著者
深谷 もえ
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.20, pp.86, 2004

従来、霊長類の混群に関する研究は、混群形成によって生じる利益を大きく分けて採食効率仮説、対捕食者仮説の2つの仮説によって説明しようとしてきた。その一方で、混群形成による利益ではなく、現象そのものを明らかにする必要性が提唱されている。ウガンダ共和国のカリンズ森林には6種の昼行性霊長類が生息している。なかでもブルーモンキー (<i>Cercopithecus mitis</i>) とレッドテイルモンキー (<i>C. ascanius</i>) の2種は、他地域において頻繁に混群を形成していることが知られている。そこで、2種の群れがどのように移動し混群を形成しているのか、そのプロセスを明らかにすることを目的として以下の研究を行った。2003年8月~10月、カリンズ森林内の同一地域を利用しているブルーモンキーのS群とレッドテイルモンキーのR群に属するオトナメス個体を対象に、終日個体追跡をした。その際、同日における2種の移動ルートを明らかにするために、2人の観察者によって同時にそれぞれの種を追跡した。2種の地図上の位置は観察者が携帯しているGPSによって、1分間隔に記録した。また、2種が森林内の林道を横断する際には、1分ごとに横断した種とその個体数を記録した。林道を横断する際、ブルーモンキーが先に横断を始め、その後をレッドテイルモンキーが横断することが多かった。また、終日個体追跡の結果、2種が混群を形成している際には、ブルーモンキーがレッドテイルモンキーよりも進行方向に対して前を移動していた。林道のような特別な状況だけではなく、森林内においてもブルーモンキーの後をレッドテイルモンキーが移動していた。これらの結果から、2種間には先導と追従の関係があると考えられた。また、ブルーモンキーの後をレッドテイルモンキーが移動していることから、レッドテイルモンキーが積極的に混群を形成していると考えられた。

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