著者
石井 弘明 角谷 友子
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.152, 2004

アメリカ北西部の老齢ダグラスファー-ツガ林において、樹冠内の枯死枝現存量とその分解過程を明らかにするために、ダグラスファーの樹冠内に単ロープ法で登り、調査を行った。個体あたりの枯死枝現存量は個体サイズ(胸高直径および樹高)と高い相関が見られ、生枝現存量の増加に伴い枯死量は指数的に増加した。このことから、個体成長に伴い枯死枝が樹冠内に蓄積していくことが示唆された。森林全体の樹上の枯死枝現存量は5.19-12.33 Mg/ha、地上は1.80-2.05 Mg/haで樹上が地上の約5倍であった。<br><br> 樹冠内の枯死枝と地上に落下した枯死枝では、水分や微生物などの条件が異なるので、分解の過程も異なると考えられる。樹冠内及び地上の枯死枝を腐朽の進行具合によって5段階に分け、各段階におけるC、N、リグニン含有量を分析した。樹上と地上の間でCN比に明瞭な違いが見られなかったことから、地上で採取された枯死枝は樹上で枯死し、時間が経ってから落下したことが示唆された。一方、倒木に由来し地上で分解が進んだと考えられる枯死枝ではCN比が低かったことから、地上で分解が進むと菌や微生物などの分解作用により、CN比が減少すると考えられる。よって、樹上での分解には生物的作用があまり働かないことが示唆された。樹上では各腐朽度の間でリグニン含有率に明瞭な違いが見られなかったが、地上では腐朽の初期に増加する傾向があり、腐朽が進むと減少した。リグニンの分解においても、樹上では生物的作用があまり働かないことが示唆された。<br>

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