- 著者
-
新野 宏
- 出版者
- 公益社団法人 日本気象学会
- 雑誌
- 気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.1, pp.33-51, 1980
- 被引用文献数
-
2
非圧縮で粘性がなく,密度一様な回転流体中で,回転軸に平行な体積力によって作り出された層流ジェットの振舞を線形論によって調べた。体積力はある有限の領域(以下領Aと呼ぶ)に軸対称に分布している。この力は,ある時刻(t*=0)に急に働き始め,その後の変化として<br>1) 無限に続く場合(連続的な力)<br>2) 時刻t*=T*に止む場合(継続時間T*の力)の2通りを考えるものとする。<br>連続的な力に対しては,流れの場は時間と共に回転軸方向に一様になるが,領域A内ではテイラー•プラウドマンの定理が成り立たない為に圧力と接線速度は軸方向に一様にはならない。特に圧力場には,体積力に逆らうような軸方向の圧力傾度が次第に形成される。この圧力傾度は体積力が働き始めてからt*=10.90/fでほとんど定常になることがわかった。(ここでfはコリオリ係数である。)そして,定常状態では圧力傾度力は軸方向には体積力と,半径方向にはコリオリカとつりあっている。<br>継続時間T*の力に対しては,もしT*が10.90/fよりも大きいならば,力が止んだ後の領域A内の運動はT*によらないことがわかった。このような大きな値のT*に対しては,力が止んでからt*'=3.4/fと6.5/fとの間に領域A内に逆流が生ずる。(ここで,t*'=t*-T*である。)この逆流は,体積力が止むまでそれとつり合っていた逆向きの圧力傾度力によって生ずる。やがて,逆流が弱くなった後は,領域A内に周期約2π/fの減衰振動が残る。この論文のモデルは,回転流体中の乱流ジェットの室内実験で見つかった逆流を説明する為に作られた線形論(新野,1978)をより洗練した形にしたものである。