著者
朴 東燮 茂呂 雄二
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.146-161, 2007 (Released:2007-09-05)
参考文献数
66
被引用文献数
2 1

この論文では,バフチンの対話概念の適用可能性を議論した。まず,バフチンの対話性の概念を概説した。次に,学習発達に関する研究領域の動向を概観して,学習を社会過程と見なす方向に動いていることを確認した。この領域における理論的問題の二つの焦点が,状況の対話組織化と,言語実践のレパートリーのアイディアにあることを特定した。そして,この二つの理論的問題を考える上で,対話性の概念が有効であることを,子どもの相互行為データを用いて例証した。
著者
上野 直樹 ソーヤー りえこ 茂呂 雄二
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.173-186, 2014-03-01 (Released:2015-02-02)
参考文献数
24

According to the viewpoint of this paper, artifacts can be regarded as a socio-technological arrangement. Further, agency is not independent from a socio-technological arrangement but is something emerging from a socio-technological ar-rangement, while agency has traditionally been defined as a human capacity of having needs and preferences and of seeing possible actions. If so, the design of an artifact is not the design of a single artifact but the design of a socio-technological arrangement and of agency. Thus, in this paper, first of all, we attempt concretely to analyze the design of an artifact as that of socio-technological arrangement, based on our field-works concerning the cases of open data and integrated learning. Second, we show how agency emerges from a socio-technological arrangement, also based on our fieldworks. Third, we propose some viewpoints for designing artifacts dependent on the first and the second analysis.
著者
北本 遼太 茂呂 雄二
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.44-62, 2020-03-01 (Released:2020-03-15)
参考文献数
32

The purpose of this article is to advance the situated approach through adopting the concepts of performance. Ueno,Sawyer, and Moro (2014) hybridized Actor Network Theory and Activity Theory and proposed analytical viewpoint of “modes of exchange”. For succession of the proposition, we advanced the viewpoint of exchange in emotional aspect. We introduced the viewpoint of “performative exchanges”, which focus to dominant pattern of giving-getting on learning practices and transformation of the pattern, for this purpose. Data were collected through semi-structured interviews with members of welfare service associations and analyzed by two steps as follow. In step 1, we described the entrepreneurial process of welfare serves from two viewpoints of “translation of interest” and “modes of exchange”. Through the comparison of two viewpoints, we found that dominant pattern of giving-getting on this practice is “providing service-receiving reward”, which is characterized by “working for equation”. In step 2, we focused to imagination and emotionality in order to analyze the transformation of “providing service-receiving reward”. The result showed that mechanism of transformation is playful imaginative exchanges with “the most peripheral participants” and re-construction of the exchange of commodities. In general discussion, we pointed out that difference among three viewpoints is approach to emotion.
著者
田島 充士 茂呂 雄二
出版者
筑波大学心理学系
雑誌
筑波大学心理学研究 (ISSN:09158952)
巻号頁・発行日
no.26, pp.83-93, 2003

概念の学習ないしその理解に関しては、これまで様々な立場から、多くの議論が闘わされてきた。その中でも昨今、学校における概念学習が生徒たちの認知発達につながっていないことを指摘し、学校教育の閉鎖性を問題視する論調が強くなってきている。認知心理学においては、子どもたちが学校において教授される科学的概念を容易に受け入れず、 ...This paper investigates the socially-constructed structure of concept learning and understanding. The first purpose is to argue that the phenomenon of assuming that we understand concepts that we do not really understand is ...
著者
新原 将義 茂呂 雄二
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.468-484, 2014-12-01 (Released:2015-06-09)
参考文献数
13
被引用文献数
1

Traditional study of music education perceives instructor’s teaching narrowly as how instructor teach knowledge that is previous in advance adequately, so instructor’s ac-tive and improvised encouragement had never been deal properly. This paper pointed out that and describes the scene of teaching of orchestra which was leaded by profes-sional conductor, and consider about instructor’s encouragement in practice of playing music, which is characterized as highly artistic. Result of analysis reveals 3 forms of encouragement by conductor. First is “scaffolding”, which makes clear the differences between good way to resolve the problem and action what was really done. Second is “re-configuration of resource”, which controls significance of score and indicate other player as resource. And Third is “actualization of tacit knowledge”, which actualizes the knowledge that is impossible to generalize in concrete scene of practice and music. Finally, this paper pointed out that every teaching of this study has “possibility to de-velopment” which makes possible for conductor to develop the teaching, and researcher need to consider these instruction as intermixed process, not as each independent pro-cesses.
著者
香川 秀太 茂呂 雄二
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.346-360, 2006-09-30
被引用文献数
1

本研究は,密接に関連する状況間の移動と学習に関する状況論的な諸議論に新たな知見を追加するため,看護学校内学習から周手術期の臨地実習へ移動する看護学生の学習過程を検討した。研究Iでは観察を行い,「校内では,学生は,根拠に基づいて看護することの重要性が実感できず,その学習が希薄になってしまう傾向にあるが,臨地実習に入ると,その重要性をより実感して厳密に実施することを学習する。それはなぜか。」という問いを設定した。研究IIでは,実習期間終了直後の学生に半構造化面接を実施し,修正版グラウンデッドセオリーに基づく分析を行い,この学内と臨地の差異の背景と考えられるものの一つを,【時間の流れ】の相違(異時間性)として概念化した。臨地では,学生の現在の行為が未来の患者の容態変化と繋がっている(共時)上,学生は,患者の変化のつど,継続的に行為を調整していく(通時)が,学内では,学生の現在の行為は看護対象の未来の容態変化ではなく,合格・不合格と繋がっている(共時)上,対象と行為の関係が一時点で終わる(通時)。こうした異時間性が,根拠立ての重要性の実感の差異を説明することが示唆された。
著者
田島 充士 茂呂 雄二
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.12-24, 2006-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
31
被引用文献数
6 1

本研究は日常経験知と矛盾する科学的概念を学習した中学生を対象に, 両者の矛盾関係の解消を目指した説明を求める半構造化面接を実施し, この中で対立する日常経験知をどのように関連づけるのかという視点から, 概念理解の実態を検討したものである。予備調査の質問紙で科学的概念を支持した被験者 (科学群) に対しては日常経験知に基づいた情報を, また素朴概念を選択した被験者 (素朴群) に対しては, 科学的概念に基づいた情報を提示して, それぞれの矛盾を解消するよう求める対話に参加してもらった。その結果, 矛盾を解消できた者 (解消群) とできなかった者 (不解消群) に分かれた。科学解消群では論理的な解釈によって両者の矛盾情報を統合するような説明を, 科学不解消群では日常経験知を無視するような説明を, また素朴不解消群においては科学的概念と日常経験知を適用する文脈を分離させるような説明を行う傾向にあった。本研究ではこれらの傾向を, 日常経験知の「調整」「圧殺」「すみわけ」と名づけ, パフチン理論の立場から「調整」を, 学校教育において目指されるべき概念理解活動として位置づけた。
著者
竹村 牧男 茂呂 雄二
出版者
筑波大学図書館課
雑誌
つくばね : 筑波大学図書館報 (ISSN:02850117)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.8-9, 1999-12-30

日本の中世という時代に,私はなぜか心ひかれてやまない。その時代は,無の深淵が口を開けた時代,虚無の底に降り立った時代であった。そして虚無の深さにはかりあえるような優れた芸術が産み出された時代でもあった ...L・S・ヴィゴツキー(1896-1934)の名前は心理,教育,言語研究者を除けば,大方には馴染のない名前であろう。この白ロシア生まれのユダヤ人心理学者は,革命の祝祭空間を駆け抜けて,その祭りの後に政治的非難にうちのめされたまま37歳で結核で没したのだが, ...
著者
田島 充士 茂呂 雄二
出版者
筑波大学心理学系
雑誌
筑波大学心理学研究 (ISSN:09158952)
巻号頁・発行日
no.26, pp.83-93, 2003-09-01

概念の学習ないしその理解に関しては、これまで様々な立場から、多くの議論が闘わされてきた。その中でも昨今、学校における概念学習が生徒たちの認知発達につながっていないことを指摘し、学校教育の閉鎖性を問題視する論調が強くなってきている。認知心理学においては、子どもたちが学校において教授される科学的概念を容易に受け入れず、 ...
著者
陳 晶晶 茂呂 雄二
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.115-124, 2016

<p>本研究では,未来への個人の感情・態度が現在の行動に与える影響を,ポジティブ・ネガティブの両側面から検討することを目的としている。研究1では児童・生徒の未来展望尺度の開発を行い,尺度の信頼性と妥当性の検討を行った。因子分析の結果より,児童・生徒の未来展望は「自信」,「心配」,「未来社会への信頼」の3つの下位尺度から構成できることが示された。研究2では,未来へのポジティブとネガティブな感情・態度と学校適応感との関連を検討するために,小学4年から中学3年にかけての児童・生徒の未来展望と学校適応感を調べ,重回帰分析を用いて学校段階ごとに検討した。その結果,自信と心配がともに学業場面における適応感に影響し,未来社会への信頼と心配がともに友人関係における適応感に影響することが明らかになった。研究3では,「中1ギャップ」問題の解明に新たな知見を提示することを目指し,小中学校間の移行前後における未来展望の変化を縦断的に調べた。その結果,中学入学後の子ども達の心配が有意に上昇し,未来社会への信頼が有意に下がることが明らかになった。移行に伴う心配の有意な上昇は,中学進学後に生起する多くの不適応問題の解明に,1つの有用な情報を提示していると考えられる。</p>
著者
西野 範夫 西坂 仰 上野 直樹 松本 健義 北澤 憲昭 茂呂 雄二 永井 均 大嶋 彰 西村 俊夫
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、今日の子どもにかかわる諸問題は、子どもの論理による学びが成立していないこと、すなわち、子どもの学びが今を生きることに成り得ていないことによるものであるとの認識に立ち、子どもの学びの実践の場に臨み、その論理を総合的にとらえ、子どもの論理による教育の体系化を目指した。このため、次のような研究を行なった。(1)子どもの論理による学びの成立がみられる、子どものつくること、表すことの行為に着目し、その実践の場に臨み、その論理を行為分析等の臨床学的手法を援用してとらえることとした。(2)子どもの論理によるつくること、表すことの行為をとらえ、学びの論理を明らかにするため、現象学的発達心理学、談話行為論、相互行為論、状況的認知論等の考え方をとり入れた学際的な研究を行なった。その結果、(a)子どものつくること、表すことの行為は、子どもの身体性を働かせた<感じること、考えること、表すこと>による相互作用・相互行為による意味生成の実践過程であって、常に<いま、ここ>を<私>として生きる学びの実践であるとともに、子どものすべての学びの基礎理論となり得ること。(b)子どものつくること、表すことの行為は、子どもの<生>の論理による学ぶこと生きることが一体となったものであるとともに、他者と相互行為的にかかわり、学び合い、行き合い、意味生成と、<私>と<他者>をともに生成する過程であり、「生きる力」を育む過程であること。(c)子どもの論理による学ぶこと、生きることの生成過程は、子どもと相互行為的にかかわり、ともにその過程を実践する教師の学習臨床あるいは意味生成カウンセリング的な関与に支えられること。以上の論理を総合することによって、子どもの論理による学びのカリキュラムの構成が十分に可能であることを明らかにすることができた。
著者
茂呂 雄二 篠崎 晃一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、幼児の言語に関する、メタ認知を測定する研究方法を開発し、これを用いて幼児自身の方言-共通語の違いに関するメタ認知と使い分けの能力の発達過程を明らかにする。そしてこの知見をもとに、従来の単線型の言語発達理論に対して複線型の理論を開拓することを目的にした。以下の3点を行った。(1)個別実験にもとづく横断的方法によるデータ収集(2)自然談話の分析に基づく、幼児・児童のジャンルの使い分け能力の発達過程の記述(3)音声メタ認識を形成していない児童に対する形成実験の実施(1)については、成人から収集した方言音声に関する正誤判断課題、ならびにその簡約版としての質問紙型テストを作成し、実施した。幼児から中学生を被験者として得た資料から、小学校中学年からメタ言語能力の質的な転回が見られることが明らかになった。(2)については、幼児期から小学校への移行過程のビデオ資料と、児童の一日の言語生活資料を文字化してデータベースを構築した。(3)については、研究の方法論を整備し、異音韻を含む語でありながら、かな文字では区別不可能な単語対を文字化させる、『かな文字コンフリクト課題』を創案し、小学校低学年児童と高学年児童に実施し、音声に対する自覚の変化を追跡した。
著者
香川 秀太 茂呂 雄二
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.346-360, 2006-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
30
被引用文献数
2 1

本研究は, 密接に関連する状況間の移動と学習に関する状況論的な諸議論に新たな知見を追加するため, 看護学校内学習から周手術期の臨地実習へ移動する看護学生の学習過程を検討した。研究1では観察を行い, 「校内では, 学生は, 根拠に基づいて看護することの重要性が実感できず, その学習が希薄になってしまう傾向にあるが, 臨地実習に入ると, その重要性をより実感して厳密に実施することを学習する。それはなぜか。」という問いを設定した。研究IIでは, 実習期間終了直後の学生に半構造化面接を実施し, 修正版グラウンデッドセオリーに基づく分析を行い, この学内と臨地の差異の背景と考えられるものの一つを,【時間の流れ】の相違 (異時間性) として概念化した。臨地では, 学生の現在の行為が未来の患者の容態変化と繋がっている (共時) 上, 学生は, 患者の変化のつど, 継続的に行為を調整していく (通時) が, 学内では, 学生の現在の行為は看護対象の未来の容態変化ではなく, 合格・不合格と繋がっている (共時) 上, 対象と行為の関係が一時点で終わる (通時)。こうした異時間性が, 根拠立ての重要性の実感の差異を説明することが示唆された。
著者
上野 直樹 茂呂 雄二
出版者
国立教育研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

平成2年度からの3年間の科研費による研究において、学校における算数に関する"言語ゲーム"のあり方の調査、実験を行った。その結果、多くの小学生が、意味のない算数の問題を何ら疑問なくといてしまうこと、あるいは、非現実的な問題に「これは算数の問題だから変ではない、解ける。」と答えることなどが示された。以上の調査から、小学生は、与えられた問題の現実性・意味についてモニターしないこと、算数理解のあり方が手続き指向的であること、算数の問題は「算数」である以上、現実的である必要はないと積極的に判断していること、などが明らかになった。こうした諸事実は、学校の算数が何を指向しているか、つまり算数という「ゲーム」が学校においてどの様な運営のされ方をしているかを示している。さらに申請者がトヨタ財団研究助成によって行っているネパールにおける日常生活における算数の調査によれば、商人や農民の算数という「ゲーム」のあり方は、以上に示される様な学校算数と対照的である。例えば、「水牛1頭18円で3頭でいくら」というような非現実的な問題に皆笑いだす。また、ネパールの商人や農民の算数の問題解決は、協同的である。例えば、個人に、問題を与えてみても、自然と人が集まり、互いにいろいろ教えあったり、計算に関してコメントすることが頻繁にあった。つまり、ネパールの人々にとっては、個人的に算数の問題を解くこと自体がむしろ不自然な事態であると考えられる。さらに、そのストリート算数の背景に、歴史的に構築されてきた様々な手続き、道具があり、そうした算数の道具が学校とは異なった形で発展し、又洗練されていることが明らかにされた。以上の事実から、算数認知は、特定の活動のコミュニティ(学校・バザール等)に参加し、メンバーとして文化・歴史的状況との相互交渉を行うことを通して社会的に構成されるものであることが明らかにされた。