著者
和達 清夫
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.5, no.6, pp.119-145, 1927
被引用文献数
10

地震の震源の深さに就いては從來種々の結果が得られて居るが、近來近地地震觀測の精密さに依り震源の深さは殆んど總ての地震に就き四十粁内外が最も普通となされて居る。我が國に起る多くの地震に就きても、多くの研究は悉くこの程度の淺き震源の深さを與へて居る。而るに著者は或種の地震を研究したる結果、其れ等が三百粁以上の深き震源を有すべき結論に達し、假りに之を深層地震と呼ぶ事にした。此の結論が正しければ、從來の地震源捜索法に改良を要し、又過去の地震表の訂正を要することゝなる。依うて本論文に於て其の決論の達したる研究を述べて學會の批判を仰がんと欲す。多くの集蒐されたる深層地震中特に大正十五年七月廿七日の地震は、本州中央部の地下約三百五十粁の深さに發現したる代表的の深層地震なりと考へらるゝを以て、其の記象型及び震波の走時に關し詳細の調査がなされて居る。本論文に於ては右研究の結果として、地震源の深さ及び地殼上層に於ける震波の傳播速度が求められた。<br>かゝる深層地震の存在は近地地震の觀測に依り地殼上層の物理的状況の研究をなすのに極めて好都合の材料を與ふるものである。近年の觀測に於て確に深層地震であると決定されるものを求め其等の分布から深層地震帶なるものが求められた。この深層地震帶は從來の地震帶と略直角に交叉し從來のものと別にある新しい意味を持つ地震帯であり、其の地震帶附近に於て近來の大地震が發現して居るのも興昧ある事である。此の地震帶に就いても大體の調査がなされて居るが、淺き大地震と深層地震との間に何等かの關係が認められさうである。此の問題は大地震の警戒に關し實際的に興味ある問題を與へるものと思はれる。

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