- 著者
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伊藤 良子
- 出版者
- 九州理学療法士・作業療法士合同学会
- 雑誌
- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
- 巻号頁・発行日
- vol.2008, pp.20, 2008
【はじめに】<BR> 当院の療養病棟では『できるADL』と『しているADL』に差を認めた。そのため、2007年度よりADLカンファレンス(以下、ADLcf.)を導入し、セラピストと病棟スタッフとの間で患者様の情報共有を深める試みを行った。今回、ADLcf.により病棟と取り組んだ症例を通して連携を図るための課題が見えたので報告する。<BR>【活動内容】<BR> 療養2病棟と障害者病棟の合わせて3病棟に対してそれぞれ週1回各担当セラピストと各病棟スタッフ(最低1名)にて情報交換やセラピストの評価を基に検討や伝達を行う。病棟スタッフはADLcf.での情報を共有するために資料作成を行い病棟内へ伝達する。ADLcf.の対象患者様としてリハ介入者、非介入者に分けられ、介入者に対しては主にセラピストから提示し『しているADL』へつなげるために病棟スタッフへ伝達していく。非介入者に対しては病棟からの『しているADL』の課題について依頼があり、セラピストが評価し、より良い介助方法を検討・伝達し、次の週に再評価していく。<BR>【症例紹介および経過】<BR>症例1:70歳代、女性、リハ介入有、A2レベル。四肢熱傷。手指熱傷(III度)により可動域制限を認め、食事以外のADLに支障を来す。また、症例は依存的で病棟スタッフの介助を求められるため、過介助の状態であり『できるADL』と『しているADL』に解離を認めた。そのため、セラピスト側から『できるADL』を提示し情報交換を行った。また、杖歩行へ移行期のため介助ポイントの伝達を実施した。再評価にて杖歩行が定着し、ADLの介助量が減ったとの意見が得られた。<BR>症例2:70歳代、男性、リハ介入無、Cレベル。右被殼出血後遺症、陳旧性左被殻出血。筋緊張が高く、安楽な臥位・坐位がとれず、ベッド上やリクライニング車椅子でのずり落ちが目立ち、ポジショニングが困難な状態であった。そのため、セラピストが評価し、臥位での筋緊張の緩め方、ベッドや車椅子坐位のポジショニングの検討・伝達を実施した。方法をセラピストが提示し、写真を用いて病棟スタッフ間の伝達を実施したが、身体機能の把握が困難であり定着しなかった。そのため、再度伝達ポイントを絞り、実技を交えながら伝達を行ったことで身体機能の把握ができるようになった。<BR>【まとめ】<BR> 『できるADL』を提示することによりセラピストと病棟スタッフとの間で患者様の情報共有が深められ、対象患者様の『できるADL』と『しているADL』の差を以前より埋めることが可能となった。今後ADLcf.をより有意義なものにするために、セラピストはリハ非介入者に対して即時に評価・伝達を行う能力を高め、病棟はスタッフ間での伝達を積極的に行っていき、介助方法の浸透を進めていくことが課題となる。これらの課題を考慮し更に病棟との連携を深め、より良い介助方法の提供に努めたい。