著者
伊藤 良子
出版者
京都市立看護短期大学
雑誌
京都市立看護短期大学紀要 (ISSN:02861097)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.1-12, 2013-02-01

リズミカルアインライブング(独語:Rhythmishe Einreibung)は1900 年代初頭にスイス・ドイツを中心に発展したアントロポゾフィ-(シュタイナ-)医学・看護のケア技術の一つで「アロマオイルや軟膏を定型フォルムに添ってリズミカルにケアリングタッチで皮膚に塗擦するケア」である.ここではその歴史,理論的背景,手技の特徴,効果・適応,EBM,今後の可能性について概観した.アントロポゾフィ-(シュタイナ-)医学・看護は理論背景にルドルフ・シュタイナ-が提唱した世界観であるアントロポゾフィ-(邦訳:人智学)を持ち,西洋医学に基礎を置いた代替・補完療法として世界的に認知されている全人的医療モデルである.リズミカルアインライブングは「タッチの質,そこに存在していること,リズム,オイル,技術」についての5 つの特徴を持っている.その効果には熱生成促進,疼痛緩和,緊張・痙攣緩和,呼吸調整,血液・リンパ循環改善,可動性促進,消化活性化,組織栄養状態改善,創傷治癒促進,片頭痛緩和,覚醒- 睡眠の調整,健康感上昇,身体に関する明確な感覚,弛緩と沈静,信頼感・安心感の形成,意識の明瞭化・決断力強化・集中力強化などがある.加えてリズミカルアインライブングは「共に癒されるケア」「看護の質を耕すケア」「孤独を癒し愛を伝えるケア」としての可能性を持つケア技術でもある.
著者
伊藤 良子
出版者
京都市立看護短期大学
雑誌
京都市立看護短期大学紀要 (ISSN:02861097)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.37-47, 2011-07
被引用文献数
1

両下肢・末梢方向リズミカル アインライブングを施行した時の心理・主観・自律神経系の反応について明らかにすることを目的に実験研究を行い,成人女性19 名を対象に 10 分間のクレぺリンテストでのストレス負荷後,介入群には下肢アインライブングを,対照群には安静保持を各10 分間施行後,16 分間の安静を保持した.両実験をクロスオーバーランダム化比較試験として行い,測定指標にPOMS・フェイススケール・RE 尺度・心拍変動スペクトル解析・表面皮膚温を用いた.介入群と対照群との2 群間比較では,POMS の介入群で介入後の〈混乱〉に有意の減少が見られた.心拍変動スペクトル解析では介入群でHF 値(副交感神経活動指標)が,介入中の2 〜 10 分と介入後の0 〜 4分の連続した12 分間で有意(p < .05)に増加した.以上から下肢アインライブングによる副交感神経系活動の活性化と,心理・主観的緊張緩和効果が確認され,下肢アインライブングのリラックスケア活用への可能性が示唆された.
著者
中野 雅子 伊藤 良子
出版者
京都市立看護短期大学
雑誌
京都市立看護短期大学紀要 (ISSN:02861097)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.115-122, 2010-05-31

本研究は,老年看護学臨地実習前の看護学生について,1)在宅療養における介護家族のジレンマについてどのように捉えているか 2)どのような学習課題があるかを明らかにすることを目的とした.学生は「在宅療養における介護家族のジレンマ」を授業で学習するが,複数の文献を用いた自己学習課題として,「『家族介護者のジレンマ』を学び考えたこと」と題するレポートを提出した.その記述内容を研究目的に沿って質的帰納的に内容分析した.看護学生は,社会の高齢化と,進行し続け多数を占めるようになった核家族化が,高齢者への介護問題に多くの深刻な課題を生じていると理解し,看護者には信頼関係を結び,社会資源を提供する責任があると学んでいた. 今後はさらに看護提供者の立場で,介護家族のジレンマに関するこれらの知見を,看護実践の中で活かして検討していくことが課題として求められていると考える.
著者
伊藤 良子
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.20, 2008

【はじめに】<BR> 当院の療養病棟では『できるADL』と『しているADL』に差を認めた。そのため、2007年度よりADLカンファレンス(以下、ADLcf.)を導入し、セラピストと病棟スタッフとの間で患者様の情報共有を深める試みを行った。今回、ADLcf.により病棟と取り組んだ症例を通して連携を図るための課題が見えたので報告する。<BR>【活動内容】<BR> 療養2病棟と障害者病棟の合わせて3病棟に対してそれぞれ週1回各担当セラピストと各病棟スタッフ(最低1名)にて情報交換やセラピストの評価を基に検討や伝達を行う。病棟スタッフはADLcf.での情報を共有するために資料作成を行い病棟内へ伝達する。ADLcf.の対象患者様としてリハ介入者、非介入者に分けられ、介入者に対しては主にセラピストから提示し『しているADL』へつなげるために病棟スタッフへ伝達していく。非介入者に対しては病棟からの『しているADL』の課題について依頼があり、セラピストが評価し、より良い介助方法を検討・伝達し、次の週に再評価していく。<BR>【症例紹介および経過】<BR>症例1:70歳代、女性、リハ介入有、A2レベル。四肢熱傷。手指熱傷(III度)により可動域制限を認め、食事以外のADLに支障を来す。また、症例は依存的で病棟スタッフの介助を求められるため、過介助の状態であり『できるADL』と『しているADL』に解離を認めた。そのため、セラピスト側から『できるADL』を提示し情報交換を行った。また、杖歩行へ移行期のため介助ポイントの伝達を実施した。再評価にて杖歩行が定着し、ADLの介助量が減ったとの意見が得られた。<BR>症例2:70歳代、男性、リハ介入無、Cレベル。右被殼出血後遺症、陳旧性左被殻出血。筋緊張が高く、安楽な臥位・坐位がとれず、ベッド上やリクライニング車椅子でのずり落ちが目立ち、ポジショニングが困難な状態であった。そのため、セラピストが評価し、臥位での筋緊張の緩め方、ベッドや車椅子坐位のポジショニングの検討・伝達を実施した。方法をセラピストが提示し、写真を用いて病棟スタッフ間の伝達を実施したが、身体機能の把握が困難であり定着しなかった。そのため、再度伝達ポイントを絞り、実技を交えながら伝達を行ったことで身体機能の把握ができるようになった。<BR>【まとめ】<BR> 『できるADL』を提示することによりセラピストと病棟スタッフとの間で患者様の情報共有が深められ、対象患者様の『できるADL』と『しているADL』の差を以前より埋めることが可能となった。今後ADLcf.をより有意義なものにするために、セラピストはリハ非介入者に対して即時に評価・伝達を行う能力を高め、病棟はスタッフ間での伝達を積極的に行っていき、介助方法の浸透を進めていくことが課題となる。これらの課題を考慮し更に病棟との連携を深め、より良い介助方法の提供に努めたい。
著者
星野 顕宏 阿部 祥英 冨家 俊弥 校條 愛子 中村 俊紀 齋藤 多賀子 酒井 菜穂 伊藤 良子 神谷 太郎 北林 耐 板橋 家頭夫
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.217-224, 2010 (Released:2010-10-07)
参考文献数
24

気管支喘息呼吸不全の児に対して硫酸マグネシウム(MgSO4)を点滴静注し,気管挿管を回避しえた女児例を経験した.本症例は2歳11ヵ月時に喘鳴と呼吸困難を認め,気管支喘息呼吸不全の診断で入院した.ステロイド薬静注,アミノフィリン持続点滴,イソプロテレノール持続吸入による治療を行ったが,呼吸状態は改善せず,不穏と高二酸化炭素血症認めた.気管挿管を考慮したが侵襲性が高いため,50mg/kgのMgSO4を20分かけて点滴静注した.速やかに不穏の軽快と呼吸状態の改善が得られ,投与開始1時間後に二酸化炭素分圧,心拍数,呼吸数はそれぞれ54.9mmHgから46.5 mmHg,157回/分から126回/分,48回/分から40回/分に低下した.MgSO4の有害事象は認めなかった.MgSO4は気管支平滑筋細胞からのカルシウムの駆出を増加させ,平滑筋の収縮を抑制させると考えられている.MgSO4は即効性のある薬剤として有効である可能性があり,特に治療抵抗性で気管挿管を考慮する症例にそれを回避する目的で投与する価値があると考える.
著者
伊藤 良子
出版者
京都市立看護短期大学
雑誌
京都市立看護短期大学紀要 (ISSN:02861097)
巻号頁・発行日
no.34, pp.83-89, 2009

新生児期実習での看護学生の沐浴実施学習での体験の内容を分析することを目的に,A 看護短期大学3 回生16 名の自由記述式課題の内容を,KJ 法を用いて質的帰納的に分析した.その結果,沐浴実施実習については《不安》《支え》《学びと達成感》の3 カテゴリーが抽出され,不安と緊張の中で沐浴実施を行い,児の気持ち良さそうな様子やナースの助言に支えられて沐浴実施を全うし,達成感と学びを得ているという学生の学びのプロセスが明らかになった.ここから沐浴実施実習においては,学生の緊張や不安が高いこと,ナースの助言と,児に気持ちの良い事ができているという点に,学生の意識を向かわせるような教育的配慮が重要なこと,それによって学生が高い達成感を得られることが示唆された
著者
伊藤 良子 磯邉 厚子 植村 小夜子
出版者
京都市立看護短期大学
雑誌
京都市立看護短期大学紀要 (ISSN:02861097)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.89-100, 2013-02-01

近年の日本での「低出生体重児」と「死産」に関する研究の動向とそのEBM を明らかにすることを目的に文献検討を行った.日本国内での過去全年(1982 以前〜現在)の文献を対象として,医中誌Web で「低出生体重児」「死産」に影響する要因についての文献検索を行い,さらにそれらの内容を検討し研究動向を明らかにした.その結果文献13 件が分析対象となり,分析疫学的研究から有意の関連性が導き出されている19 件の項目と62 件の因子を抽出し整理した.特に「児の出生時体重の増加」との正の関係では,母親の非妊娠時BMI・母親の非妊娠時BMI18.67 以下・母親の非妊娠時体重増加・母親の1 週間実質体重増加量の増加・喫煙する母親の妊娠前BMI の増加・分娩週数の増加・母親の妊娠中体重増加量の増加・母親の年齢の増加・母親の年齢34 才以上・初産婦・血清抗体LA 陽性を抽出した.また「児の出生時体重の増加」との負の関係では,妊娠初期の喫煙・父母の習慣的喫煙・喫煙する母親の習慣的喫煙・父母の習慣的飲酒・早産・在胎週数37 〜 39 週・胎児数増加・身長150 cm以下・20 歳以下・母親への夫婦間暴力(監視・性行為強要)有りを抽出した.また,流死産と有意の正の関連がある因子としては,「母親の習慣的喫煙あり」が抽出された.なお「低出生体重」は,世界的に多くの研究で「児の成長後の様々な疾病」のリスク因子であることが示されており,日本の現在および長期的な保健政策の上でも重要課題である.
著者
伊藤 良子
出版者
京都市立看護短期大学
雑誌
京都市立看護短期大学紀要 (ISSN:02861097)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.25-34, 2013-02-01

両下肢末梢方向リズミカルアインライブングを施行した時の心理・主観・自律神経系の反応を明らかにすることを目的に健康成人女性14 名を対象にクロスオーバーランダム化比較試験を行った.10分間のストレス負荷後,実験群には下肢アインライブング,対照群には安静保持を各10 分間施行し,その後16 分間の安静保持を行った.測定指標はフェイススケール・RE 尺度・VAS 法・SD 法・POMS・心拍変動スペクトル解析・表面皮膚温とした.実験群と対照群との介入後の2 群間比較では実験群でのフェイススケール・VAS 法・SD 法で有意(p < .05)のリラックス感覚の増加,HF 値(副交感神経活動指標)の介入中の6 分間と介入後の2 分間での有意(p < .05)の増加, 心拍数の介入中の10 分間での有意(p < .05)の減少を認めた.以上から下肢アインライブングによる主観的緊張緩和効果と副交感神経系活動の活性化作用が明らかになり,リズミカルアインライブングのリラックスケアへの活用の可能性を確認できた.
著者
伊藤 良子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.463-467, 2010-12-28 (Released:2011-06-30)
参考文献数
20
著者
伊藤 良子 丸住 直子
出版者
京都市立看護短期大学
雑誌
京都市立看護短期大学紀要 (ISSN:02861097)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.129-136, 2010-05-31

本研究では両下肢・末梢方向のリズミカルアインライブング1 )(以下,下肢アインライブング)を施行した時の人間の主観的リラックス度との関連について明らかにすることを目的に実験研究を行った.対象は研究協力承諾の得られた健康な成人19 名で,下肢アインライブングを仰臥位で施行する群(実験群)と安静臥床群(対照群)の2 実験を,ランダム化クロスオーバー対照実験として行った.実験群には10 分間のストレス負荷後,下肢アインライブングを10 分間行い,その後16 分間の安静臥床を行った.主観的リラックス度の指標にはSD 法(Semantic Differential method:以下SD 法)を利用した.実験の結果,対照群では実験前と実験後のSD 法の全ての項目において有意差は認められなかった.実験群の実験前と実験後では「眠い」以外の全ての14 項目で,有意差(p < 0.05)が認められ,実験後の値の方が上昇していた.対照群の実験後と実験群の実験後のt 検定では「穏やかな」「呼吸が楽な」「体が軽い」「気持ちがゆったりした」「リラックスしている」「リフレッシュした」の6 項目で,有意差(p < 0.05)が認められ,実験群の実験後の値の方が上昇していた.以上の結果から,下肢アインライブングの施行によって,大きな主観的リラックス効果が得られることが明らかになった.
著者
橋本 創一 伊藤 良子 菅野 敦 大伴 潔 林 安紀子 池田 一成
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

発達障害児の就学を支援するためのシステム化されたプログラムはまだ少ない。この研究では、発達障害児の就学における支援ニーズを明らかにするために、発達障害児の親と発達障害児への支援の専門家たちに対して調査をおこなった.さらに、調査によって得られた知見と文献研究から発達障害児の就学のための支援プログラムを作成した。そして、子どもたちに対してそのプログラムを実施し、効果を調べた。その結果、コミュニケーション支援を中心としたグループ指導の必要性が示唆された。一方で、一人一人のニーズに応じた個別支援の必要性が明らかになった。加えて、発達障害児の個別の支援ニーズを評価するための支援ツールを活用する必要がある。それにより、個別の発達段階や特性に応じた就学支援が可能になると考えられる。
著者
田村 毅 市村 彰英 加藤 吉和 岸田 泰子 久保 恭子 中村 正 田崎 知恵子 倉持 清美 及川 裕子 伊藤 良子
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

子育て家族の追跡調査から、子育て家族システムの特徴、特に里帰り出産、祖父母の役割について明らかにした。また、海外在住の子育ての課題について明らかにした。児童虐待が発生する家族システムの特徴とそれを支援する福祉システムの困難さと課題について明らかにした。ジェンダーの視点から男性が子どもを虐待するメカニズムを解明し、虐待関係にある家族への支援の方策として父親グループ活動のプログラムを開発した。