著者
細矢 剛 保坂 健太郎
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.6, 2008

「菌類」は俗に言う「日陰者」であり,一般には,悪いイメージでとらえられる.科博における大学・一般を対象としたアンケート調査(n=29)でも,菌類からイメージされる形容詞には「汚い・怖い・暗い・くさい・しぶとい」など,どちらかというとネガティブな単語が並ぶ.しかし,菌類は自然界では環境の調和を図る存在として重要な役割を担うばかりでなく,人間とも様々な利害関係を持っている.このような重要な存在をアピールし,菌類の知名度を向上するため,国立科学博物館では,日本菌学会にも協力を得て,本年10月より,菌類をテーマにした特別展を開催する予定である.本講演では,この展覧会の内容を紹介し,話題提供としたい.本展覧会は以下のような構成である.0)プロローグ:生命の星地球は菌類の星(コミック「もやしもん」のキャラクターなどによる展覧会全体の紹介),1)菌類の誕生と多様化(菌類の化石を展示し,地球と菌類の生命史を紹介する),2)菌類ってどんな生物(二界説・五界説など生物の世界での菌類の立ち位置を紹介し,バクテリア,変形菌など紛らわしい生物についてもとりあげる),3)菌類のすがた(各門の代表的な菌類を紹介する.大型の菌類は樹脂含浸品,液浸標本を展示する.微小菌類は拡大模型・写真),4)光るきのこのふしぎ(ヤコウタケ),5)きのこKids(においをかいでみよう,音をきいてみよう,さわってみよう,顕微鏡をのぞいてみよう,などの体験コーナーで,菌類に実際にふれていただく,子供を主な対象としたコーナー),6)菌類が支える森(寄生・共生・腐生によって様々な形で他の生物と関わる菌類の自然界の中での姿を紹介し,環境の中での菌類の役割を考える),7)菌学者の部屋(日本の菌学の発展に貢献した菌学者の紹介),7)菌類と私たちの生活(アイスマンのきのこ,縄文きのこ,コウジカビから始まる菌の利用,鎌倉彫,食用きのこ,毒きのこ,など),8)菌類研究最前線(カエルツボカビなど),9)菌類と地球の未来.以上の展示を通じ,菌類が人間の活動や自然界で欠かせない,無視できない存在であることをアピールする.

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