワグマとイノシシも生息する。<BR>調査は固定設置型の飛翔捕捉マレイズトラップとボックストラップおよび調査の都度設置する二酸化炭素誘引(ドライアイス使用)のキャノピィトラップと蚊帳トラップを併用して行った。2005年には2004年に開設された乗馬クラブの厩舎への侵入アブの調査も加え、4月下旬から10月上旬まで7-8月はほぼ毎週、他の月は隔週の土曜もしくは日曜日に、捕獲調査(キャノピィと蚊帳トラップ)および誘引アブの回収(マレイズとボックストラップ)を行った。<BR>全般的に吸血性のニッポンシロフアブが多数を占めたが、無吸血性のイヨシロオビアブが近似種の吸血性アオコアブと混生し、多数捕獲される地点もみられた。さらに、吸血性大型種のアカウシアブ、ニセアカウシアブ、アカアブ、カトウアカアブ、ウシアブが多数捕獲された。2005年に調査を開始した厩舎侵入アブもニッポンシロフアブが64%(4,633/7,252)を占めたが、アカウシアブ12%など、大型アブも14.5%を占めた。これらの種構成は隣接する富山での今までの成績とは大きく異なり、その原因の多くは吸血源動物が長期間確保されていたためと考えられ、加えて幼虫の生息に適した様々な環境の存在が示唆される。

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