著者
山西 浩規 武部 恭一 田中 宏一 野村 一太 福原 良太 斉藤 洋輔 武政 誠一
出版者
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
雑誌
近畿理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.57, 2007

【はじめに】骨化性筋炎とは筋挫傷に伴い、時に不適切な治療が原因で筋肉内に骨形成が起こり、局所の腫脹、自発痛、運動制限がみられる疾患である。今回、サッカー練習中に受傷した症例に対し競技復帰のために、疼痛の緩解と可動性の拡大を目的とした理学療法(以下PT)を行ったので報告する。【症例紹介】14歳男性。サッカー練習中に右大腿部を強打し受傷、その後接骨院で治療を受けていたが、1ヶ月経過しても疼痛が軽減せず、当院を受診した。X-P像の結果、右大腿部前面に異所性骨化が認められ、骨化性筋炎と診断した。本人及び家族の競技復帰への希望が強く、当日より当院にてPT(5回/週)を開始した。初診時、関節可動域(以下ROM)膝屈曲は自動で110°、他動で115°で大腿部前面に疼痛が認められた。膝伸展は他動0°であったが、extention lagが40°認められた。その他の関節には制限はなかった。徒手筋力検査(以下MMT)は右股関節屈曲、外転、膝関節屈曲が4レベル、伸展は2+レベルで疼痛があり、SLRも不可であった。また、歩行時に疼痛性跛行が認められたが、独歩可能であった。しかし、階段降段時に右大腿部の疼痛が強く一足一段では不可であった。大腿周径は特に左右差は認められなかった。PTプログラムは、疼痛の緩和を目的に温熱療法と超音波などの物理療法、関節ファシリテーション(以下SJF)、ROM運動や筋力増強運動を行った。骨化性筋炎では、過度な抵抗運動や他動運動では、筋に対してストレスがかかり、再出血が生じ、骨形成につながる可能性があるため、ROM運動や筋力増強運動時は疼痛自制内で自動運動のみ実施した。また、全身バランスの調整を目的にバランスボードを行った。また、完治するまで、サッカーの練習は中止とした。PT実施1週目で、ROMが自動で膝屈曲115°、膝伸展‐20°、SLR30°まで改善し、5週目で、ROMは膝屈曲150°、膝伸展0°、SLR90°、MMTも5レベルとなり、疼痛も軽減され階段降段も一足一段で可能となった。約8週目でジョギング許可、9週目よりボールを用いた練習を取り入れ、11週目で競技復帰も許可し、試合に出場可能となった。X-P像では骨化像の消失、増大傾向は見られなかった。【考察】今回の症例は物理療法やSJFを用いて疼痛を抑制し、疼痛自制内でPTを行うことで、疼痛の緩解、筋の伸張性が向上した。その結果、ROM改善につながったと考えられる。しかし、本症例は異所性骨化が残存していることから、サッカー復帰後も、クラブの指導者などと連携して経過の観察が必要だと考える。

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