- 著者
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陳 晶晶
茂呂 雄二
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.2, pp.115-124, 2016
<p>本研究では,未来への個人の感情・態度が現在の行動に与える影響を,ポジティブ・ネガティブの両側面から検討することを目的としている。研究1では児童・生徒の未来展望尺度の開発を行い,尺度の信頼性と妥当性の検討を行った。因子分析の結果より,児童・生徒の未来展望は「自信」,「心配」,「未来社会への信頼」の3つの下位尺度から構成できることが示された。研究2では,未来へのポジティブとネガティブな感情・態度と学校適応感との関連を検討するために,小学4年から中学3年にかけての児童・生徒の未来展望と学校適応感を調べ,重回帰分析を用いて学校段階ごとに検討した。その結果,自信と心配がともに学業場面における適応感に影響し,未来社会への信頼と心配がともに友人関係における適応感に影響することが明らかになった。研究3では,「中1ギャップ」問題の解明に新たな知見を提示することを目指し,小中学校間の移行前後における未来展望の変化を縦断的に調べた。その結果,中学入学後の子ども達の心配が有意に上昇し,未来社会への信頼が有意に下がることが明らかになった。移行に伴う心配の有意な上昇は,中学進学後に生起する多くの不適応問題の解明に,1つの有用な情報を提示していると考えられる。</p>