- 著者
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菅田 誠治
- 出版者
- 公益社団法人 日本気象学会
- 雑誌
- 気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
- 巻号頁・発行日
- vol.78, no.3, pp.259-277, 2000
- 被引用文献数
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様々な時間スケールを持つ大気運動の結果としての長期的全球トレーサー輸送を論じるのに用いることのできる解析法を時間閾値解析法として提起する。この手法は、数値的トレーサー実験において多数の粒子軌跡を解析するのに役立つ。ある解析面を通過する全てのパーセルの運動を考えて、通過から通過までの周期に着目する。与えられた時間閾値よりも長い周期を持つ通過だけを選択する。選択された通過を集積することにより、その閾値よりも長い時間スケールでの輸送に寄与するような、粒子の有効なフラックスを求めることができる。この方法により、大気中のミキシングリージョン間の境界を近似的に検出することができ、また、大気運動のラグランジュ的性質の時間変化を調べることができる。<br>この手法の有効性を確かめるために、大気大循環モデルで得られた北半球冬の対流圏から下部成層圏に位置する多数の粒子の軌跡を調べ、いくつかの時間閾値に対して、各等緯度面を通過する有効な南北質量フラックスを求めた。二日より長い閾値を用いて求めた上部対流圏での有効な南北フラックスの緯度分布において、両中緯度は極小を示す。このことは二日より長い時間スケールの南北輸送が、上部対流圏の中緯度で妨げられていることを示している。これらの時間スケールに対して、有効な正味の南北フラックスから求めた東西平均子午面循環の流れ関数は、対流圏内で半球1セルの構造を示す。