著者
上江洲 朝彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.67, 2007

<BR> 沖縄県は第二次大戦以降、長く軌道交通を持たずに都市交通ネットワークを道路を軸に展開してきた。これは島内に分布する米軍施設を結ぶように南北に幹線道路が整備され、それらを補完する形で東西の道路網が形成されてきたことに起因している。軌道よりも先に道路が整備されたことにより、沖縄の公共交通は路線バスが台頭し市民生活を支えるようになった。しかし、本土復帰を境に沖縄にも訪れたモータリゼーションの影響は、軌道交通を持たずかつ自動車による移動が前提となっていた沖縄社会に一気に浸透していった。結果、那覇市内を中心に慢性的な交通渋滞が発生し、バス交通の利便性は低下しそれが更なる自家用車利用を拡大させるという悪循環を招く結果となった。現在、沖縄県は全国的にみても渋滞による経済損失が大きい地域となっている。1)<BR> この深刻な都市交通問題を解消するために2003年8月に導入されたのが沖縄都市モノレール(以下、ゆいレール)である。ゆいレールは全長12.9kmで那覇空港から那覇市の北東部に位置する首里地区までの15駅を27分で走行する(図1参照)。一日の平均利用客数は31,350人(開業時)で観光客の利用者も多くみられるものの(12.0%)、通勤通学利用が全体の約30%を占めている。2)<BR> 図2は那覇市内における居住地と就業地の密度の変遷を示したものである。これをみると居住地は近隣市町村へ拡散傾向にあるが、就業地は県庁や市役所が立地する中心業務地区に限定的である。つまり、那覇市の就業者は年々通勤距離が拡大しており、拡大した都市圏において自家用車による移動がさらに卓越することが予想される。そこで更なるモータリゼーションの拡大を抑制するためにも今後、沖縄本島の交通計画上ゆいレールの果たす役割は大きい。特に、ゆいレールが沖縄の都市交通においてどのような機能を果たしているのかを精査することは地域研究の面からみても重要な課題といえる。ただその分析は都市交通が地域構造や生活行動と複雑に結びついているが故に困難を極め、精緻な考察にはある一定の軸を持って臨むことが有効であると本研究では考える。<BR> そこで本論ではモノレール沿線の土地利用変化の分析を中心にして研究を進める。ゆいレール開通以降の土地利用変化を駅勢圏の土地利用調査を元に分析する。加えて住宅地、事業所、行政ならびにモノレール利用者への聞き取り調査、通勤者へのアンケート調査を土地利用変化との関連において考察し、その結果を元に定性的に分析を行う。これにより沖縄が抱えている交通問題の特性と沖縄社会が車に依存するシステムの中で、モノレールがどのような形でモータリゼーションの抑制に寄与できるのかについて検討することが可能であると考える。<BR><BR>1) 国土交通省の調べによると、1km当たりの渋滞損失時間をみると沖縄県は、東京、大阪、神奈川、埼玉、愛知に次いで全国で6番目にその値が大きい地域である。<BR>2)平成16年度 沖縄都市モノレール整備効果等調査報告書より

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